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「ここは確かに神域ですが、世界は滅んでいません。あなた方が光の精霊様の住処に招き入れられただけです。」


ヒュドールの腕の中で震えるクリスタに、光の自然精霊は優しく言った。


「オレ達が神域に入っただけで、他の皆は無事だと……信じても良いんだな?」


むせ返るほどアルコールの匂いが漂うこの白い空間が神域とはヒュドールには俄に信じ難いが、クリスタも光の自然精霊もそう言ってる以上ここは神域なのだろう。


「はい。精霊は嘘を吐きません。」


ヒュドールは光の自然精霊の言葉通り神域の外の無事を信じて安心するが、クリスタの震えは収まらない。


「クリスタ、大丈夫か?」


「…………。」


ヒュドールの問いかけにヒュドールにしがみつく力を強くするクリスタは、どうやら大丈夫ではないようだ。


「クリスタ……お前の家族も、オレ達の親友も、ヴァレリーも、無事だ。」


クリスタにゆっくり言い聞かせるようにゆっくり語りかけるヒュドールに、クリスタはゆっくりと顔を上げる。

その碧い瞳は涙に濡れていて、その涙をヒュドールは親指で拭った。


「本当?」


拭っても尚流れ落ちる涙。

その顔からは恐怖で血の気が引いている。


「クーリースーターー!!!」


神域の中で震え上がるクリスタの耳に、クリスタを呼ぶベンヴェヌードの声が聞こえた。


「ベンヴェヌード?本当に無事なのね?」

「クリスタ!!どこだ?!」


クリスタを探して叫ぶベンヴェヌードの声に、世界は無事だとようやく安堵する。


「クリスタ!!返事しろっ!!!」


「クリスタ、クリスタ……ってうるせぇなぁ。」


神域の外から聞こえるベンヴェヌードの大きな声が耳障りだったのか、光の精霊がワインのボトルを片手にゆらりと立ち上がった。


「君は……クリスタ=ラフォレーゼ?」

「クーリースーター!!!」


響き渡るベンヴェヌードの大きな声が頭に響いたのか、光の精霊は頭を押さえながら顔を顰めている。


「クリスターー!!」


「チッ!」


ベンヴェヌードの大きな声に苛ついた光の精霊が舌打ちをすると、周囲の景色が変わった。


「あっ!いた!!クリスタ!!」


ここは先程までいた山の頂きなあった湖の畔。

神域から出たらしく、ベンヴェヌードはクリスタとヒュドールが急に目の前に現れて驚いたが、すぐに気を取り直して2人に突進してきた。


「クリスタ!どうした?!誰かに苛められたのか?」


ヒュドールの腕の中で泣くクリスタに、何かがあったことは一目瞭然。


「誰がクリスタをいじめた?!お前か?」


ベンヴェヌードがギロリと睨む先には光の精霊がいる。

光の精霊は力の強い精霊だからか、ベンヴェヌードにも見えるようだ。


「私がいじめた……と言うのかい?」


ゆらり…ゆらり…とワイン片手に千鳥足で歩いてくる光の精霊はおどろおどろしく怖い。


「いじめられたのは私だー!!何故君はクリスタを選んだのだい?君がヒロインを選んでいてくれれば、私があのような屈辱を受ける事もなかったと言うのに!!!」


唾を飛ばしながら顔を真っ赤にクリスタにして怒る光の精霊と、そんな光の精霊に怯えるクリスタ。


「お前っ!!クリスタに怒鳴るなっ!!」


ベンヴェヌードは光の精霊とクリスタを抱き締めて守るヒュドールの間に入り、光の精霊と睨むのだった。

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