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082 帰路と暗雲

 ガルムドの航行データから北の帝国の進入路がわかった。

大陸を東西に貫く山脈、唯一の通り道である峡谷には、リーンワース王国の国境の街ボルダルの要塞がある。

そこをリグルドが通って侵攻して来たわけだが、リーンワース王国が俺から買った蒸気砲で防衛しリグルドを撃破した。

そのためだろう。ガルムドは峡谷の突破をせずに山脈を大きく迂回し、西の海岸から南下して第13ドックを目指して来ていた。

蒸気砲の脅威を避け、ビーコンに誘導された地を早急に調査するためには、そのコースしか残されていなかったのだろう。

北の帝国の陸上戦艦では、魔導通信機が使用状態になく、リアルタイムでの情報交換が出来ない。

唯一ビーコンなどの信号受信のみが可能で、それに頼ってこの地までやって来たようだ。

もし、次の調査に陸上戦艦が派遣されるとしても、ガルムドを失ったことを把握するまでの時間と、また同じコースを辿る時間を考えれば1か月は猶予があるだろう。

第13ドックのビーコンは既に切られており、ガルムドが調査結果を持ち帰ることも無いので、第13ドックの詳細位置は秘匿できたと見ていいだろう。


 しかし、更なる問題が発生した。

俺たちが運用している陸上戦艦の通信が傍受されている可能性だ。

ニムルドとガルムドは受信のみは機能していた。

これは陸上戦艦の構造物全体が受信アンテナとして機能していたからだろう。

陸上戦艦の通信は圧縮通信のため、デコード出来なければ内容はわからない。

幸い、北の帝国の陸上戦艦は使用者の管理者権限が低いらしくシステムがそこまで高度な機能を解放していない。

艦の運用も長年の解析で無理やりハードウェアを追加改造して動かしているという状態だった。

ちなみに、この改造は故障と判断され一部以外は取り払われていた。

伝声管はアナログでちょっと便利なので、俺の我儘で残してもらった。

話が逸れたが、つまり通信内容は把握出来なくても、通信が発せられている場所には向かって来れるということだ。

三角測量をすることでこの世界でも大まかな位置は掴めるだろう。

ここで、問題となるのは、新たな発信源が発生したら、北の帝国はそこに向かって陸上戦艦を派遣し調査しに来るということだ。

第13ドックの側ならまだしも、ズイオウ租借地で発信したのは拙かった。


 俺の推測だが、魔導機関が高エネルギーを発した場合も同様に観測されていると思う。

これはニムルドが魔の森へと調査に来た原因だろうと思う。

迂闊だったが、ルナワルドの重力制御機関始動も観測されているはず。

つまり既に調査目的の北の帝国の陸上戦艦が、ズイオウ租借地に向かっていると見ていいだろう。

防衛のために動いたことが、敵を呼び込むことになっていた。

今後も陸上戦艦を使い続けるなら、北の帝国と敵対するのは宿命なのだろう。

まあ、相手の陸上戦艦を既に2隻奪っている時点で、既に敵対関係なんだけどね。

それにうちの国民は北の帝国に身内を殺され国土を奪われた被害者ばかり。

敵対する未来しか残ってないな。


 そんな理由から、ズイオウ租借地への帰還は急ぐことになった。

帰り道に寄るつもりだったリーンワース王国王都はスルー。

クラリスはズイオウ租借地に帰ってから転移で迎えに行くことになった。

まあ、クラリスは妊娠しているので、陸上戦艦での旅も問題だったんだけどね。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



