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058 ルドヴェガース防衛戦

 ルドヴェガース要塞都市に到着してから、俺は延々と武器を作っていた。

MPが続く限り、食事とトイレと寝る時間以外は作り続けている印象だ。

おかしい。この2日間、ずっと簡易型蒸気砲を作っていたはずなのに、まだ要塞都市全体への蒸気砲配備が終わらないのか?

そこへタイミング良く運搬任務の兵士がやって来た。

その兵士が先ほど作った蒸気砲を持ち出そうとしているので捕まえて問いただす。


「おい、それは何処に配備する?」


「ハッ! 王都と聞いております」


 その兵士の言葉に俺は目が点になった。

なんてこった。要塞都市(ここ)用ではなく王都用かよ。

やられた。俺が作り続けるのをいいことに他所の分まで作らされていたのか。

確かに爆裂弾でなければ、王国でも同じ規格の大きさの弾ぐらいは作れるだろうからな。

俺が弾を供給しなくても流用可能ってことか。


「王都用は割増料金って言っといてね」


 ちくしょう。後の弾は非殺傷弾ばかり作ってやろう。

俺の話を聞いたティアが司令部に走る。

王都用は割増料金だと通告に行ったようだ。出来る嫁で有難い。

こうしておかないと王国側の要求に遠慮が無くなるからね。

それと、その武器がいつこちらに向くかわからないし……。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



 カン、カン、カン、カン!


 翌日の早朝、ガイアベザル帝国の軍がルドヴェガースにやって来ると言われていたまさに当日。

俺は警鐘の音で目を覚ました。


「陸上戦艦が来たぞ!」


 慌てて飛び起き、プチと護衛10人と共に城壁へと上がる。

要塞都市の北側城壁の遥か向こうにそれは姿を現した。

陸上戦艦は艦首を前に接近して来る。

その遥か下の手前側には陸戦部隊が疎らな隊列で接近して来ている。

そのほとんどが侵略された国の国民を強制徴兵した戦争奴隷だろう。

戦争奴隷たちは満足な防具も付けさせてもらえず、手には錆びた剣やこん棒や弓矢、下手すると素手に石を持っているだけという有様だった。

後ろから帝国兵と思われる豪華な装備を付けた部隊が戦争奴隷たちを追い立てている。

あれが督戦隊だろう。


「獣人族に人族、あの褐色肌はキルト族かもしれないな……」


「主君、間違いありません。あの服の模様はキルトの民族衣装です……」


 俺の横へとやって来たターニャが悲痛な表情で告げる。


「大丈夫だ。彼らには非殺傷弾を使うように言ってある。

自らの命に係わる状況にならない限り殺さないようにというのが武器提供の条件だからな」


「はい、主君。ありがとうございます」


 ターニャを始めとするキルト族の護衛もルナトークの護衛も俺の言葉に安堵の表情を浮かべる。

なるべく元国民を助けて連れて帰りたいからね。

特にキルト族は男手が全くいない。

このままではキルトの血は混血のみになってしまう。

不幸中の幸いで、目の前にはキルト族の男たちがいる。

是非とも連れて帰りたい。



◇  ◇  ◇  ◆  ◇



 中世レベルの戦争は俺が思っていたものと違って、長距離砲による打ち合いというものではなかった。

まず弓が届く距離での歩兵戦が始まった。

帝国軍からは戦闘奴隷によって弓矢が城壁の上にいる兵士に向かって打ち込まれる。

王国からの応戦は簡易型蒸気砲だ。非殺傷弾のグミ弾――ゴム弾というと語弊があるためそう呼ぶことにした――を撃つ。

バタバタと倒れる戦闘奴隷たち。骨折や打撲で行動不能になっているのだ。

この怪我は後で回復魔法をかけてあげればいい。

その確率は限りなく低いと思うけど不幸にも致命傷になってしまった人はごめんなさい。

初戦は圧倒的有利で王国軍側の勝利だった。


 そうこうしているうちに接近した陸上戦艦が舷側を城壁に向け左旋回を始めた。

火薬砲撃ち下ろしの射程内に入ったのだろう。

北の要塞での戦訓で、蒸気砲が上空の陸上戦艦には無力だと思っているがための戦術だ。


 一方王国軍は掩体壕からゴーレム式蒸気砲を引き出し爆裂弾で陸上戦艦を狙う。

今度は俺の改造で射程を減らした放物線軌道で撃てる。


「くらえ! 発射!」


 ブラハード将軍の掛け声で一斉にゴーレム式蒸気砲が発射される。

発射された爆裂弾が放物線を描き、陸上戦艦の砲門に命中、爆発する。

ゴーレムの魔導回路が弾道計算をし最適な放物線軌道で砲門を狙ったのだ。

慌てて後退を始める陸上戦艦。

しかし、その砲門位置を自動追尾して爆裂弾を撃ち込むゴーレム式蒸気砲。

爆裂弾の爆発が火薬に引火し炎を上げる。

圧倒的命中率により、可燃物が大火災を起こし陸上戦艦はほとんどの火薬砲を失った。

攻撃力が無くなった陸上戦艦が炎を上げながら撤退を開始した。

と同時に戦闘奴隷が突撃を開始する。

後ろから督戦隊が戦闘奴隷を煽っている。


雷撃杖(ライフル)を使え。督戦隊がいなければ戦闘は終わる」


 俺はブラハード将軍に要請する。

雷撃杖を構えた兵士が督戦隊に雷魔法を発射する。


 ズダーーーーン!


