信じるものは・・。
ちょうシリアスなシナリオです。窮地に立たされた戦闘集団のお話です。ドリフターズのコントと、スーパーエキセントリックシアターがYMOのアルバム、サーヴィスに提供したコントがヒントとなっていますが、書いているうちにとても真剣な笑えない内容になってしまいました。それでもよろしくお願いします!
作品名
「信じる者は・・。」
人 物
隊長(35)第13部隊隊長
佐藤航二(30)隊員
市村啓司(28)隊員
高丘一雄(25)隊員
隊長「砂漠で敵国の発電所を停止
させる任務を終えた俺たち第13
部隊は、救援ヘリコプターと待ち合
わせ地点まであと10分の所にいた」
隊長「休憩時間だ」
市村「隊長、隊長、みてください、
彼女の写真です。可愛いでしょ、
この作戦が終わったら結婚の
約束をしてるんです、結婚式には
必ずきてくださいね」
隊長「ああ、結婚式には必ず出席
するよ」
市村「隊長の奥様はお元気ですか?」
高丘「こらっ、隊長の奥様はご病気
で実家に居られるんだ」
隊長「ああ、10年も一緒だったけど
今は病気で離れて暮らしてる。
あいつがになったのは俺のせいか
もしれない、悪いことしたと思って
るよ」
佐藤「そうですよね、奥さんの病気は
間違いなく隊長のせいですよ」
市村「やめろ、佐藤」
○爆弾の音「どーーん」
隊長「全員伏せろ」
無音。
隊長「みんな無事か?」
高丘「あ〜死ぬ前にオムライス食べ
てえ」
市村「オムライス?こんな時に何を」
高丘「喫茶店の、ソースかけ
回した、普通のオムライス」
市村「普通のオムライス?普通、
オムライスには醤油だろ」
高丘「いや、それは普通じゃない、
オムライスにはソースだ」
市村「隊長はどっちだと思いますか?」
隊長「今は哲学を語っている時じゃない、バカ言ってないで前に進もう」
市村「わあ!」
隊長「市村どうした!」
市村「ない、板チョコがない、
ポケットに入れていた、最後の
板チョコがない!誰だ、俺のチョコ
とったやつは、絶対許さん」
佐藤「もういい、やめろ」
市村「食いしん坊の高丘、俺の
板チョコ食っただろ。明治の80
グラムのミルク板チョコ」
高丘「チョコくらいで騒ぐな、言い
がかりも大概にしろよ、この暑さ
だから溶けたのと違うか?」
市村「チョコだぞ、仮に溶けても
シミが残るだろ、やっぱりお前だな」
隊長「高丘、市村、ここで飯にしよう、
腹が膨れればチョコのことも忘れる」
市村「自分はチョコのことで怒って
いるのではないです、高丘が俺を
欺いたことに怒っているのです」
高丘「だから、俺とってないって」
隊長「今争っても仕方ない、とにかく
飯を食おう、話はそれからだ」
佐藤「お言葉ですが、隊長、最後の
食糧は先ほどの戦闘で粉々に
なりました」
隊長「仕方ない、前に進もう」
○飛行機の音「ぶーーん」
○機関銃の音「ダダダダダダ」
隊長「上空に敵飛行機!全員伏せろ」
全員「はいっ!」
隊長「飛行機、通り過ぎたな。
みんな無事か?」
「市村!」
「はい」
「高丘」
「はーい」
「佐藤」
佐藤「足に何かの破片が当たった
か?足から血が流れています」
隊長「動くなよ、佐藤!動くなよ、
止血するからな」
佐藤「隊長、もういです。俺を
ほっといて先に行って下さい」
市村「隊長、佐藤はほっといてほしい
そうです。ほおっていきましょう」
高丘「佐藤あばよ、短い付き合い
だったな」
隊長「佐藤のほっといては、ほっと
くなってことなんだ、佐藤は
ほっとけないやつなんだよ」
高丘「じゃあ、ちゃんと言えよ、
ほっとくなって」
佐藤「いつ俺がほっとくなって言った?
