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「さて!出口を探すぞ!!」


今までの恐怖を振り払うように、ベンヴェヌードは元気良く拳を上げた。

とは言っても、ここは薄暗い洞窟の中。

出口がどこなのか、皆目検討も付かない。


右を見ても左を見ても鍾乳石と壁と水があるだけだ。


来た道を戻るか、更に先に進むか。 


「なぁ、あいつらはどっちから出てった?」


「あっち!」


ヒュドールの質問にベンヴェヌードはクリスタ達がやってきた方角とは逆の方角を指で示す。

どうする?とクリスタがヒュドールに視線を送ると、ヒュドールは行こうと言わんばかりに頷いた。


ヒュドールが先頭を歩き、その後ろを聴力を強化したクリスタが警戒しながら進み、

そしてベンヴェヌードはクリスタの服の裾を握りしめながら歩いていく。

洞窟の中はただ一本道で、3人は身を寄せ合いながらひたすら歩き続けたが出口には辿り着けなかった。


「ごめん、少し休ませて。」


どの位歩いたのだろうか。

常に身体機能強化の魔法を使って警戒し続けているクリスタが腰を下ろした。


「大丈夫か?少し休憩しよう。」


座り込むクリスタの横にヒュドールが座ると、ベンヴェヌードも疲れていたらしく喜んで座った。


「………。」


身体を休める事で襲ってくる洞窟内の冷たい空気と静寂。

聞こえる音は自分達の息遣いと近くの泉に天井から鍾乳石に伝って落ちる水滴の音のみだ。

クリスタにとって静けさが怖いと思うなんて初めてだった。


「怖い?」


クリスタの恐怖心を感じ取ったのはベンヴェヌードだ。


「少し。」


本当はかなり怖いが、少し見栄を張ってみる。


「オレはすっげぇ怖いっ!!」


見栄っ張りなクリスタと違い自分の感情に素直なのか、はたまたクリスタの恐怖心に気付いているのか、ベンヴェヌードはヒュドールとクリスタの間に割って入り、2人の腕をぎゅっと抱きしめた。


「オレ、ここから出たら剣術も魔法も頑張るからなっ!マシューは魔法使ってるし、ヒュドールは頼りになる雰囲気だし、オレばっかり弱っちくてただ付いて行くだけなのは悔しいぞっ!!」


クリスタとヒュドールの背中を追う事に自分の弱さを悔しく思ったベンヴェヌードは2人の腕を抱きしめたまま涙目で叫んだ。

家を継ぐ兄がいる次男のベンヴェヌードはガドリン家の中では甘やかされて育っている。

将来はどこかの貴族のお嬢様と結婚をして安定した日常を過ごすのだと思っていて、ベンヴェヌード自身もそれで良いと思っていた。

しかし共にいるクリスタとヒュドールは前を向いて出来る事をしているのに、こうして危機に陥って何も出来ない自分の弱さが恥ずかしく思える。


「雰囲気ってなんだよ?オレ、雰囲気だけか?」


ベンヴェヌードに頼りになる雰囲気と言われたヒュドールは脱力したような情けない声を出してベンヴェヌードの額にデコピンをした。


「いだっ!」


そのデコピンはとても痛かったらしく、ベンヴェヌードはヒュドールの腕を離し、クリスタの腕だけを抱きしめて額を押さえている。


「ぷっ…。」


そんな2人のやり取りが面白かったクリスタは、思わず吹き出してしまった。


「あっははは!」


そのまま笑い出したクリスタを見て、ヒュドールもベンヴェヌードも一瞬ぽかんとしたが、クリスタにつられて笑い出す。

大笑いする3人はいつの間にか静けさが怖くなくなっていた。

ブックマークありがとうございます。

最近モチベーションが下がってきていたので、とても励みになります。

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