049 迫る追手
「主様、もう我慢できません!」
急にサラーナが爆発した。
どうやら妊娠したサラーナを俺が大事にしすぎてストレスが溜まったようだ。
「皆と買い物行ったり、宝石採りや魚釣りして楽しんで、わらわだけ仲間外れじゃないか!」
「それはお腹の子に触るから……」
「転移で連れて行ってくれれば一瞬じゃない!」
「でも転移は危険かもしれないから……」
「かもしれないでしょ? 魔導の極さんに聞いてみなさいよ!」
あ、そうか。どうなの魔導の極さん?
俺の頭の中に問題ないという安心感が生まれた。
「ごめんなさい。大丈夫だそうです。
それと、『母子安泰』と『安産』の魔法があるそうです」
ほら見とことかと得意げなサラーナ。
そういえば昔は生まれる寸前まで働いていたというな。
今がどうなのかは知らないけど、過保護にしすぎたのかもしれない。
そのせいでストレスを溜めた方が母子に良くない気がする。
「わかればいいのよ。私とナランだけ自分で採った宝石がなかったのは寂しかったんだからね?」
ああ、それは俺が悪いわ。
「確かにそうだね。安心して連れていけるなら仲間外れは良くなかったね」
俺は心から反省した。
サラーナは、今すぐ連れていけとゴネている。
まあ『転移』で一瞬だからいいか。
俺は『母子安泰』の魔法をサラーナにかけ、サラーナ、ナランと護衛のプチ、ターニャを加えて宝石の採れる河原へと『転移』した。
ナランが喜んでいる。サラーナも楽しそうだ。
ナランにはサラーナのお守り役という負担を強いてしまった。
いつも一緒に留守番させてしまい、黙っていたけど同じようにストレスを溜めていたんだろうな。
これは良いストレス発散の機会が作れたのかもしれない。
「わん!(誰かいるよ!)」
プチが人の気配に気づいた。
まずい。見られたかもしれない。
「サラーナ、ナラン、誰かいるみたいだ。帰るよ」
残念ながら隠匿生活なのだ。素早くこの場を転移で去ることになった。
だが、サラーナもナランも良い宝石を拾えたようで、目をキラキラさせて加工をお願いして来た。
作りましょう。いや、作らせてください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
SIDE:リーンワース王国情報局将軍
「尻尾を掴んだと?」
「はっ。クランドのギルド預金が1億G減ったその日に1億G増えた冒険者がいました。
その冒険者が現れたのが、パリテの街です。
冒険者ギルドでカード情報の更新を行い、その時にクランドから1億Gが振り込まれたという履歴を得ていました」
情報局将軍はその情報に大いに喜んだ。
その冒険者はクランドの関係者であろう。
「その者の素性は?」
「ギルド登録名:クロードというようです。
冒険者としての登録は王都ギルドで、活動実績は平凡で主に田舎での討伐任務でした。
ギルドで現金を降ろし仲間に金を渡していたそうです」
田舎の討伐任務で1億Gも手に入れるなど有り得ない。
やはりクランドの金で間違いない。
「1億Gを稼げるような冒険者ではないな。
となると現金の引き出し役というところか。
まさかと思うが、その者がクランド自身ということはないだろうな?」
小さな可能性だが、一応将軍は確かめておく。
「複数の目撃者の話では茶髪茶目だったそうなので、別人と思っていいでしょう」
「では、その男を追えばクランドに辿り着く可能性があるのだな?」
やっと掴んだ尻尾だ。そこから本体に辿り着いてやろう。
「いえ、残念ながら、クロードが現れたのはそれ一度きりだったそうです」
決まりだな。金を降ろしておいて、その後その金を使いに来ない。
そんなバカなことは普通しない。
おそらく逃走資金としての現金化をクロードに頼んだのだろう。
1億Gも預けて持ち逃げされないと思えるとは、クロードとクランドの関係は相当近いものであるはずだ。
「そう思うとますます怪しいな。よし、パリテの周辺に中隊を出して捜索しろ。
ただし、敵対行動を取るな。こちらが協力を請わねばならない相手だとくれぐれも伝えるのだ」
それにしても陛下の洞察力が見事だ。本当に金の流れでクランドに迫ることが出来た。
捜索第三小隊第ニ分隊が情報局からの命令でがズイオウ川を捜索していたのは、たまたまだった。
「分隊長、人です」
そこには男女四人と小さな犬が一匹、川辺で何かを拾っていた。
「小さな茶色い犬に複数の美人を侍らせた男!」
そう確認したと同時に人が掻き消すように居なくなった。
分隊長は大急ぎで本体に合流すると目撃情報を報告するのだった。