余計なお世話だ。ほっといてくれ」
隊長「佐藤、素直じゃないな、
俺がおぶってやるから」
佐藤「恥ずかしい、子供じゃある
まいし」
隊長「佐藤、まあ遠慮するな」
○拳銃の音「パンパンパン」
市村「弾が後ろから」
高丘「後ろから・・後ろは第14
部隊のはずだけど」
市村「後ろに味方なんいるわけない
じゃん、第14部隊なんてとっく
全滅したさ、後ろからも敵が
来てるんだ。このままじゃ
敵に追いつかれちまう」
佐藤「もう、遅い、追いつかれた」
隊長「第14部隊は健在だ!援軍は
くる、信じるんだ」
佐藤「援軍なんて来ませんよ、
信じるなんて馬鹿らしい。世の中
にフェアなんてのはない、
あるのは陰謀と打算だけだ、正直者
が正しいなんて、権力者に都合の
いい洗脳だよ。誰も信じるな、これ
は敵の罠ですよ!」
市村「いや、敵は案外、近くにいる
もんさ。なあ、正直に言えよ、
後ろから弾撃ったの高丘、お前
だろ?」
高丘「なんで俺?だったら
聞くけど、俺が撃ったといえば、
お前はどうするんだ?お前は満足
するのか?」
隊長「お前ら仲間われはやめろ
それこそ敵の思う壺だ。一歩でも
前に進むんだ。俺が断言する。
弾は高丘じゃない、信じるんだ、
そして一歩でも前へ進むんだ」
高丘「隊長、遠くに病院らしきもの
が見ます!」
市村「こんな砂漠に病院なんてある
もんか」
隊長「ただの蜃気楼かもしれない、
しかし本物の病院かもしれない」
佐藤「高丘、ちょっと待て、その
後ろポケットのものを出せ」
高丘「ポケット?何にも入ってないぜ」
佐藤「つべこべ言わずに出せよ」
高丘「あれ?なんで板チョコが?」
佐藤「高丘が市村の板チョコ盗んで
いた!これは重大犯罪である」
高丘「知らない、板チョコなんて
俺盗んだ覚えない!」
佐藤「今から軍法会議を行う。この
極限の中、食糧を盗んだ奴がいる。
高丘は、自分のエゴために
我々のルールを破った、俺は高丘を
銃殺すべきだと思う」
市村「そうだ、高丘は銃殺だな」
高丘「そんな?板チョコで銃殺なんて」
加藤「今、お前に罪が二つ増えた。
年上に逆らった罪と、常識が不足
している罪だ。この極悪人を処刑と
思うもの、挙手を願いたい、まず
俺から、俺は処刑をすべきだと思う」
○佐藤ちらりと市村を睨む
市村「俺も賛成します」
隊長「佐藤、高丘はやってないって
言ってるだろ、高丘を信じてやれよ」
佐藤「信じるって何を信じるんですか、
隊長!信じてたものに裏切られる
気持ちわかりますか?人は人を
裏切る。自分の利益ためだったら
どんな理由をつけてでも裏切るもの
なんです。いい悪いじゃない、
それが人なんです。だったら
板チョコを見過ごしたら今度は
もっと取り返しのつかないことを
やらかしますよ、高丘は」
隊長「それでも高丘は無実だ、俺は
高丘を信じたい」
佐藤「信じる、信じるって、隊長、
おっしゃりますけど。周りがどれ
位あなたを信じてるかご存じで
すか?」
隊長「みんな俺を信じてくれていると
信じている」
佐藤「じゃあ、隊長、あなたの奥さんが
貴方を裏切ってたことご存じですか」
隊長「佐藤、何が言いたいいんだ、
妻の話は関係ないだろ」
佐藤「いいえ、関係あります。
奥さん。毎週土曜の夜、料理の仲間
の食事会に出かけていたでしょう、
シャネルNo.5の香水をつけて、
その香水誰がプレゼントしたか
知っていますか?」
隊長「何お?」
佐藤「あなたの奥さん、お臍の下に
北斗七星の形にほくろがあるで
しょう、あ、もう何年も夫婦生活
なかったから忘れましたか?」
隊長「俺は妻を信じている」
佐藤「貴方の信じてるは、どうでもいい
と同義ですか?」
隊長「俺は信じてる・・」
佐藤「奥様を信じてるということは、
僕の話を疑うって事ですか?
