表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/391

229

詩織のコレクションの中で1番美麗だった薄い本は、やはり創造神にあげてしまったあの本だろう。

しかし、それ以外にも本はいっぱいある。


一冊だけ…とカーラに頼み込まれ、詩織のコレクションから比較的ライトなBL作品を一冊念写して渡すとカーラは目を輝かせた。


「世界が広がった気分だわ。」


完徹で語り合ったにも関わらず清々しい笑顔を向けるカーラと反して、クリスタは疲れきっている。

カーラが部屋の備え付けの簡易キッチンで朝食を作ってくれたが、クリスタは寝不足と精神的な疲労で食べる気がせず、にこにこと朝食を食べるカーラを見ていることしか出来ずにいた。


「私は禁断の世界に押し込められた気分だわ。」


詩織はコレクションをしていた位BLは好きだったが、クリスタはそうでもない。

同じ魂の持ち主でも詩織とクリスタでは嗜好は違うようで、あまりBLの得意でないクリスタにとってBL同人誌の用語の説明等、カーラの好奇心が少々辛かった。


「創造神様は高尚なご趣味をお持ちなのね。私もスターレット様推しよ!」


どうやらカーラも創造神と同じヴァレリー推しらしい。初めての推し被りは創造神とカーラ。


「シューア様が嫉妬しない?」


婚約者のいるカーラが、他の男性を推しても良いのだろうか。


「ダクラス様に話すつもりはありませんわ。」


にっこり笑うカーラにとって、推しはあくまでも鑑賞用。

実際に愛する人とは違うようだ。


それからカーラは制服に着替える為に部屋に戻り、クリスタも身支度を始める。

その後迎えにきたカーラと共に女子寮を出ると、女子寮の前にはクリスタを待っていたヴァレリーがいた。


「おはようございます、クリスタ様。スクウェア嬢もおはようございます。」


朝から胸に手を当ててにこやかな笑顔を浮かべるヴァレリーだが、やはり『オレ攻め』での純粋そうなヴァレリーとは違うと思う。


「おはよう、ヴァレリー。」


「おはようございます、スターレット様!」


見るからに疲れているクリスタと瞳をキラキラ輝かせてヴァレリーを見るカーラに、ヴァレリーは一瞬戸惑ったものの、穏やかな笑顔を浮かべている。


「お2人の仲がよろしくて何よりです。」


「うふふ、私達はとても仲良しですのよ。昨晩はクリスタと一晩中話し込んでしまいましたの。」


笑顔のままのヴァレリーに、カーラは令嬢らしい華やかな笑顔を向けた。


「……そのようですね。」


クリスタが疲れているのは一晩中話をしていたから…、しかし、カーラの元気はどこから来るのだろう。


3人で教室に向かうと、教室の前で話をしているアルトゥールとフィーアとアインツ、そしてベンヴェヌードを見かけた。


アルトゥールとベンヴェヌードのフィーアに向ける表情は恋する男の顔をしている。

ベンヴェヌードの…クリスタの知らない表情に、クリスタの心が痛んだ。


「クリスタ様。」


寂しげな表情をするクリスタの視界を遮るようにヴァレリーがクリスタと前に立つと、クリスタの耳元に顔を寄せた。


「そのようなお顔で他の男を見つめないで下さい。嫉妬してしまいます。」


「?!」


ヴァレリーの甘い吐息がクリスタの首筋を撫でると、クリスタは赤い顔をして身体を震わせる。


「貴女は私の唯一無二なのですから。」


チュッと首筋からリップ音が聞こえた。


「ヴァレリー?!」


首筋にキスされた?!と慌ててヴァレリーから距離を取るクリスタに、ヴァレリーはいつも通り穏やかな笑顔でそこにいる。


「私は独占欲が強いのです。貴女の美しい碧い瞳で、私以外の男を見つめて欲しくない。」


ヴァレリーは穏やかな笑顔を浮かべているはずなのに!

今は爽やかな朝なはずなのに!

『オレ攻め』でのヴァレリーは、あんなにも爽やかなのに!

リアルのヴァレリーからは夜の妖しさが漂っている。

ヴァレリーの妖しさに耐えきれないクリスタは、隣にいたカーラに抱きつくと、カーラは優しく抱きしめ返してくれた。


「スターレット様はヤンデレ属性なのね。」


カーラの呟きに、激しく同意だ。


「ヤンデレとは何か存じ上げませんが、ベンヴェヌードや水の王に対してもそう……クリスタ様の、一度懐に入れた者への警戒心の薄さは改めた方が良い。男は皆オオカミなのですから。」


そう言って胸に手を当てて微笑むヴァレリーから、スッと妖しい雰囲気が消えていく。

ヴァレリーは妖しさまで亜空間に収納出来るのかと、思わず思ってしまう程の変わり映えに驚いているクリスタの瞳には、もうベンヴェヌードは映ってはいない。


「さぁ、クリスタ様、私の腕の中ならいつでも空いています。そろそろスクウェア嬢からお離れ下さい。」


腕を広げて、クリスタを受け入れる準備万端のヴァレリーを横目に、クリスタはカーラに抱き着く力を強めた。


「ふふふ……親友と護衛騎士の間で翻弄される令息って設定も萌えるわね。」


それはクリスタにしか聞こえなかったカーラの呟き。


「カ、カーラ?」


クリスタは恐る恐るカーラから離れると、そこには令嬢らしく華やかな笑顔で立つカーラがいる。


「本当に、世界が広がった気分ですわ。」


カーラの貴族の令嬢らしい笑顔の裏に、クリスタは隠された萌の設定を感じた。


「禁断の世界に押し込められた気分ですわ。」


貴族の、貴族による、貴族らしい笑顔には要注意。

それはカーラやヴァレリーだけでなく、大好きな兄のマシューにも当てはまるのだが。

クリスタはこの日、貴族の笑顔の裏に隠されたモノを初めて怖いと感じたのであった。

ダグラス・シューア……カーラの婚約者です。


たくさんの皆様にご拝読頂けて、びっくりしながら小躍りしつつ喜んでいます!

評価&ブックマーク&いいねをありがとうございます!

とても嬉しいです♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  禁断の世界=創造神が創った世界で間違っていない(≧∇≦)b
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