表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/141

005 ファストライフじゃね?

 プチと一緒に階段を上がると地上に設置した建物が消えていた。

穴の中からそっと伺うと、雨はやんでいて、夜が明けていっているのか徐々にうっすらと明るくなっていく。

魔物を警戒しつつ周囲を見廻すと、出入口の建物が少し離れた場所に(ひしゃ)げて落ちていた。

おそらく魔物に体当たりを受けて吹っ飛んだのだろう。

魔物はそのまま森に消えたようで、魔物が通った痕跡として木がなぎ倒されて道になっていた。

今後のために畑予定地を覆う形で魔物除けの塀を作る必要がありそうだ。


「お家こわした。狩ってくる!」


 プチが森へすっ飛んでいく。


「待つんだプチ!」


 俺がそう止めるより速くプチは走って行ってしまった。

速すぎてもう見えなくなっていた。これじゃ俺の制止も聞こえてないな。

待ての出来るプチが俺を指示を無視するわけがないからね。

チワワの小さい体のまま行ったので俺はプチが心配で追いかけようとした。

すると、魔物の断末魔の咆哮が聞こえて来て直ぐに静かになった。


「やっつけた」


 プチがそのまま飛んで帰って来た。

小さな体で巨大な魔物の尻尾を咥えてを引きずって来たらしい。

魔物は鼻の角が二股に分かれた体長5mほどの二本角のサイだった。

これをプチが倒したのか。しかもチワワの小さな体のままで……。

倒せたから良かったが、もしものことがあったらと思うと俺は胸が張り裂けそうだった。

ここはご主人としてプチを叱らないとならない。


「プチ、魔物は危険だからひとりで倒しに行っちゃだめだ。

俺は心配でしょうがなかったぞ。今後は必ず俺と一緒に行動するんだ。

戦うか逃げるかは俺の指示に従うこと。

そうすれば狩った獲物もインベントリで楽に運べるぞ。

今度からはこの言いつけを守るんだぞ」


「わかった。ごめんなさい」


 俺はプチの目を見つめながら懇々と訴えた。

プチは俺の目を真剣に見つめながら納得してくれたようだ。


「うん。えらいぞ」


 モフモフモフモフ。



 サイの魔物はインベントリに収納し解体した。

皮が防具の素材になり、肉も食えないことはないようだ。


 それにしても、このサイ並みの大きさの魔物が突進してくるのなら、塀には要塞都市並みの強度が必要だろうか。

いや空堀と併用すれば勢いが削げるから、そんなに大掛かりでなくても良いか……。

今日の俺の仕事は畑を囲う空堀と塀造りだな。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



 森の木を切り倒し、空堀を土魔法で掘り、その土で塀を盛り上げ強化魔法で固める。

この工程を草原の周りを囲うように続けたところ昼前には全て終わってしまった。

出入口は北と南の二か所。丁度サイの魔物が森の木をなぎ倒して道のようになった場所に作った。

一応道と呼べるものがそこにしかなかったからね。

ついでに(ねぐら)の地上部分は再建した。

これで安全に雨風をしのぐことが出来るだろう。



 午後の作業は畑の開墾。

スローライフの第一歩、食料確保に必須だからね。

これも生活魔法の『農地開墾』で一発作業だ。

範囲を指定して魔法を唱えるだけの簡単な作業だった。

MPもそんなに使っていない。

そもそも作業中にMPが結構な速度で回復している。

魔法を使う→ステータスを見る→MPがもうほとんど回復しているという状態なのだ。

うん。生産チートと言って過言じゃないな。


 ただし問題は、畑に植える種や苗が無いということ。

どうしたものかと考えていると、頭に召喚魔法でいけるという解決策が浮かんで来た。

これは何かをしたい時に、何の魔法を使えばいいのか自動的に思いつくという魔導の極による能力だ。


『召喚! 種イモ!』


 俺は試しにジャガイモの種イモをイメージして召喚魔法を使ってみた。

すると目の前に大量の種イモが出現した。

これを一つ一つ植えていく。スローライフっぽい。


「早く育てよ」


 何気ない俺の一言が魔導の極を刺激した。

俺の頭に水魔法と時間魔法による促成栽培魔法のイメージが浮かんで来た。

水魔法が養分を含む水を生成し、時間魔法が成長速度を促進する。


『促成栽培!』


 あれよあれよという間にジャガイモが芽を出し葉を広げ、明日には収穫かという状態になってしまった。

これで明日には炭水化物が食卓に上るだろう。

他にもトマト、ニンジン、キャベツ、大根などの野菜の種を召喚して蒔き、『促成栽培』をかける。

トマトなんかの果実はもう収穫できるほど育っている。

トウモロコシやサトウキビ、豆類、果物なんかも種を蒔く。

米や麦も栽培してみる。米は水田でなくてもそこそこ育つのだ。

収穫した物はインベントリに収納すれば時間停止でいつまでも新鮮に保存できる。


 こんなのでいいのだろうか?

スローライフ? いや、これってファストライフじゃね?

何かやらかした感が酷い。


 とにかく(しょく)(じゅう)はなんとかなった。

次は()か。糸を吐く生物の糸か綿花を探さないと。

そういや綿花の種は召喚できるんだ。

でも綿花は水を大量に使うから他の植物を駆逐しかねないんだよな。

栽培より採取を目指そう。それか食料とは別枠の畑を作ろう。

羊の毛でもいいけど、羊って手に入るのか? あ、召喚できたよ。

やっぱり町を探すべきか。ガイア金貨は使えないが、宝石や魔物の素材を売れば現金は入手できるはずだ。


 何か忘れている気がするけど、それは後でいいや。

あ、調味料を忘れていた。塩も探さないと。海か岩塩を探そう。




システム音声『魔導機関の調整をお願いします。魔導機関の~』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