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098 新たな遺跡

SIDE:ガイアベザル帝国 御前会議


 御前会議は敗戦の責任を問う弾劾裁判の様相を呈していた。

遺跡を奪取しようと功を焦った調査兵団団長イオリと大艦隊を与えられながらほとんどを失って来た艦隊司令ヴェルナールが皇帝ロウガ二世の前に引き摺り出される。


「よくもおめおめと生きて帰ったものだ」


 御前会議に出席しているのは、帝国の中枢で政務を行う貴族、各方面で侵略戦争に従事する軍の高官たち――彼ら貴族だが――だった。

リーンワース王国への侵略は陸上戦艦の力を以ってすれば容易のはずだった。

調査兵団の不手際も大艦隊で攻め込むことで踏みにじれるはずだった。

それが調査兵団は10隻、ヴェルナール艦隊は12隻もの艦を失って帰ってきたのである。

ヴェルナールが中破した陸上戦艦を持ち帰ったが、ガイアベザル帝国には破壊された陸上戦艦を修復する技術がないため、使えるユニットのみを部品取りするということしか出来ないのだ。


 調査兵団団長イオリからの報告により、敵が陸上戦艦を修理できるほどの技術を持ち、魔導砲まで修理できることなどの情報は、糾弾する彼らの頭からは抜け落ちていた。

それほどガイアベザル帝国が負けるわけがないという妄信が蔓延していたのだ。

イオリとヴェルナールは反論する機会も与えられずに、ただただ皇帝の裁可――おそらく死刑――を待つだけだった。


「北方で新たな遺跡の反応を得ました!」


 そこへ情報局局長ヒルテマーが朗報をもたらした。

アギトの独断専行に始まり、調査兵団団長イオリの大失態、ヴェルナールの大敗による敗走でガイアベザル帝国は貴重な陸上戦艦を23隻も失った。

新たな遺跡を見つけたということは、新たな陸上戦艦を手に入れられる可能性を秘めており、皇帝ロウガ二世も顔を綻ばせるのだった。


「南の遺跡と同等の誘導信号を確認しました」


 皇帝ロウガ二世の前に引き摺りだされていたイオリが右手を上げて発言を求める。

遺跡のことは調査兵団に一日の長がある。

皇帝ロウガ二世は頷くことでイオリの発言を許した。


「遺跡の活性化です。

おそらくリーンワース王国の遺跡と同等の、陸上戦艦を修理できる規模の遺跡でしょう」


 イオリの発言に御前会議は騒然となった。

全ての艦の魔導砲が修理出来ればリーンワース王国と対等どころか上回る戦力を得ることが出来る。

稼働状態にない陸上戦艦を修理出来れば数も大幅に増やせる。

これはガイアベザル帝国にとってまさに朗報だった。


「となるとイオリを死なせるわけにはまいらんな」


 皇帝ロウガ二世が呟く。

イオリの首の皮が繋がった瞬間だった。

遺跡調査といえば調査兵団に任せるのが一番。彼らにはそれだけの能力があった。


「イオリは調査兵団を率いて北方で発見された遺跡の調査に向かうのだ。

何としてでも陸上戦艦の修理能力を得るのだ!」


「陸上戦艦の能力が同じなら我とて負けるわけがない!」


 ヴェルナール司令が吠える。

皇帝に対して発言の許可もとらな暴挙だったが、皇帝ロウガ二世はその発言を尤もだと思ってしまった。


「それもそうか。ヴェルナールも行け。処分は手柄次第ということにする」


 こうして敗戦の将二人が北方で確認された遺跡調査へと向かうことになった。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



SIDE:ガイアベザル帝国 北方


 この大陸の北方は全てガイアベザル帝国の支配地域だ。

大陸を東西に分断する大山脈、そこから北はほぼ全てガイアベザル帝国が支配している。

ほぼの理由は属国扱いで生かしている小国がまだ存在するからだ。

それらの小国は生かすメリットがあるというだけで、そのメリットが無くなれば帝国の気まぐれでいつでも攻め滅ぼされてしまう立場だった。

ここ最近キルト王国やルナトーク王国、ザール連合国が滅ぼされたのも、そんな気まぐれによるものだった。

なので北方で発見された遺跡は誰の邪魔をされることなく調査が出来る……はずだった。


「ここが遺跡の入り口だろう」


 調査兵団団長イオリが誘導信号を三角測量し、長年の経験で入り口の位置を推測する。


「地面を掘るぞ。爆破準備にかかれ」


 調査兵団の兵士たちが慣れた手つきで爆薬を仕掛けていく。

しばらくして爆破の準備が整った。


「舷側火薬砲、爆裂弾用意。目標爆破地点。発射!」


 イオリの命令で旗艦ローザスが火薬砲を発砲する。

火薬砲の爆裂弾が着弾、爆発すると仕掛けられていた爆薬が連鎖爆発を起こす。

爆発が収まった後は地面が大きくえぐれ、固い隔壁が見えてた。


「よし、この外部構造物は間違いなく遺跡だぞ。それも工場クラスと見た」


 イオリは管理者権限による遺跡の解放を試みた。

しかし、遺跡は何の反応も示さない。


「工兵隊出動! 蓋を開けろ」


 イオリが土魔法を使う工兵隊の出動を命ずる。

遺跡の隔壁は管理者権限を持っていれば開くはずなのだが、ここは権限レベルが高いのか、イオリには開くことが出来なかった。

イオリが調査兵団の団長を任されているのは、この管理者権限が他人より高かったからだ。

これは生まれつきのものであり、イオリはその管理者権限の高さによって数々の遺跡を解放し出世したのだ。

だが、ここはイオリでさえ解放できない遺跡だった。

管理者権限が高い、つまり重要度が高いということ。

彼らが発見したのは第13ドックに匹敵する遺跡だったのだ。

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