……はい。俺がやりました
まあ、桁違いって必要ですよね?
「分かった。形式は?」
「ライ様?」
「ライ?」
リンとレイが、俺があっさりと引き受けて、不安気に声を掛けてきた。
「リンにレイ、分かるだろ?」
「はい……」
「うん……」
「待たせたな」
「構わないぜ」
「それは良かった」
「それで、形式だが、オレとの一騎打ちだ」
「分かった」
俺は、聖騎士達に向って睡眠魔法を放ち、ほぼ全員の聖騎士達を眠らせた。
起きているのは、聖女ルシアにルドガーに俺達とディーンだけだ。
「此処じゃあ、全力が出せない。場所を移動しよう」
「良いぜ」
俺達は、大草原の中央に移動した。
「それじゃあ、始めようか。
名をディーン=イムベレジアだが、周りからは『深淵の魔皇』と呼ばれている。
さあ、出し惜しみ無しの全力で来い!」
「ああ! キサラ!」
「のじゃ!」
「行くぜ! 身体強化上昇20倍! 魔力強化上昇! 五感強化上昇!」
「ふむ」
魔力を解放して鬼人化して、強化の補助魔法を俺自身に掛けた。
「破っ!」
俺は、左手に持つ紅い刀を上段から振り降ろすが、ディーンには済ました顔で右に避ける。
空振りに終わった一撃は、そのまま地面に直径5m以上のクレーターを作った。
俺は、そのまま右足を一歩真横に踏み込み、逆袈裟で振り上げるが、ディーンは更に右に避け、俺の後ろに回った。
俺は、左足をバスケのターンみたいに半円を描き向きを真後ろに変え、その勢いのまま、振り上げた刀をディーンの首筋目掛けての袈裟斬りに振るう。
「ふっ」
ディーンは、軽いバックステップで余裕で躱すが、そのバックステップでの着地する寸前に放つ。
「雷霆鎚!」
「な!」
「まだだ! 紅蓮不死鳥! 凍結暴嵐!」
「……うむ。中々の魔法だな」
ディーンは、氷煙が晴れると、何も無かったかの様に立っていた。
「それなら、これはどうだ!」
俺は、後ろに飛びながら、詠唱破棄で第10位階魔法を放つ。
「竜滅閃光覇!」
魔法を放った俺は、自身の勘を信じ、静かに詠唱を始めた。
「凍れる刻限の狭間で、眠りし調和と混沌を支配する存在よ。
我が呼び声に疾く応えよ。
調和は天宮の楔を解き、混沌は虚空の縛鎖を引き千切り、魂の誓約に従い我が身、我が欠片に宿り、鬼神と為し、我が前に立ち塞がりし愚かなる者に、滅びを与えん」
俺が握る紅い刀は黄金と漆黒の光を放つ。
そして、竜滅閃光覇に因って出来た粉塵が晴れるとやはり、俺に向って歩いて来る無傷のディーンがいた。
俺は居合の構えで、ディーンの懐に入り叫ぶ。
「神滅鬼神斬!」
俺は紅い刀を解き放ち一閃する。
……躱されたか……いや!
ディーンの首筋に赤い線が!
「お見事! まさか、このオレに傷を負わせるとは大殊勲だ」
「ハァハァ……」
「ご褒美に、オレの煌魔結晶をあげよう」
「……どうも」
俺は、意識を保つのも困難の中、ディーンの煌魔結晶を受け入れた。
その瞬間、俺から銀色の光りを放ち、暫くすると消えた。
……その後の記憶は無い。
「は!」
気が付くと、俺はベッドに寝ていた。
ベッドの左側にキサラが、右側にレイが居た。
「目覚めたのじゃな、ライ」
「気が付いたのね、ライ!」
「俺は、どれくらい寝ていた?」
「あの日から2日よ」
「そうか……聖女達は?」
「大丈夫よ。ライザック=フォン=アークレイドの婚約者である私レイサリア=フォン=アークレイドが、きちんと対応したから」
「そうか。ありがとう、レイ」
普通に「素」のままでお礼を言ったら、レイは顔を赤くしながら言った。
「と、当然よ。私はライの婚約者なんだから」
「それなら、ディーンは?」
「あの魔王なら、ライが倒れた後は、『オレの城に来たら歓迎する』と言って消えたわ」
「……そうか」
「ねえ、ライ」
「何だ、レイ」
「ライが放った最後の一撃。アレは……」
「俺の最強の切り札だよ」
「もしかして、第10位階魔法なの?」
「違うよ」
「それなら、第9位階魔法なの? でも、あの威力は……」
「実は、存在するんだ。第10位階魔法を超えた魔法が」
「……う、嘘、よね?」
「本当だ。アレは第10位階魔法を超えた魔法。
その名は『超越魔法』て言う」
「超越魔法!?」
「ああ。第10位階魔法までは、才能と努力次第で、第10位階魔法も詠唱破棄で放つ事が出来るけど、超越魔法は詠唱が必要なんだ」
レイは静かに聞いている。
「その分、威力は絶大だ。嵐の中、放てば天空の雷雲が消滅するし、山に放てば軽く5、6個は消滅するからな」
「そういえば、それなりに在った雲が見える所は全て消えていた……って、ライ!」
「な、何だ、レイ」
「学園に行く前にライが、原因不明で5日間、倒れていた時があったでしょう!」
「あ、あったかもな」
「あの時は、ライが心配だったから忘れていたけど……」
「あの時は、心配掛けたし、ありがとうな」
「そんな事は良いのよ。それで、今さっき、思い出したのよ!」
……ヤバい。
「……な、何を?」
「将来的に山越えの街道を、建設する筈だった予定地の山7つがほぼ消えていた事を!
……ライ?」
……もう無理だな。
「……はい。俺がやりました」
「やっぱり!」
その後、正座説教を様子を見に来たリンが来るまでの4時間続いた。
次の日に聖女ルシア率いる聖騎士遠征軍は、帰っていった。
あれから数日後に、俺のダンジョンで確かめたのだが、あの時のディーンの煌魔結晶に因って、俺は俺自身に掛ける支援魔法が意味無い程の強化を果たした。
例えると、フリ○ザ相手に界○拳を使った孫○空が勝てなかったが、ス○パーサ○ヤ人になった孫○空は勝ったみたいに、俺は強くなっていた。
そして、キサラにも影響が出ていた。
キサラが擬態を解くと、一本だった額の角が左右の2本になり、両手の指の爪がマニキュアを塗ったかの様に紅く染まり、唇も朱くなっていた。
服もより一層格闘向けになっていた。
まあ、艶やかさも増したけどな。
それに、キサラの「銀閃」も漏れる色が、銀色だったのが、紅を足して混ぜた色になっていた。
そして……
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。




