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「水の精霊の領域なら水の精霊から話は聞けないの?」
ヒュドールと背中を合わせたまま、辺りを警戒しながらクリスタはヒュドールに尋ねた。
「この洞窟の水の精霊はオレの声は聞く気がないらしく、オレに背を向けてるんだ。火の精霊もいないし、土の精霊はいるが近寄って来ない。」
「魔法は使えないの?」
「まだ洗礼を受けてる最中だからな。」
この世界では精霊からの洗礼を受けなければ魔法は使えない。
クリスタとは洗礼方法も違うらしいヒュドールは、まだ洗礼を受ける旅の途中な為魔法は使えないようだ。
ならば、洗礼を受けたクリスタはどうだろう?
クリスタは母譲りの魔法の才能で多彩な魔法を操るハイスペック当て馬令嬢だ。しかも創造神から初回転生サービス?で能力を底上げされているはず。
クリスタの中にある魔法の知識を思い返すと、マシューが身体機能強化の魔法を教えてもらっている姿が思い出された。
『まず身体の内にある魔力を感じるの。どんな魔法も魔力を感じる事が出来なければ使えないわ。』
これは母がマシューに言った言葉だ。
魔力を感じる……目を閉じて集中したいが、どこから誰に襲われるかわからない今の状況では危ない。
周りに気を配りながら、体内の魔力を探す。
さすがハイスペック当て馬令嬢なだけあって魔力をすぐに感じ取る事が出来た。
『魔力を感じ取れたら、次は魔力を均一に巡らせるのよ。』
均一に巡らせる。
これはなかなか難しい。
「マシュー?」
いきなり黙り込んだクリスタに不安を覚えたのか、ヒュドールが声をかけてきた。
「少し待ってて。」
均一に、均一にと集中しているクリスタに魔法を使ってると言う説明をする余裕はなかったが、ヒュドールはそれから何もただ黙ってクリスタを待っている。
『均一に巡らせたら身体の強化は出来てるわ。普段より力も速さも機能も違うから力の込め過ぎには気を付けて。後、特に強化したい所に厚く魔力を巡らせなさい。視力を強化したいなら目、聴力なら耳。』
クリスタが今強化したいと思うのは耳だ。
耳に厚めに魔力を巡らせると、かすかにベンヴェヌードの声が聴こえた気がした。
「ヒュドール、あっち!ベンヴェヌードの声が聞こえた!!」
聴力を強化していないと気付けない程小さな声は泣き声なのかうめき声なのかが、よくわからない。
「身体強化の魔法?まだ10歳って聞いてたのに、すごいな。」
聴力を強化しているからか、ヒュドールの声が耳に響いてクリスタは顔をしかめた。
「ヒュドールだってそんなに変わらないでしょ?落ち着いてるしすごいと思うよ。」
「オレは12歳だ。お前よりかは年上だからな。チビのマシューが一緒なのにオロオロ出来ないだろ?」
年上には年上のプライドがあるらしく、ヒュドールは自分より幼いクリスタを守らなければと言う思いで気持ちを奮い立たせてるようにも見える。
「行くぞ。」
ヒュドールの手を差し出してきたので、クリスタはその手をそっと繋いだ。




