ママ殿は鬼なのじゃ!
「卵と人参だけしか買えなかったぁ!?」
ゴゴゴゴという怒りのオーラを放出しこめかみに血管を浮かび上がらせた一郎の母を前に麗華は正直に告白した。
「最初はお金がなくて困ったのじゃが、質に私のアイテムを幾つか売って五百円を手に入れたのじゃ。それだけしか貰うことができなかったのじゃ。どうか、勘弁しては貰えぬだろうか」
「ダメよ」
麗華の懇願は一言で斬り捨てられてしまう。
「私は全部買ってきなさいと言ったのよ。分かったら、もう1度行ってきなさい!」
「しかしもう金がないのじゃ。どうやって集めれば良いのじゃ」
「それくらい自分で考えなさい!」
尻を箒で叩かれ、無理やり追い出される。尻を摩りながら、少女は思案する。
「ママ殿は厳しいのじゃ。普通ならば恩赦するところなのじゃが……しかし、参ったのう。
これでは一郎を学校に行かせるどころではなくなってしまうのじゃ」
歩きながら考えていると、彼女の頭に単純ながらも名案が浮かんだ。
「そうじゃ。私がバイトをすればいいのじゃ! それなら質に忍具を預けることもないし金も稼げる一石二鳥じゃ!」
思い立ったら即行動。
麗華はスーパーに頼み込み、試食販売の仕事を貰えることになった。
もちろん面接など受けているはずがない。店員が店の奥に引っ込んだ隙を突いて手刀を首筋に見舞って昏倒させるという外道な手段で得た彼女の初仕事、成功なるか。
「フハハハハハハハハハハ! 美貌溢れるこの私が試食を勧めるのじゃ! 買わない者がいるはずがない! 老若男女どんと来いじゃ!」