 雷が直撃し督戦隊がバタバタ倒れていく。


「ハハハ、凄い威力だ!」


 督戦隊が面白いように倒れていくので、王国軍の兵士が調子に乗って次から次へと雷撃杖を撃つ。

雷撃杖は1発で属性石の魔力が切れるので、傍らの兵士が撃ち終わった雷撃杖を受け取り、新しい雷撃杖を渡している。

雷撃杖を構えたその兵士は狙撃能力が高いようで、狙い違わず督戦隊を葬っていく。

最早、督戦隊は見当たらないほどの命中率だった。


「ん? おい次!」


 その兵士が次の雷撃杖を要求した。

俺達は督戦隊はもう居ないと認識していたので、その声に思わず兵士を見る。

その刹那、雷撃杖が発射された。

その先には、助けを求めて城壁に接近して来る戦闘奴隷たちがいた。


「次!」


 兵士が次の雷撃杖を要求した。

その時俺の横を影が横切った。


 ガキン!


 雷撃杖を切り飛ばす剣戟の音が響く。

その影はターニャだった。

ターニャはキルト族の戦闘奴隷が殺されるのを見て、兵士の射撃を止めに入ったのだった。


「戦闘奴隷はもう戦わぬ。主君からの武器供与の条件を知らぬのか!」


 ターニャの怒声が響く。

ターニャの顔が憤怒で赤く染まっている。

そりゃそうだ。戦えぬ者たちを甚振るように強力な武器が使用されたのだ。


「はあ? 劣等種族が何を言う?」


 ターニャの肌の色でキルト族とわかったのか、兵士が見下すように吐き捨てた。

ああ、こいつ差別主義者だったのか。俺はこの兵士の行動原理がわかった。


「ユージェフ! 何をやっている!」


 ブラハード将軍が止めに入るが、ユージェフと呼ばれた兵士が新しい霊撃杖を手にとると俺達に向かって構えた。

それを見たブラハード将軍が剣を抜く。おそらくユージェフを斬るつもりだったのだろう。

だが、一歩遅く、ターニャに――その後ろには俺達がいる――向けて構えた雷撃杖の引き金が引かれてしまう。


 ズダーーーン!


 耳をつんざく轟音が城壁の上に炸裂した。

ユージェフはこともあろうに同盟国である俺達に向け雷撃杖を発射したのだ。


 一歩遅れたブラハード将軍がユージェフを斬り捨てる。

轟音と閃光が薄れた後には……。

何の被害もない俺達が立っていた。

いや、俺って魔導の極があるから、こんな時だからこそ的確な魔法が頭に浮かんで使っただけだ。

『多重防御魔法』、物理、魔法、あらゆる攻撃から身を守る防御障壁が幾枚も重なった広範囲防御魔法が発動したのだった。


「おい、死ぬところだったぞ! これじゃ王国に雷撃杖は渡せないな」


「申し訳ありません!」


 ブラハード将軍は二度めのスライディング土下座をするはめになった。


「おお!」


 その時、俺達のいざこざなど知らなかったであろう王国軍の兵士たちから歓声が上がった。

撤退していく陸上戦艦が高度を落とし墜落したのだ。


「やったぞ! 帝国の陸上戦艦を落としたぞ!」


 勝利に湧く王国軍の兵士たち。

その横で困った顔で顔を見合わせる俺達。


「さて、戦闘も終わったようなので、この落とし前をどうするか決めましょうか」


 俺の言葉に青い顔をするブラハード将軍。

とその時、眩い光と着弾音と共に地震のように城壁が揺れた。

自動で展開された『多重防御魔法』で俺達に被害はない。


「何があった!」


 眩い光とイオン臭、どうやら城壁に光線砲――おそらくビーム砲――が直撃したようだ。

見ると、ここから東にある城門付近の城壁に大穴が開いている。


 そのビーム砲を発射したのは、あの遺跡でみつけたラスコー級戦車と同型だった。

落ちた陸上戦艦から出撃して来たのだろう。たしかあの主砲はビーム砲だったはず。

ただし、整備もしていないのにビーム砲を撃った弊害か、砲身が飴のように溶けて歪んでいる。


「ラスコー級戦車じゃないか! だが、あの様子だともうビーム砲は撃てないな」


「主君、あの戦車という車の進む先には倒れた同胞達が……」


 やばいな。折角助けた命が轢き殺されそうになっている。


『助ける!』


 プチが聖獣モードに変化して飛び出して行ってしまう。

倒れている戦闘奴隷を咥えては安全な場所まで連れていく。

だが、プチだけではどうにもならない。


「雷撃杖だ!」


 兵士が雷撃杖でラスコー級戦車を狙う。

だが、車体に浮かんだ魔法陣が障壁を発生させ雷撃魔法を簡単に弾いてしまう。


 プチが一生懸命戦闘奴隷たちを侵攻コースから助けるが、次第に余裕がなくなっていく。


「プチ、もう無理だ戻れ!」


 俺はプチが轢かれやしないか冷や冷やしながらも見守るしかなかった。

戦車の前には女性が倒れている。このままでは轢かれてしまう。

その女性を助けようとプチが飛び込む。

間に合わない!


「プチーーーーーーーーーーー!」


 俺は咄嗟に魔銃を抜くとラスコー級戦車に向けて発射した。

何としてでもプチを助けたい。その一心だけで魔銃を撃っていた。

その結果……。


 ラスコー級戦車が宙に舞った。

俺が放った魔銃の魔法弾は、ラスコー級戦車の右斜め前に直撃し装甲を打ち抜いて、その勢いのまま戦車を跳ね上げていた。


「あれ? なんだこれ?」


(作者注:プチを助けたいという強いイメージがプチを助け得る強い魔法を発動させただけです)


 俺は魔銃の威力に呆然とした。

まあ、プチが助かったから良かったんだけどね。

こうして第一次ルドヴェガース防衛戦は王国軍の大勝利で終わった。

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