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入学式の日に星5のクラスに振り分けられていた、あのピンクオレンジのふわふわの髪の少女が『オレ攻め』のヒロインなはず。ゲームのパッケージの立ち絵にそっくりだった。
魔力によるクラス分けは同じだったヒロインが学力診断テストの後同じクラスにならなかったと言う事は、学力診断テストの結果がかなり悪かったのだろう。
確かゲームでのヒロインは今回のオリエンテーリングで幼馴染み枠のアインツと、光の精霊の加護を受けたばかりのヒロインを守る為にアルトゥールとヴァレリーが同じグループになっていた。
ゲーム開始して間もなくのイベントだったからか攻略対象者達との親密度が低く、アインツとヴァレリーは優しく接してくれてはいたが、アルトゥールがとにかく冷たかった事を覚えている。
親密度が高くなればなるほど攻略対象者達の態度が甘くなっていくのだが、ゲーム開始時に冷たかったアルトゥールの変化は特に凄かった。
直に触れると低温火傷を負ってしまうほど冷たいドライアイスのような態度だったアルトゥールが、このオリエンテーリングをきっかけにヒロインとの距離を縮め、1年経たずに甘々のデレデレになる。
独占欲が強く、ヒロインを溺愛するアルトゥールは他の男の視界に入る事すら気に入らず、常にヒロインの側にいるようになっていった。最初のドライアイス状態が非常に辛かったのだが、その冷たさがあったからこそ!溺愛される喜びもまた大きい。
特殊な引きこもりのヒューは例外として、他の攻略対象者達は皆紳士なので誰にも優しいのだが、誰の言う事も聞かないオレ様イケメン皇子がヒロインの願いだけを叶え、ヒロインにだけその笑顔を見せる。
ヒロインだけに見せる特別な表情が世の中の女性を騒がせていた。
そんなアルトゥールのノマエンは、恋人にはならなかったが、良き仲間として共に冒険者になって旅立っていく。そしてバドエンは王位を狙って反乱を起こすが、兄であるリカルドから返り討ちに遭い、ヒロインと共に一生幽閉されると言うものだ。
ノマエンでもバドエンでもアルトゥールと一緒にいられて嬉しい!!と喜んでいたあの頃が懐かしい。
「クリスタ!授業が終わったら買い出しに行こうぜ!!」
クリスタが詩織の記憶を思い出していると、ベンヴェヌードがライムと共にやって来た。
「ベンヴェヌードとライム様はとても仲が良くなられたのですね。」
「あぁ!すっかり仲良しだ!なのにライムはオレを名前で呼んでくれねぇの。」
「だって名前長いじゃん。ガドリン君の方が言いやすいししっくりくるんだ。」
ライムの言うように、確かにベンヴェヌードの名前は長いと思う。
「それで、何を買いに行くの?」
配布されたレジュメを読む限り、食料や簡易テントに救急箱は学校から支給される。
各自で用意する物は筆記用具位だ。
「おやつだっ!!」
なるほど、おやつは支給されない。
殺傷能力の高い武器や怪しげな薬等は持ち込み禁止だが、おやつは持ち込み自由。
クリスタはベンヴェヌードやライム、そしてカーラと放課後たくさんのお菓子を買いに出るのであった。




