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ナルシズム

作者: なめらかドライヤー

私は自分の容貌を醜いと感じる。おそらく、適正な評価であろう。故に、私は自分の精神を美しいと信じる。過大評価だろう。

私が、自身の容貌の醜さを自覚したのは五歳の頃だった。私の周りの大人達は、特に美醜に就て勤勉だったのだろう。「カッコいい」「可愛い」と「頑張ろうね」を器用に使い分けていた。前者と後者の違いを幼いながら、いや、幼いからこそ防御も曲解もせず受け止めてしまえたのだろう。ああ、醜いのか。そうか。

私は技量を身につけようとした。「カッコいい」を。五歳の想像のつく技量など小さい。自分も小さい。だから、大きく見えたのだ。まず縄跳びを覚えた。一番、二番とは言わないまでも四番、五番。どうやら発育も良くなかったので、苦労の末の、精一杯の技量だった。「頑張ろうね」と言われた。

次は、口笛を覚えた。母親に教えてもらってド、レ、ミと吹いて、次のド。そうして後は我流で、もう二回、ドを過ぎる所まで吹ける様になった。「うるさい」と言われた。

次に、道化を覚えようとした。顔色を伺い、うるさくない様に、騒ぐ。努力などしていない様に見せる。時折、変な口笛を吹き、大袈裟に縄跳びの縄に絡まる。「変な奴だな」と言われる様になった。

以降二十年、私の周りは皆一様に笑顔であった。過大評価だろうか。真っ直ぐな心は、恐らく、ない。眉間の皺を見ればつまらぬ駄洒落を発し、落ちた声色を聞けば下手なステップを踏む。他人が哀しい時に笑わせ、楽しい時には、すっ、と姿を消す。

どうだ、私の精神は美しいだろう。美しい筈だ。それくらいは、思ってもいい筈だ。

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