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3

美麗なスチルの前で幸せそうな顔をして眠る少女。


この少女は『やり直し(笑)』の文字が出なかった事を知っているのだろうか。



「うう〜ん。」



そもそもここはどこで、この少女は何故ここで寝ているのだろうか。


少女とこたつとゲームとテレビとみかん以外は、何もない。いや、少女が何故ここで寝ているのだろうかではなく、何故詩織がここにいるのだろうか。



「ここはどこなの?」



こんな見渡す限り真っ白な場所なんて詩織は知らない。



「ここは神域だよ。」



詩織の呟きのような疑問に答えたのは、今まで眠っていた少女だ。


伸びをしてから起き上がってキョロキョロ辺りを見回すと、眼鏡の位置を直しながら溜め息を吐いた。



「やっちまった。」



ノマエンのスチルを恨みがましい表情で睨んだ様子から、『やり直し(笑)』の画面が出ていない意味を理解しているようだ。



「初期化されるの何回目だよぉ。」



机に突っ伏してシクシクと泣き出す少女の気持ちが詩織にはよくわかる。わかり過ぎるほどよくわかる。



「ショックの過ぎて世界を滅ぼしちゃったじゃないかぁ。お気に入りの世界だったのに。」


「えっ?」 



滅ぼしちゃった、と確かに少女は言った。


初期化でショックを受ける気持ちはわかるが、世界を滅ぼしちゃったと言う気持ちはわからない。



「私はね、お前の世界を創造した神なんだ。」



自分は神だと、普通なら信じられないような話だが、何故かそれは本当だと頭よりも心で詩織は理解した。


そしてその神が滅ぼしちゃったと言うのは、詩織のいた世界なのだろう。



「私は、死んだのですか?」


「ああ、私の滅ぼしてしまった世界と一緒に死んだ。ここはお前の世界があった場所ではあるが、すでに神の領域、神域と化した。そして今のお前は詩織と言う個体の意識だった存在……魂と言う奴だ。」



この白い場所が詩織のいた世界。


ならここには詩織の魂だけではなく詩織以外の人の魂もいるのではないか、と詩織は辺りを見回すが……誰もいない。



「ここに来れるのは神に呼ばれた魂だけだ。私は無意識にお前らを呼んだらしい。」


「私を……呼んだ?」


「正確には死ぬ直前に持っていた荷物。」



神がパチンと指を鳴らすと、詩織の魂から世界が滅びる直前に詩織が持っていた詩織の姉のカバンが現れた。



「あ……。」



カバンが出現するのと同時に世界が滅びる直前の詩織の記憶が呼び起こされていく。


荒れた自宅。


母の涙。


虚ろな姉の瞳。


父の後悔の言葉。


思い出したくもない記憶に頭を抱える詩織の前で、姉のカバンの中からラッピングされたプレゼントがふわりと出てきた。



「これはいらん。お前のだ。」



プレゼントのラッピングから1枚のカードが剥がされ、詩織の前で煌めく。


詩織がそのカードを手に取ると、見慣れた姉の文字が並んでいた。



ーーーー誕生日おめでとう!!ーーーー

これ、製作者に特別にコピーさせてもらったんだよ。

目指せハピエン!!


p.s.近い内に製作者(お姉ちゃんの彼氏)を紹介するからね♡



「うほおぉぉぉぉっ!!こ、これは君にオレが攻略出来るかな?の設定が書かれているではないかっ!!」



バースデーカードに書かれた姉の彼氏である製作者とは君にオレが攻略出来るかな?の製作者らしく、詩織への誕生日プレゼントは君にオレが攻略出来るかな?の手書きの攻略本のコピーだった。




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