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080 第13ドック3

 ゴーレム――200番代と同型――に案内され迎えの車両に乗る。

俺は普通に乗り込んだのだが、皆が驚いているのでよくよく見ると、それは地球で言うバスだった。

座席の部分が全面窓になっていて外の景色を見やすいようにした、まさに観光バスだ。


「ああ、この世界ではバスどころか車が珍しいんだったか。

危なくないから、乗った乗った」


 ティアとニルは装甲車を知っているはずだけど、騎士たちは北の帝国の兵器としてしか知らないのか。

更に全員を運べるぐらい大型のバスなんて想像の範疇に無かったわけだ。

皆、警戒して慎重に乗り込んで来る。


「そこまでしなくても食われたりはしないぞ?

ああ、ここまで大型の車両は魔物か何かと同列に思われているのか!

ほらほら、大丈夫だから安心して乗れ」


 皆をやっと乗り込ませると、バスが走り出した。

ゴーレムが運転席に座っているが、それはポーズで運転は自動のようだ。

バスは工場街や倉庫街を抜け、その先には近代的な施設の中では場違いな貴族屋敷が建っていた。


『こちらの迎賓館にお泊り下さい』


「迎賓館だそうだ。ここに泊まることになる」


 ゴーレムのガイア帝国語を翻訳してやる。

良かった。まともな宿泊施設だ。

何百年経ったかわからないのに、今年建てられたかのように劣化が見られない。

これは『状態保存』の魔法でもかかっているのだろう。

ガイア帝国の遺跡は一部は朽ちてしまっているが、残されているものは新品のように状態が維持されている。

キルトタルなんかは艦体や魔導機関などは維持されていたが、搭載されていた魔導砲や装甲車などは『状態保存』が切れて朽ちるに任されていた。


 バスを降り、迎賓館の玄関に向かうと、俺の身長の倍はあるかと思われる大きな扉が左右に開いた。

中は巨大なホールで左右にずらりとメイド型ゴーレムが立って一斉にお辞儀をする。

今までのロボット然としたゴーレムではなく、完全に人型だ。

スタイルや髪型も様々で色や長さも変えており、同型が1台もいない個性を持たされたゴーレムだった。

なぜゴーレムだとわかったかというと、有名宇宙人(グレイ)のように目に白目がなく人工的な感じだからだ。

これは人と差をつけるために敢えてそうしているのかもしれない。

しかもメイド喫茶のようなミニスカートのコスプレ風メイド服を着ている。

まさかこんなところでミニスカメイド服に出会うとは思いもよらなかった。

やはりガイア帝国を創った勇者というのは日本人か。


 メイドゴーレムたちの並ぶ先には執事型の男性ゴーレムが黒い執事服を着て立っていた。

執事ゴーレムは俺たちを迎え入れると深々とお辞儀をする。


「お待ちしておりました。

キルトタルの電脳よりお話は伺っております。

管理者クランド様、何なりとお申し付けください」


 なんと執事ゴーレムは王国公用語を話した。

王国公用語が現在この世界の標準語に位置付けられているとはいえ、ガイア帝国の遺跡絡みは全てガイア帝国語で統一されていた。

神様から全ての言語を理解出来るスキルをもらった俺だからこそ話せたわけで、ガイアベザル帝国の連中でさえガイア帝国語は話していなかった。

キルトタルのシステムもガイア帝国語以外を使うことは無かった。

俺は他の同行者との手前、ありがたく王国公用語で話すことにした。


「ああ、よろしく頼む。

ところでルナワルドとガルムドの修理について打ち合わせをしたいのだが可能か?」


 ルナワルドは俺の独自改造部分があるからね。

そこを直されて(・・・・)しまうと困る。

ガルムドはガイアベザル帝国の改造部分をルナワルドに準じて直したい。


「かしこまりました。

クランド様は、私とともに執務室へ。

皆さまはメイドどもにお部屋へと案内させましょう」


 俺の要請に執事ゴーレムは深々と頭を下げ、てきぱきと指示を出し始める。


「それではクランド様、こちらへ」


 胸に抱いていたプチをニルに任せ、俺は執事ゴーレムの案内で、二階にある執務室に通された。

そこには陸上戦艦と同じシステムコンソール付きの執務机があった。

執事に促されて執務机の椅子に座る。

すると魔法により目の前に巨大スクリーンが展開した。

そこにはルナワルドの3D画像が描かれていた。

所々に赤い表示がある。

おそらく修理箇所のマーキングだろう。

俺は執事ゴーレムに説明を求めるため呼びかけようとし、名前を知らないことに気付いた。


「えーと、何と呼べばいいかな?」


「私に名前はありません。執事とお呼びください」


 それはそれで呼びにくいな。

じゃあ、名前を付けるか。


「それじゃ、セバスチャンね」


「身に余る光栄!」


 執事伝統の名前を与えただけなのにめちゃくちゃ喜ばれた。

まさか特別な名前だったりして?


