007 天から降りし者
プチが示したのは新たに造成した牧場の一角だった。
ここは農地と違って木の根を除いて牧草を『促成栽培』しただけなので埋蔵物があっても不思議ではないのだ。
畑のように柔らかい土地では家畜が足を痛める可能性があるので耕さなかったのだ。
農地には『農地開墾』をかけているので何か固いものが埋まっていても、ある程度の深さまではそのまま耕してしまい痕跡が残らなかっただろう。
農地は何か埋まっていたものがあっても一緒に耕してしまった可能性があるから、牧場に埋まっていたのは不幸中の幸いか。
ここは『掘削』の土魔法で掘ればいいだろうか?
いや、埋蔵物を守るためにはそれなりの配慮が必要だろう。
俺は右腕を水平に上げると呪文を叫んだ。
『錬金魔法! 魔道具錬成、スコップ!』
すると右手にスコップが錬成され出現した。
ただやってみたかっただけなんだ。
まさか本当に出て来るなんて思わなかったんだ。
俺は肉体年齢15歳に引きずられて中二病っぽいことをしてしまったのを恥じた。
誰も見てなくてよかったよ。
スコップはヘモ……いや魔物の一部から精製された鉄と、牧場を造るときに伐採した木を加工して作られていた。
俺はスコップをおもむろに地面に刺すと土を掘りはじめた。
「サク」「ドバッ!」「サク」「ドバッ!」
ひと掬いの量が半端じゃなかった。
重さも軽減されている。
『強化』と『重量軽減』が付与されているのか。
「これってアーティファクト級魔道具だろ! 何てものを作ってるんだ!」
俺のスキルだから俺なんだけどね。
作業が捗るからいいけどね。
しばらく掘ると金属のボディが現れた。
ロボット。いや、この世界ではゴーレムかな?
それはまるで高所から落下したような感じで壊れたゴーレムだった。
「ああ、見たことあるぞ。天空の……」
それ以上は危険だった。
あれとは形が根本的に違うが、状況は一緒だと思われる。
俺はこのまま埋め戻そうかと思ったのだが、労働力不足で困っていることを思い出した。
さすがプチだ。ご都合主義的にここ掘れわんわんしてくれる。
このユニークスキルは神の祝福が半端ないな。
プチが褒めて褒めてをしているのでモフる。
周囲に広げて掘るとほぼ1体分の破損したゴーレムが埋まっていた。
ボディにレリーフ文字。
『ガイア帝国第482連隊783号』
はい。ゴリゴリの戦闘マシーンでした。
あれみたいに暴れ始めたら最悪なので、やっぱりこのまま埋めておいた方が良いかと思う。
が、よくよく考えたら俺はここの地下に埋まっているガイア帝国の遺跡の管理者だ。
このゴーレムも遺跡の備品だろう。
つまりこのゴーレムも俺の管理下にある可能性が高い。
動力が機能していないようなので、直ぐに危害を加えられることも無いだろう。
俺はこのゴーレムを修理して労働力に変えることを決意した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
ゴーレムをインベントリに収納し遺跡に作った塒に運び込む。
ここにはシステムコンソールがあるので修理に関するアドバイスがもらえると思ったからだ。
外でインベントリに土を収納し、コンソールへ向かう。
システムコンソールのある床を土魔法で水平に埋めて足場を作り、その上に作業台を盛り上げる。
傾いていると作業し辛いからね。
土を持ってきたのは無から土を作るのはMPを滅茶苦茶食うからだ。
材料があれば少ないMPで事が足りる。
一度インベントリに収納したゴーレムを作業台に出す。
収納の極が仕事をして自動解体済みだ。
外殻が外されて中身が見えている。
魔法的な中身のゴーレムではなく機械式なゴーレムだった。
おそらく動力が魔法式なのだろう。
見た目の破損は脚部にあった。
外殻が拉げ、中の骨格となる構造材が折れている。
これは錬金術で簡単に直せた。
問題は魔力機関と制御装置が刻み込まれた魔宝石だろう。
長年土に埋まっていたことで機能を停止している。
「システムコンソール、このゴーレムは修理可能か?」
俺の問いかけにシステムコンソールからチューブが伸びて来た。
チューブの先端にはカメラが搭載されていてゴーレムを見ている。
そのカメラの下からレーザーのような緑色の光が出るとゴーレムをスキャンし始めた。
しばらくスキャンするとシステム音声が響いた。
『修理可能です』
「どうすればいい?」
『魔力機関の燃料石がエネルギー切れです。
それを交換すれば動くでしょう』
修理できたとしても勝手に動かれても困るな。
「こいつは俺の命令をきくか?」
『無論です。
ゴーレム482783号は管理者クランドの管理下にあります』
「こいつの機能、いや性能は?」
『ラスコー級戦車と同等の性能を持ちます』
そのラスコー級戦車というのがわからないんだけど……。
まあ戦車と同等の性能ということは戦闘ゴーレムなんだろうな。
だが、その戦闘力を何らかのきっかけで発揮されても困る。
「戦闘機能にロックをかけられるか?』
『管理者クランド様のお望みのままに』
「そうか。なら修理しよう。燃料石は手に入るか?」
『本艦の備品倉庫にあります』
何百年前の備品だよ。劣化してたらどうするんだ。
「劣化していないのか?」
『時間停止倉庫のため問題ありません。
当該時間停止倉庫の機能不全は確認されていません』
「わかった取りに行こう。案内は可能か?」
『ゴーレムを呼び、案内させましょう』
その返答に俺は驚いて声をあげる。
動くゴーレムが管理下にあるなら、わざわざ修理する必要がないからだ。
「ちょっと待て。動いているゴーレムがいるのか?」
『……緊急事態です。傾斜によりゴーレムが動けません』
そりゃそうだろう。俺でも難儀する傾斜だからな。
だが、それを回収すれば労働力に出来るぞ。
「傾斜は直らないんだろ?」
『本艦の魔導機関の調整をお願いします。
魔導機関が正常作動すれば艦体を起こせます。
これは管理者にしか不可能なのです』
本館とか館体とか言い方が大げさだな。
でも魔導機関をどうにかすれば水平になるのか。
これはそのうち直してやるとするか。
「燃料石は案内図があれば俺が取りに行く。
その際に土魔法で階段を設置するが良いな?」
『構いません。
しかし、早急に魔導機関の調整をお願いします』
「了解」
するとシステムコンソールのスリットから魔道具が出て来た。
案内図のプリントアウトではなく、まさかのモバイル端末が俺に宛てがわれた。
その画面に案内図が出る。
この世界は剣と魔法の中世レベルの文明世界だったはずだ。
ガイア帝国の遺産。やばい匂いしかしない。
あのゴーレムも銃すら無い世界でレーザーでも撃ち出しそうだ。




