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「………。」


「………。」


リカルドに可愛いと言われ照れるクリスタを見て、言った本人も照れている。


「……。」


「……。」


思春期の男女が醸し出す甘やかでピンク色の空気に2人して照れてしまい、ガタゴトと揺れる馬車の中で何も話す事が出来なくなってしまった。


「………。」


「………。」


膝の上で拳を握り締め、動かないリカルド。

皇帝の長男であり次期皇帝と言う皇太子の立場であるリカルドが、年下であるクリスタ相手にここまで緊張を隠せないでいるのは、クリスタにとって意外だった。

リカルド本人も意外に思っている事なのだが。


「…………。」


「…………。」


パカッパカッと馬の蹄が地面を蹴る音のみが響く馬車内の沈黙が重い。

何か話題を……と模索すると、クリスタには話題がある事を思い出した。


「殿下、オリエンテーリングの時にお預かりした指輪です。大切な物を私の為にありがとうございました。」


クリスタが鎖のネックレスで首にかかっていたリカルドの守護の指輪を外すと、リカルドは握り締めた拳をゆるゆると開いていく。

鎖と共にチャリッと音を立てて、指輪はリカルドの手のひらに乗せられた。

リカルドの開ききっていない手のひらに乗せられた指輪と鎖は、クリスタの温もりが残っていて温かい。


「それと、これは大事な指輪をお借りしていたお礼です。」


追加で手のひらに乗せられたのはタッセル。


「これは…マシューが持っていたお守りだね?」


魔法石からフリンジまでクリスタの色で作られたタッセルは、マシューがフィーアと初めてあった日に壊れてしまったタッセルと同じ物だ。


「もらったその日の内に壊してしまった事を、マシューは見ていられないほど嘆いていたよ。」


あの荒れっぷりは凄かった…と、思い出すだけでも身の毛がよだつ。


「初めて作った魔法石でしたから、作り方が悪かったのかもしれませんね。」


もらったその日の内に壊れてしまったとは…魔力石を作る手順に何か不備でもあったのだろうか?


「ありがとう、大事にするよ。代わりにこの指輪はクリスタが持っていてくれないかい?」


リカルドはタッセルの前に手のひらに乗せられた守護の指輪を、もう片方の手でつまみ上げクリスタに渡した。


「この指輪は…身につけていると一度だけその身を救ってくれると言う貴重な守護の指輪です。帝国の第1皇子である殿下がお持ち下さい。」


クリスタは渡された指輪をギュッと握り締めて微笑むと、指輪を受け取らず、改めてリカルドの手のひらに乗せる。


「詳しいね。」


「私も同じ指輪を持っていましたから。」


洗礼の時に神からもらい、ヒュドールに渡したあの指輪。


「だったら、クリスタの指輪とオレの指輪を交換して欲しい。」


効果が同じならリカルドの指輪をクリスタが持っていても問題はないはずだ。


「申し訳ありません。私の指輪は私の大切な友人を守る為に役目を終えてしまいました。ですので、私の指輪と交換する事は出来ません。」


「……わかった。」


しぶしぶだが守護の指輪を受け取ったリカルドは、鎖を首からかけて服の下へとしまった。


「その大切な友人って言うのは、もしかして隣国の…水の新しい王かい?」


水の王……それはウンディーネの洗礼を受け、水の主となったヒュドールの事だ。


「はい。」


クリスタが頷くと、リカルドの表情が厳しいものへと変わった。


「クリスタと水の王はどんな関係?」


先程までの照れて甘やかなピンク色の雰囲気はどこへやら。

リカルドはクリスタとの距離を詰め、クリスタを閉じ込めるように背もたれと側面に手を付いた。

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