「セバスチャン、修理状況を説明してくれ」


「はい。こちらはニムルド改めルナワルドの設計図面と現在の破損個所を照らし合わせた映像です。

この赤い部分が設計と異なり、破壊された箇所と推定されます」


 やはりそうか。

となると俺が改造した部分も破損と認識されているんだな。


「この舷側の装甲ハッチは舷側砲を出すために俺が開けた穴だ。

そのまま残してほしい。

開閉式なので強度に問題があれば改良してくれ」


「かしこまりました」


 セバスチャンはそう言うとスクリーンの該当箇所に触れる。

すると、赤の表示が黄色に変わり、注釈の文字が書き込まれていく。

それは俺が要請した内容をガイア帝国語に訳した指示書だった。

半透明のスクリーンをセバスチャンが向こう側から操作している。

これは地球でも実現していないなかなか面白い機能だ。


「この改良をガルムドにもしておいて欲しい。

ガルムドの方は舷側装甲が破壊されているので開閉式への改良になる」


「かしこまりました」


 すると巨大スクリーンがもう一枚表示され、ガルムドの3D画像が映された。

ガルムドの舷側開口部は赤のままで、注釈文だけが付け加えられた。

以外なことにガルムドの修理箇所はそんなに多くなかった。

これも重力加速砲でエネルギー伝送管をピンポイント射撃をしたおかげだろう。

もう他には指示するところはないな。


「こちらからの指示は以上だ。

修理はどのぐらいかかる?」


 俺は滞在期間のことを考えて、修理日数を聞いた。

あまり長いようなら転移で戻ることも選択肢にはあるからだ。


 セバスチャンが少し考えるような仕草をして答える。

ドックの電脳と情報交換でもしているのだろう。


「ルナワルドとガルムドの魔導砲塔は用意出来ていませんでした。

これの製造に3日ください。

搭載は1時間もあれば可能です。

その間に他の修理が完了するようにスケジュールを組みます」


 おお、ここでは新規に魔導砲塔が造れるんだな。

キルトタルの魔導砲塔を運搬するためにここに来たんだけど、それも新造だったわけだ。

交換用の在庫があるんだとばかり思っていたよ。

これは何基かもらっていって国の防衛兵器にしようかな。

それと、ここの防衛の重要性を再認識した。

ここを北の帝国に奪われたら世界が終わる。


「ここの防衛戦力の拡充は可能か?

それと出入口の穴にも隔壁を設置して欲しい」


 また情報交換でセバスチャンが考え込む。


「開口部への隔壁の設置を要請しました。

また防衛戦力の拡充を受諾しました。

開口部への魔導砲の設置、補充戦力として陸上戦艦の新造を要請しました」


 え? 陸上戦艦も新造出来るの?

このドックやばいわ。生きたガイア帝国技術の宝庫じゃないか。


「陸上艦の新造が出来るなら新設計の艦も造れるのか?」


「可能です」


 マジか!


「なら物資を運ぶ輸送艦なんて造れるか?

キルトタルの魔導砲塔を運べるぐらいの大きさで」


「可能です。設計をいたしますか?」


 先ほどまでガルムドが映っていたスクリーンに既存の輸送艦の設計図が何枚も表示される。

ああ、素人が新設計するより既存の設計図の方が優秀だわ。


「じゃあ、これにちょこっと改造を加えて……。

これで建造を頼む」


「かしこまりました」


 ここの施設はいったい何艦同時建造が可能なんだ?

いや、その能力をフルで使うつもりはないけど……。

ほら、そんなことをする目的って世界征服しかないからな。


「ちなみに、どのぐらいの期間で建造出来る?」


「輸送艦は50m級ですので1か月、戦闘艦は150m級の攻撃型ですので3か月といったところです」


 地球での船の建造スピードが良くわからないけど、これって早いんだよね?

あれ? これって俺が魔法で艦体を造ってしまえばもっと早くならないか?


「セバスチャン、ちょっといいかな?」



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



 俺はセバスチャンと共にドックの桟橋へとやって来た。

施設の端の方に建造ドックがあった。

俺は入り口の穴を掘った時に出た土などを材料に輸送艦の艦体を設計図通りに錬成してみた。


 目の前に土が盛り上がり、輸送艦の艦体の形を取り始める。

そして眩い光が発せられたと思ったら、そこには輸送艦の艦体があった。


「これで作業は捗るだろ?」


 セバスチャンはゴーレムでありながら一瞬驚愕の顔に固まったように思えた。


「はい。作業工程の50%が終了しました。

あとは魔導機関と重力制御機関、魔力ストレージ、魔導砲などなどのユニットを設置すれば完成です」


「魔導機関とかの実物ってある?」


「いいえ、それらはこれから製造いたします」


 残念。実物さえあれば俺の錬金術で錬成できるから、もっと期間を縮められたのに。

そうだ。ルナワルドには実物がある。

あれを元にすれば作り放題だ。


「ルナワルドとガルムドには、これ(輸送艦)と共通する機関はない?」


「艦の大きさにより魔導機関や魔力ストレージの大きさ出力自体が違います。

魔導砲も大きさ威力が異なります。

共用しているのは、重力制御機関でしょうか。

これは大きさに対して基数で対応しています」


 ああ、重力制御機関なら造ったぞ。

あれは特殊素材が必要だな。

ただし、あれはほとんど原型を留めていたり、半分残っていたからなんとかなった。

ゼロから作るのは俺でも時間がかかりすぎるだろうな。


「となると俺が手を出せるのは今のところここまでか」


「いえ、これだけでも工期短縮になり助かります」


 そう? なら戦闘艦の方も造っておこうか?


「じゃあ、こっちに戦闘艦の艦体も造っておこう。

ちょっと材料を集めてくれないか?」


 セバスチャンがゴーレムに指示して装甲の材料となる土を搬入させる。

さらに俺の目の前の空間に魔法でスクリーンを出し、そこに150m級戦闘艦の設計図を表示する。


「よし、『錬成』」


 眩い光が消え、目の前に150m級の戦闘艦の艦体が出現していた。


「じゃあ、後はよろしく」


 作業用ゴーレムに後は任せて、俺とセバスチャンは迎賓館に戻った。

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