部屋に響く謎の声なのじゃ!
ぐうぅ~。
突如として部屋の中にくぐもった音が響いた。ガタッと立ち上がり、麗華は真剣な顔つきで部屋を見渡す。
「聞こえたか、一郎」
「うん」
「この部屋には私達しかいないはずなのじゃが、怪しげな音が轟いたのじゃ」
「それはきっと――」
「シッ」
自分の口に手を当て、静かにするように指示を出す美少女。
制服の胸ポケットからクナイを取り出し、敵の襲撃に備える。
冷たい汗が少女の額から流れ、首や鎖骨が濡れていく。
緊張から流れる汗を拭い、歯を食いしばり睨む。
ぐうぅ~。
「また聞こえたのじゃ。隠れるなど卑怯じゃ! 姿を現せい!」
ぐうぅ~。
三度目の謎の音。それは麗華の中から聞こえてくる。
「こやつ、私の身体に憑依しおったか! こうなれば私自らこの魔物を倒すしか――」
「現実を見なよ。今の音はアンタのお腹の音だよ」
「なっ……」
一郎に指摘され顔が真っ赤になる。そしてふにゃと床にへたり込んでしまった。
「私としたことがまたも恥を見せてしまった……」
「何か食べてきたら?」
「一緒に行こう、一郎。私はこの世界に来たばかりでどこに何があるかもわからん。
だから君の助けが必要じゃ」
「アンタの誘いに乗るつもりは無いし、食卓に行けば何かあるはずだから、1人で行って」
「一郎の鬼! 君がそんな冷たい心の男とは思わなかったのじゃ」
「何とでもいいなよ。僕は二度寝する」
「仕方あるまい。ここは私で挑んでやるとするかの。腹が減っては戦ができぬからの。
君には米の一粒も分けてはやらんのじゃ!」
舌をべーっと出して強がると、部屋の扉を前足蹴りで開けて麗華は外へ飛び出した。