隊長の話は矛盾だらけだ。奥さんね、
絶頂に達すると・・」
隊長「俺は、妻を信じてるよ・・」
市村「佐藤、やめろお!」
佐藤「市村、お前の婚約者もいい喘ぎ声
してたぜ」
市村「このゲス野郎、佐藤、てめえ、
殺す!」
佐藤「本性出したな、市村、
反逆罪だ。死にやがれ」
市村「佐藤、殺さないでたないで
くれ、俺が悪かった許してくれ」
隊長「佐藤、やめろ!」
佐藤「この場合、もっとも罪が
重いのは、部隊の秩序を維持で
きない隊長ではないでしょうか?
私は隊長の罷免を要求します」
高丘「佐藤、お前何を言っているか
わかっているか?」
佐藤「わかってるさ、おめでたい奴ら
だな、この隊長に従ってたら、
全滅だってことさ。死にたくな
かったら、挙手しろ」
隊長「うううう」
佐藤「隊長の罷免に賛成のもの」
市村「佐藤、おかしいぞ?
どうしてしまったんだ」
佐藤「ククク・・あはははは!
誰も手を上げないな、
いい判断だ。さすがに敵国の
スパイの言いなりになるやつは
いないと見えた」
市村「佐藤が敵のスパイ?」
佐藤「そうよ、俺は敵国のスパイさ
ヘリは来ないぜ。食糧ない、味方の
第14部隊は全滅。敵国に情報は
筒抜け、どう見てもお前たちに
生きる筋はなさそうだな」
隊長「佐藤、ここまできてなんだがな、
俺はお前がスパイだとは到底思え
ないんだ、すまん」
佐藤「この期に及んでおめでたい奴だ」
隊長「妻のことも今でも信じている。
しかし佐藤、俺はお前も信じたい、
いや信じている。みんなのためで
なく俺自身のために」
佐藤「なんだなんだ、隊長は狂信者では
なくて、ただの心が壊れた人だった
んだ、笑っちゃうな」
隊長「笑ってくれていいよ、佐藤。
俺は、空気が読めなくて、うまく人の
中で立ち回れない、愚かな人間だ。
しかし、人が人を信じられなく
なったとき、どんな地獄が待って
いるかだけは、身をもって知って
いる。俺はもうそんな地獄に戻り
たくない、それだけなんだ」
佐藤「何を呑気な事を、行くも戻るも
死しかない、今でも充分地獄ですよ」
隊長「例えこの世が地獄のごとき嘘と
策略と暴力に塗れた汚れた世界で
あったとしても俺は、誰の中に
も愛と誠があると信じていたいんだ。
誰のためでもない、自分のために」
佐藤「隊長は、心が壊れている上に、
大変なエゴイストだ、これは即、隊長
職罷免だな」
隊長「ああ、罷免でもなんでもして
くれ、ただ無駄死にだけはしてく
欲しくない」
佐藤「ところで市村、お前、結婚の
予定があるそうだが、そんな相手
なんていないよなあ」
市村「何を急に、俺の婚約者を寝
とったくせに」
佐藤「第13部隊、情報収集の
スペシャリスト、この佐藤を
舐めんなよ、市村!お前のことは
全て調べ上げているよ」
市村「佐藤、なんのことだ」
佐藤「市村、いや、第三国のスパイ、
コードネームもふもふ、なんで
この部隊に潜入した、目的はなんだ」
市村「ばれちゃあ、仕方ねえ、情報
を取るためなら人の奥方にまで手を
出す男、佐藤、お前こそ何者だ?」
ピストルの音「ばん」
佐藤「おしゃべり市村め、俺は地獄に
飽きただけだ」
○ヘリの音「ばらばらばら」
全員「ヘリだ!」
佐藤「みなさん、あのヘリ味方だと思い
ますか?それとも・・」
おわり
ここまで読んでくださいありがとうございます。