人間は顔より心なのじゃ!
8時15分。世間では学校の朝の朝礼がはじまっている時刻であるが、一郎少年はベッドの中から出る気配はない。麗華はあぐらをかき、一郎がやる気を出すのを待っている。
「一郎はどうしてそこまで学校に行くのを拒むのじゃ」
「アンタには教えたくない」
「私は君の推しだと言うのにそこまで信用されていないようじゃな。君のアニメを視聴している時の熱烈な愛はどこへいったのじゃ?」
「……外見とその喋り方が好きだったんだけど、実際に会ってみるとアンタってうざいね」
「それが愛した者にかける言葉か! 君は女心というものがまるでわかっておらん!」
「だって僕は男だし」
「うーむ。肝心なことを忘れていたようじゃな。確かに君は男じゃ。じゃが、少しは女子の気持ちも察してやらんと、モテる男になれんじゃろうが」
「どうせ僕はイケメンじゃないからモテないよ」
「その自信の無さはなんじゃ! 良いか、人は顔ではない! 心なのじゃ!」
拳をぐっと握り、力説をはじめる麗華。
「どんなに顔がよくとも心が悪ければ人は好かれぬ。人間として当然の事じゃ」
「だからアンタは僕に嫌われたんだね」
「……」
無言。からの凹み。
「君は私を悪い心の者とみていたのじゃな。さすがの私も見抜けなかったのじゃ」
「僕を学校に行かせようとする時点で充分悪人の資格は満たしているよ」
「ふっふっふ。君は私を策にはめようとしているの? 好感度を高めたいのなら学校に行かせるなとそう遠回しに主張しているのじゃな。じゃが、君の策略にハマるほど私は愚かではない!
本当に好かれたいのなら時には厳しいことを言ってやるのが人の道なのじゃ!
わかったらさっさと支度して学校へ行くのじゃ! 今ならまだ間に合う!」
「もう手遅れだよ」
「諦めるでない一郎。今なら教師に多少怒られるかもしれぬが、楽しい学校の一日を過ごす事は可能じゃ!」
「学校が楽しいならはじめから引きこもっていないよ」
「うむ……言われてみればその通りじゃな……」