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043 女冒険者ケイト

【常設依頼 尋ね人 有力な所在情報を提供した者に金貨5枚 みつかり次第終了】

【クランド 男 黒髪(一部灰色)黒目 15歳 身長165~170cm 細身 平民(農民)服】

【小さな茶色い犬を胸にかかえている 美人奴隷を複数侍らせている 金遣いが荒い】

【移動手段:徒歩 ワイバーン(色:青、赤、白、橙、紫、桃)】


 依頼掲示板を見ていた私、ケイトは、破格の報酬を提示した依頼を見つけて歓喜の声を上げた。

常設依頼で単独パーティが独占するタイプではなく、冒険者レベルも問わない。

しかも、捕まえるとか殺すとかではなく、居場所を見つけて報告するだけでお金になる。

実家の男爵家を飛び出したのは政略結婚でエロ伯爵の妾にされそうになったからだった。

身一つで逃げてきて、出来る仕事と言えば冒険者しかなかった。

ソロで活動し、冒険者レベルもEとやっと見習いが取れた程度のケイトには、破格の有難い仕事だった。


「これは専従ではなく、ついでに気に掛けておくだけでもいいわね」


 そう思って他の依頼を受けて冒険者ギルドを後にすると、目の前に怪しい集団を見つけた。

小さな犬を連れ、美人を4人侍らせた剣士風の男、しかしどうも装備がしっくり来ていない。

しかも男は顔を隠すようにフード付きのローブを皮鎧の上から羽織っている。

これは当たりを引いた?

私、ケイトは男達の後を尾行するのだった。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



「クランド、この街も買い物をするには便利だにゃ」


「こら、お前は話すな。訛りが特徴的なんだよ」


 剣士姿の俺は騎士姿に変化したミーナに黙るようにと小声で囁いた。


「そうですね、クロード(・・・・)、ここを拠点にするのも良いかもしれませんね」


 魔術師姿のアイが大きな声を出して誤魔化す。

誰が聞き耳を立てているかわからないからな。

俺はアイとアン、牧羊犬モードのプチ、それに買い出し担当で別人に変化中のアリマと護衛担当で別人変化中のミーナと共に一番近い街までやってきていた。

俺が剣士、プチが召喚獣、アイが魔術師、アンがシーフ、ミーナが騎士、アリマがメイド兼荷物持ちの扮装をしている。

傍目からはごく普通の冒険者パーティに一応見えると思う。

この街はミンストルより若干規模が小さいが、川の恩恵で農地も肥え、川での漁も盛んらしく市場は結構賑わっていた。


「旦那様。拠点での生活物資を購入しなければなりません」


 これ見よがしに説明台詞を吐いたのはアリマだ。


「そうだな。全て任せる」


 俺はアリマに金を渡して買い物をさせる(・・・)

一人だけ使用人だというポーズだ。

こんな面倒なことをしなければならないのも、北の帝国が勝手に絡んで来て、それを返り討ちにしてしまったからだ。

そのせいで俺はここらの領地を治めるミンストル子爵に追われている身なのだ。

陸上戦艦で逃亡を続けられれば良かったのだが、サラーナが妊娠したため安全策で動けなくなった。

なのでこのような格好で活動しているというわけだ。


 順調に買い物を続け、用事も済んだし帰ろうとしたとき、俺は尾行に気付いた。



◇  ◇  ◇  ◆  ◇



 いま、クランドって呼んだ?

間違いない、奴だ。

髪色と目の色は確認出来ないが、身体的特徴は合致している。(クランドがフードを被っていたのが仇となっています)

茶色い小さな犬もいる。(ケイトは大型犬を飼っていたので相対的に中型犬でも小さい犬と認識しています)

そして美人を4人も侍らせている。(ごく普通のパーティメンバーのつもりですが、クランドが思った以上に美人ぞろいです)


 買い物の様子もメイドにお金を渡して好きなものを買わせている。

男の装備を見る限り、戦った傷もなく身体に慣れている様子もなく、どう見ても初心者パーティーだ。(見る人が見れば高レベル冒険者しか装備しない希少な魔物の素材製です)

なのに、買い物の量が半端じゃない。普通に金貨を複数枚出している。


「あれは!」


 メイドが買ったものを魔法の鞄に入れていた。

あれ一つで普通に家が買える代物だ。

装備と金銭感覚が乖離しすぎている。(とケイトは思っています)

あの男が貴族のボンボンでもない限り、あのようなパーティは異常だ。


 その時、男がフードを外した。

暑かったのか、顔を手で仰いでいる。


「!」

 

 私、ケイトはその顔を見てがっかりした。

その髪は茶色。目も普通に茶色だったのだ。


「人違いか……。でも怪しいパーティだったな」


 そう思いながら、後ろ髪を引かれる思いで尾行から離れた。

私、ケイトには受注した依頼があるのだ。

それを依頼失敗で終わらせては違約金もかかるしギルドランクの昇格審査にも響く。



◇  ◇  ◇  ◆  ◆



 俺が顔を見せると尾行していた女が尾行を解いた。

髪色と目の色を偽装していて助かった。

しかし、何を根拠に尾行されたのだろうか?

変装は完璧だったはずだ。

プチだって大きくなっている。不思議だ。


 そんなことを思いながら、俺達は南門のワイバーン厩舎に向かい、ブルー、オレンジ、パープルを引き取って農場へと帰還した。



◇  ◇  ◆  ◇  ◇



「ん? あれは、先ほどのパーティー」


 西の空に飛んでいくワイバーンを見かけた私、ケイトはその光景に違和感を覚えた。

あの先にはズイオウ山しかないはずだが?


【男はワイバーンに乗ってやって来る。】


 その説明書きが頭に浮かんだ。ワイバーンの色も合っている。

もし、あの髪色と目の色が魔法か何かで変えているのだとしたら、奴が本命かもしれない。


「薬草採取の依頼でも受けてズイオウ山に入ってみるか……」


 そう独り言ちるケイトだった。

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