SIDE:ガイアベザル帝国 調査兵団


 ガイアベザル帝国では、遺跡調査により旧ガイア帝国の遺産を手に入れるのは、国家として最優先で取り組むべき事業だった。

調査兵団は遺跡調査に特化した兵団で、陸上戦艦の派遣から武力行使まで帝政から独立した権限を有していた。

所謂皇帝直轄部隊であった。


「遺跡の活動が活性化しております。

全てリーンワース王国国内とその近隣の遺跡です」


 調査兵団を指揮する団長と呼ばれる男に学者然とした男が報告をする。

団長の名はイオリ、身長2mの筋骨隆々の武人然とした黒髪黒目の大男だった。

その地位は軍の将軍に匹敵するものだった。

イオリ(団長)は、身動ぎもせず、目線だけで先の報告を促す。


「アギト殿下が行方不明になったリーンワース王国北部の魔力放出観測が一つ目。

南方で継続的に発信された誘導信号と思われる魔導波が二つ目。

リーンワース王国中央北側にての単発的な魔導波が三つ目です。

これだけ多くの遺跡が同時期に活動するなど前代未聞です」


 学者はイオリ(団長)の様子を伺い、自分の言葉がイオリ(団長)に届いたことを確認し報告を続ける。


「アギト殿下はニムルドを無断使用し未知のルートを南下、リーンワース王国北部にて遺跡の守護者と交戦し、アギト殿下はニムルドと共に亡くなられたもようです。

この時の魔導反応は我らも観測いたしました。膨大な魔力が放出され魔力バーストかと推測しておりました」


 アギトが亡くなったという報告にイオリ(団長)が反応する。


「馬鹿息子が死んだか」


 その内容は不敬罪にあたるが、アギトは既に身勝手な行動で陸上戦艦を失った罪で廃嫡されていたのでお咎めなしだった。

そのことをイオリ(団長)は知る由も無かったのだが。

学者はその呟きに何も反応することが出来ず、スルーすることに決め込んだ。


「リーンワース王国北部の遺跡への調査も軍が主導し消失を確認したそうです。

ニムルドと相打ちということかと思われます」


「調査兵団からは調査に行っていないのだな?」


 イオリ(団長)の目が厳しいものになる。


「はい。その時には既にリーンワース王国とは外交戦を行っていたもようで、我々の調査申請はリーンワース王国により却下されております。

この件が調査兵団まで伝わるのに時間がかかったのは、軍のやつらが保身で隠蔽していたためのもようです。

初期の観測結果を隠し、新たにリグルドを失った後になりやっと話が伝わってまいりました」


 観測結果を隠したのはアギト皇子だったのだが。

その後の不始末を隠すために軍部が必死になっていたということだった。


「皇帝陛下はご存知だったのだな?」


「はい。この件を口実にリーンワース王国北部への侵攻をご裁可されたのは陛下でした」


 イオリ(団長)の顔が歪む。大国へ戦争を仕掛けたというのに調査兵団が蚊帳の外だったからだ。

その悪い空気を払拭するかのように学者が報告を続ける。


「軍が大敗した原因が報告されております。

一時リーンワース王国の要塞を占領下に置いた時に鹵獲したこの超兵器が原因のようです」


 学者が技術部から引っ張って来た極秘資料を机に広げる。

そこには超兵器の詳細とガイアベザル帝国で現在製造しう対抗兵器の図面が添付されていた。

イオリ(団長)はその対抗兵器に見覚えがあった。


「この前改装したガルムドに搭載した新型砲か。

それより高性能な超兵器をリーンワース王国が持っているのだな?」


 イオリ(団長)は何かに気付いた顔をする。

学者はイオリ(団長)に頷き報告を続ける。


「はい。この超兵器こそ、リーンワース王国北方遺跡で手に入れた遺物に違いありません」


 イオリ(団長)はその事実に驚愕するとともに軍部の失態に怒りを覚えるのだった。

学者が報告を続ける。


「そのガルムドですが、誘導信号の発信源を目指し、西方から迂回して南の蛮族の地へと向かいました」


「もっと早くリーンワース王国と開戦したと知っておれば、リーンワース王国の領土を通過させてやったのにな」


 イオリ(団長)が苛立たし気に呟く。

調査兵団は不可侵条約を守り山脈とリーンワース王国の領土を大きく迂回していたのだ。

ことごとく軍部に足を引っ張られていた。


「そのガルムドとの連絡が途絶えました」


「何?」


「ガルムドには連絡用の小型ワイバーンを乗せていました。

その定期連絡が届いておりません」


 イオリ(団長)はその事実に南の遺跡もリーンワース王国の手にあるものと確信した。


「ガルムドもやられたか」


「おそらく。現在、遺跡の誘導信号も観測されておりません。

遺跡の位置特定は絶望かと」


「となると、三つ目、リーンワース王国中央北側の遺跡がリーンワース王国の持つ遺跡の要だろうな」


「はい。おそらく奴らは魔導通信機を復活させたのかと。

三つ目の位置での通信文の発進により二つ目の遺跡が反応、誘導したものと思われます」


 イオリ(団長)は思案する。

要の遺跡を掌握すればリーンワース王国の戦力を低下させられるだろう。

その遺跡の遺物をガイアベザル帝国のために使えば戦争にも勝てるはずだ。

調査兵団には陸上戦艦が10隻配備されている。

これを一気に投入すれば、おそらく数が少ないだろう超兵器を圧倒出来るはず。

そのように頭を巡らせるとイオリ(団長)は決断した。


「リーンワース王国中央北側の遺跡を奪取する。

調査兵団全力出撃だ!」


 偶然が偶然を呼び、ズイオウ租借地への大規模攻勢が発令されてしまった。

小型ワイバーンによる通信がこの世界にあったこと、北の帝国には軍と調査兵団という二つの軍事組織があったことがクランドの予測を大きく外していた。

 遺跡の古さの表記が何百年、1000年、何十万年と統一されていませんでした。

その場その場で古さを誇張表現で表記していたため、エスカレートしていました。

詳しい年数を設定していなかったため、こんなことになってしまいました。

今後は何百年に統一することにし古い文章は修正しました。

正確な数字は今後の展開で出す予定です。

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