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雨のように降ってきて地に刺さった矢がまた別の罠を発動させ、更に矢の雨が降ってきた。
弾かれて落ちた弓の数は100本を軽く超え、地面からは槍が突き上げている。
罠発動後の状況から、クリスタがハイスペック当て馬令嬢でなければヒュドールも
ベンヴェヌードも命はなかっただろう。
「マシュー、すまない。軽率だった。」
ベンヴェヌードは、言い方は悪いがヒュドールをおびき寄せるための餌だ。クリスタに至ってはヒュドール襲撃を邪魔する祖父への見せしめに違いない。
ベンヴェヌードの近くに見張りがいなかった……と言う事は、風の精霊に頼れないこの洞窟ないでは先程の罠でここにいる3人を殺害する絶対的な自信があったのだろう。
「……。」
項垂れてるヒュドールに何か声をかけようかと思ったが、クリスタには何と声をかければ良いのかがわからなかった。
気を付けろ?
気にするな?
巻き込むな?
どれもクリスタの言いたい事ではないような気がする。
「んー!んー!!」
沈黙するクリスタと落ち込むヒュドールににベンヴェヌードが猿轡と拘束を解いて欲しいと騒いだ。
今度は慎重に、、、。
「守護の盾!!」
先程矢を弾いたバリアの魔法をクリスタ達3人の足元の地面に広くかける。
そしてヒュドールがそのバリアの上を歩いてベンヴェヌードの猿轡と拘束を解き、クリスタが泣きじゃくるベンヴェヌードと手を繋いで少しを離れた場所に移った。
「マシュー、ごわがっだよぉ!」
少し離れた場所でクリスタの首に腕を回し、抱き付いて泣くベンヴェヌードに泣き止む気配がない。
「怖かったよね。怪我はしてない?」
ベンヴェヌードの背中をさすりながらクリスタが問うと、ベンヴェヌードはより激しく泣き出してしまった。
「ごわが……っだっ!!!」
わんわん泣きじゃくるベンヴェヌードが落ち着くまで結構な時間を要したが、その間もクリスタ達を閉じ込めた襲撃者達は姿を見せる事はなく、ただ時間だけが静かに過ぎていく。
ベンヴェヌードが落ち着いて泣き止んだ頃には、クリスタの服の肩の部分がベンヴェヌードの涙でぐっしょりと濡れてしまっていた。
「落ち着いた?」
「うん、ありがとな。」
泣き止んだベンヴェヌードにクリスタが声をかけると、ベンヴェヌードが照れくさそうに笑って身体を離すとその目と鼻が真っ赤になっているのが見える。
「ベンヴェヌード、マシュー……オレに関わってしまったばかりに申し訳ない。」
ベンヴェヌードが泣きじゃくっている間、黙って待っていたヒュドールがクリスタとベンヴェヌードに頭を下げた。
「オレを誘拐したのはヒュドールじゃないだろ!何でヒュドールが謝るんだ?」
ヒュドールの謝罪に、そう問いで返したベンヴェヌードは子供らしく純粋なのだろうとクリスタ思った。
「あいつらはオレを殺そうとしてるんだ。その為なら手段を選ばない。」
辛そうに俯くヒュドールは幸せとは言い難い道を歩んで来たのだろう。
「何で殺そうとしてるんだ?」
でもまだ子供で幸せな日常を送ってきたベンヴェヌードには理解出来ないようだ。
「家督争いだ。ラフォレーゼ領は銀の髪の碧い瞳の者が跡を継ぐんだろ?ウンディーネの力をより集められた者が継ぐんだ。どう言う訳かここ数代生まれついての後継者…水色の髪に紫の瞳は生まれていない。だから少しでも因子を受け継いだ者は強い力を持つ水の精霊の洗礼を受ける旅に出ている。」
だからヒュドールはこうして旅に出ている。
「こんな危ない目に遭うのにヒュドールは家を継ぎたい?オレは命を狙われてまで継ぎたくないな。」
「オレだって継ぎたいわけじゃない。」
ベンヴェヌードの言葉はストレート過ぎるがヒュドールは嫌な顔をせずに質問に答えた。
「オレが欲しいのは水の精霊の魔法だ。昔は水の都と呼ばれる位キレイな水に溢れた所だったのに、今ではほとんどの地域が砂漠化してしまってる。オレは水の魔法で水不足に苦しむ人達を助けたいんだ。」
ヒュドールの思惑はどうであれ、水の洗礼を集める事を疎んじる人物がいるのだろう。
それでもベンヴェヌードの質問に真っ直ぐな瞳で応えたヒュドールの瞳は、やはりキレイだとクリスタは思った。




