表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/141

071 陸上戦艦

 俺の寝室は国民の皆が城郭と呼んでいる外城――塀なんだが――に囲まれた内城――農園屋敷なんだが――に立つ塔の最上階にある。

城郭と言っても元々は農園を取り囲む塀が、たまたま陸上戦艦の甲板の外周に添って巡らされていただけで、陸上戦艦が動きこの地に着陸したことで塀が外城に見えているだけなのだが……。

その内城に立つ塔は陸上戦艦の司令塔であり、俺の部屋はその天辺にあたり、初めは地下に埋まった一室でしかなかった。

魔の森に放り出された俺が魔物の襲撃と雨露を凌ぐために初めて手に入れた安らぎの場所だった。

その防御力の高さから今でもここを寝室として使っているのだが、困ったことが一つある。


 システムコンソールがうるさい。

北の帝国の陸上戦艦――ニムルドというらしい――を撃破する時に、急遽長年整備もされていなかった魔導砲塔を使用したため、主兵装である魔導砲が壊れ使用不能となっていた。

それをドックに入って直せというメッセージが延々と繰り返されていたのだ。

このメッセージは、この艦の管理者になぜかなった俺が命令すると一旦は止まった。

しかし、最近になってまたシステムコンソールがメッセージを発しはじめたのだ。


『魔導通信に反応がありました。第13ドックが使用可能。受け入れ準備完了。距離南西2190km。直ちに向かってください』

『魔導通信に反応がありました。第13ドックが使用可能。受け入れ準備完了。距離南西2190km。直ちに向かってください』

『魔導通信に反応がありました。第13ドックが使用可能。受け入れ準備完了。距離南西2190km。直ちに向かってください』

『魔導通信に反応がありました。第13ドックが使用可能。受け入れ準備完了。距離南西2190km。直ちに向かってください』

『魔導通信に反応がありました。第13ドックが使用可能。受け入れ準備完了。距離南西2190km。直ちに向かってください』


「ええい、うるさい!」


 魔導通信?

そういやゴーレムが塔の最上部にアンテナだかレーダーだかの設備を取り付けていたな。

それで通信を試みて、ドックの一つの健在を確認したってことか。

南西2190kmなんていったらリーンワース王国の領土を越えた遥か先じゃないか。

その先に何があるかなんて知識は異世界転生して来た俺にはないぞ。

それにサラーナの他にもアイリーンとシャーロにクラリスと懐妊して妊婦が4人もいるんだぞ。

今はここから動けるわけないじゃないか。


「今は動けない。後にしてくれ」


『北方546kmに敵性艦多数を確認。脅威度2000。主兵装の修理が必要です!』


 北方? ああ、それは北の帝国の陸上戦艦だな。

脅威度2000がどのぐらいの脅威かわからないけど、この艦のシステムは脅威に対抗するには魔導砲の修理が必要だと判断しているわけね。

さてどうする?

サラーナ達を置いて修理に向かう?

却下だ。北の帝国の脅威は侮れない。

ズイオウ租借地(ここ)が攻められたら、この陸上戦艦の防御力が無ければひとたまりもない。

それにこれからもリーンワース王国のそこかしこから国民達が奴隷解放されるべく連れて来られ引き渡される。

奴隷解放の魔法や酷く傷ついた者たちへの回復魔法は俺がかけるしかない。

人数的に魔道具の能力ではどうにもならないからだ。

燃料石の魔力だって俺が補充しなければならないんだからね。

つまり俺もここを離れられない。


 ん、待てよ。

ここで修理するわけにはいかないのか?


「システムコンソール、ここに部品を運んで修理すればいいんじゃないか?」


『第13ドックには魔導砲塔の製造手段はありますが、それを運ぶ手段がありません』


「つまり運ぶ手段があれば、ここでも修理出来るってことだな?」


『可能です』


 俺はあることを思いついていた。

もう1隻陸上戦艦があるじゃないかと。

俺のインベントリ内にニムルドの残骸が収納されている。

それを修理して魔導砲塔を輸送すればいいんじゃないか?


「ニムルドを修理して輸送艦として使う。それでどうだ?」


『ニムルドは魔導砲の直撃で重力制御機関が破壊されています。

ここでの修理は不可能です』


 確かに、基幹部品である重力制御機関、古代文明の遺物であるこれを何の知識の無い俺が修理しようなんて不可能だ。

だが、俺の召喚の能力を思い出してほしい。

実物を知れば(・・・・・・)召喚できる(・・・・・)

同様に錬金魔法の魔道具錬成も、実物を知れば錬成できる気がするのだ。

俺はスコップを錬成したことがある。

その時の感覚はその場にある材料を使って目的の物を創造するという感じだった。

この艦には生きている重力制御機関が存在している。

それを目にする――おそらく魔法的な探査が働いている――ことで錬成することが可能なのではないか?


 俺は召喚や錬成に関するある法則に気付いてしまったのだ。

この世界の家畜であるマチュラとホルホル牛を知らない俺は、この家畜を召喚出来なかった。

しかし現物を入手し知ることで召喚出来てしまった。

サンプルとした個体のコピーではなく外観が違う同種個体をだ。

これはどこかで生きていた家畜を魔法で誘拐して来たのだろうか?

世界のどこかで家畜が消え、この場に移動して来たのだろうか?

感覚的なことだが、違うと思うのだ。

俺は解剖学など知らないし、この世界独特の家畜の内部構造がどうなっているかなんて知る由もない。

しかし、錬成と同様にこの場で家畜を創造しているのではないかと思う。

生命は召喚、物は錬成というだけの違いな気がするのだ。


 地球の家畜も漠然とした記憶だけで召喚出来てしまった。

地球から誘拐してこの地に連れて来た?

いや、神様が例外的な力で行っている異世界転移(転生)を、たかだか人間の俺が簡単に出来るはずないじゃないか。

ジャージー牛なんて現物に接した機会など無く、映像知識しかなく、産地がどこなのかもわからない。

それを探して異世界に連れて来る? そんなチート能力は俺にはないだろう。

(作者注:生物を創造するというのも大概なのだが、その矛盾にクランドは気付いていません)

もしかすると牛乳が美味しいこんな色形の牛という曖昧なイメージで魔法が生物を創造しているのかもしれない。

これは錬金術の錬成と同じなんだと思う。

なので、材料さえあれば召喚と同様に望みの機械も錬成出来てしまうはずだ。

(作者注:イメージが魔法を強化する世界で、この思い込みが魔法にとんでもない力を与えます)


 つまり壊れたものしか実物が無い魔導砲塔は錬成出来ないが、正常に動作する実物がある重力制御機関は錬成出来るということだ。


「俺に任せろ。動く実物があれば、錬成で何でも創造できるはずだ!」


 こうしてニムルド復活計画が始動したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