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034 風雲急

話は少し遡り、ミンストル城塞都市でのこと。


 領主の館では領主のミンストル子爵がが頭を抱えていた。

近隣都市からのワイバーン便が北の帝国の陸上戦艦の接近を伝えて来たのだ。

王国からの便りでも北の帝国の陸上戦艦が越境してリーンワース王国内に侵入して来ていることは知らされていた。

だが、それがよりにもよって自分の領地に向かって来ているとは思いもよらなかった。


「レーナクの街では、陸上戦艦は何もしなかったのだな?」


「はい。それ以前の街道の街も同様です」


「となると、目的はここではないかもしれないな」


 ミンストル子爵は楽観論に落ち着き、その後の対処を怠ってしまった。




「なんだあれは!」


 衛兵が西の街道に浮かぶ巨大な船を見て叫んでいた。


「まさか、あれが北の帝国の陸上戦艦?」


 衛兵が警鐘を鳴らそうとしたとき、巨大な船が舷側を見せるとその横腹が光りを発した。

と同時に城壁が大爆発で吹き飛んだ轟音が響いた。

何が何だかわからないうちに城壁は崩れる。

巨大な船はゆっくりと旋回すると船首を城塞の破孔に向け、その開いた隙間から街の中に侵入して来た。

巨大な船は街の家々の上に浮かび、領主の館を目指していた。

領兵たちはそれを見上げることしかで出来なかった。


 巨大な船はしばらくそのまま進み、領主の館の前で停止した。

示威行動なのだろうか、舷側にある砲列を領主の館に向けた。

そして船から声が聞こえて来た。


『我らは神聖なる古代ガイア帝国の末裔、ガイアベザル帝国の者である。

この街に黒髪黒目の男がいるだろう? 速やかに引き渡すように』


 一方的な通告だった。

しかし、領主のミンストル子爵でさえこの巨大な空飛ぶ船に対抗する手段は持ち合わせていなかった。

巨大な船はこれ見よがしに砲列を領主の館に向けていた。

為す術は何もなかった。


「私は領主のミンストル子爵だ。こちらはその男の情報を持ち合わせていない。

調べるので、しばらく猶予をいただきたい」


『よかろう。2時間与えよう』


 ミンストル子爵は屈服し、黒髪黒目の男の情報を集めるように部下に指示を出した。

方々に散った領兵が情報を集めて来る。


 酒場での情報。


「男は奴隷の美女を何人も侍らせている」


 裏組織からの情報。


「男は狂犬チワワと恐れられる召喚獣を連れている」


 住人からの情報。


「男は西からワイバーンに乗って街に来る」


 冒険者からの情報。


「男は冒険者登録をしていてクランドという名前である」


 商会からの情報。


「男は美女奴隷をオークションで買った」


「男はグリーンドラゴンの頭部をオークションに出した」


 古物商からの情報。


「男はガイア金貨とガイア銀貨を持っていた」


 衛兵からの情報。


「男は最初、たった一人で西の街道を徒歩で街へとやって来た」


 これらの情報がミンストル子爵よりガイアベザル帝国の艦ニムルドまでもたらされた。

この艦の(あるじ)はほくそ笑み、ミンストル城塞都市の西側の平原を重点的に調べさせた。


「戦車の軌道らしき痕跡を発見! 複数あります」


 艦の見張り員が叫ぶ。

この艦の(あるじ)は艦首を巡らせ、その痕跡を上空から追跡させる。


「全てが北にある魔の森に向かっています」


「決まりだな。奴は魔の森にいる。それもドラゴンを倒せる実力だ。

ガイア金貨まで持つとなるとガイア帝国の末裔に違いない。

おそらく魔の森にはガイア帝国の遺産が眠っている。

それは俺の物だ。奴は保護するが、遺産は根こそぎ奪うぞ!」


 艦の(あるじ)は狡猾な笑みを顔に浮かべると命令を発した。


「進路反転。魔の森に向かうぞ!」





 魔の森に向かった艦が結界に阻まれる。


「結界魔法に隠蔽魔法がかかっているだと? 潰せ」


 艦の(あるじ)の命令により艦首に魔法陣が現れ、結界を砕く。

そこには魔の森の中心へと向かう道が伸びていた。


「決まりだな!」



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



 この時、小さなピンクのワイバーンがミンストル城塞都市を訪れていた。

ニルは街の惨状を見て戸惑っていた。

主人ならどうする? ニルは自問した。

そして決断する。主人ならこの危機に必ず動く。

ニルは情報を収集するため、唯一の知り合いといえるダンキンの奴隷商館を目指した。




 ダンキンの奴隷商館ではダンキンが商館の前で待ち構えていた。

ダンキンは領兵がクランドの事を探っていると知り、どうにかクランドに知らせようと思っていたのだ。


「やはり来ましたな」


 番頭がダンキンに囁く。


「うむ。やはり彼のお方は救世主なのやもしれぬ」


 ダンキンの目の前に降り立つピンクのワイバーン。

そこに騎乗しているのは、勝手知ったる彼のお方の奴隷。


「ニルか。これをクランド様に! 大至急だ!」


 ダンキンはニルにメモを渡すと大至急クランドに伝えるようにと急かした。

急上昇し、北へと飛んでいくピンクのワイバーン。


 あとは祈るしかなかった。

これを切っ掛けにリーンワース王国とガイアベザル帝国は戦争に突入することになるだろう。

敵の圧倒的力を前にダンキンは恐怖するしかなかった。

奴隷たちを見る。明日は我が身かもしれなかった。

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