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041 帝国

ガイアベザル帝国の一室


「ニムルドが行方不明だと?」


 第一宰相ゲッペルは、帝国の秘密兵器が行方不明と聞き、驚きの声を上げた。


「はい。第五皇子アギト殿下が持ち出したもようです」


 あのバカ殿下か。ゲッペルは心の中(・・・)で叫んだ。

相手がどうしようもないバカでも、公に第五皇子を誹謗すれば不敬罪で自身の首が飛ぶ。

ゲッペルも、それぐらいは当然わきまえていた。


「殿下には困ったものだ。で、行先は何処か?」


「それが潜入工作員から黒髪黒目の男の情報を得たらしく、リーンワース王国との国境を越えた模様でして……」


 ゲッペルは頭を抱えた。

知らないところで国際問題になっていたからだ。


「彼の国とは不可侵条約を結んでいる。それを破ってしまったのか……」


 しかし、リーンワース王国に行ってしまったなら、行方不明とはどういうことだ?

ゲッペルは情報担当官に問いかける。


「その後、ニムルドはどうなったのだ? 行方不明とはどういうことか?」


「はい。ミンストル城塞都市までは潜入工作員により所在を把握しております。

その際、アギト殿下はミンストルを砲撃して領主を脅迫しておりまして……」


 ゲッペルは開いた口が塞がらなかった。

戦争行為までしてしまっている。


「これはダメかもしれんな」


 ゲッペルは思考を巡らす。

今後の相手国の対応、それによる影響、皇帝陛下の不興、あらゆる物を天秤にかけ出した結論は……。


「皇帝陛下にそのままお伝えするしかないな」


「それはどうかと……」


 情報担当官は言葉を濁した。


「まだ何かあるのか!」


「ニムルドのシグナルがロストしていまして……。それで行方不明と……。

潜入工作員からもニムルドが北の森に向かった後、激しい砲撃音が轟き、そして巨大なキノコ雲が上がったと……」


 まさか……。黒髪黒目の男となるとガイア帝国の末裔の可能性がある。

もしその男が失われたガイア帝国の遺産を持ち、あのバカが高圧的に接触したとなると……。

返り討ちで死んだか……。そうに違いない。

奴が勝って何らかの成果を得ていたなら、これ見よがしに凱旋しているだろう。

それが無いとなると最悪の事態しか思いつかない。


 ゲッペルは頭を振ると外交担当官に指示を出した。


「リーンワース王国と接触しろ。親善航行(・・・・)をしていたニムルドが行方不明だと。

ニムルドには第五皇子アギト殿下が座乗されていると伝えるのだ。

相手からの返答、事の仔細が分かり次第、全て皇帝陛下に報告する」


「今度はリーンワース王国と戦争か……」


 ニムルドを失っているのに加えて、敵にはニムルドを破壊出来る戦力があるとなると……。

帝国でも数少ない陸上戦艦、それが失われ、それを破壊できる存在を敵が持つ。

最悪の事態だ。さらに皇子が死んだとなると戦わないわけにはいかない。


「厳しい戦いになるな……」


 ゲッペルは重い足を引きずりながら皇帝陛下にニムルド行方不明の第一報を伝えに向かった。

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