031 遠征計画
「主君、ゴーレムが一体壊れているようなのだが。これでは部隊運用に支障が出るぞ」
リーゼロッテとティアンナがリビングにやって来て妙なことを言う。
よくよく聞いてみると、牧場仕事の補助を任務としている783号が、他の700番代ゴーレムより非力なことを言っているようだ。
783号は、家畜を傷つけないようにとパワーを200番代ゴーレム並みにわざと落としている。
それを故障とみなしたということか。
「783号は家畜を傷付けないようにパワーをわざと落としてある」
俺の説明にリーゼロッテが首を傾げる。
「主君、783号は、家畜に直接触れる仕事をしておりませぬが?」
リーゼロッテが指摘する。
そういや、あの落としたパワーでも危ないということで、放牧民の奴隷を買うことにした経緯があったんだった。
つまり、今は牧場で力仕事しかしていない783号は、パワーを落とす必要がないということか。
以前はゴーレムが俺に危害を加えないかと危機感を持っていたからな。
遺跡が水平になり、活動を始めた同じ700番代ゴーレムが、普通に歩き回っている現状では、パワーを落とす理由がないか。
「なるほど、確かにその通りだな。よし、783号は改修しよう」
「感謝する」
そこでふと気になったことを聞いてみる。
「ところで、部隊運用ってなんのことだ?」
「主君、それは主君の軍をゴーレムで編成し部隊運用するということだ」
ティアンナが得意げに話す。
俺の軍? いらないよそんなの。
でも、彼女達は今護衛以外の仕事がないんだよな。
シャーロはアリマの手伝いで縫製や料理を仕事としだしたし、ミーナは農場警備の報告係をやめないし。
サラーナを除けば農場に仕事が無いのは、この二人だけだからな。
指揮のスキルが無駄になっているからゴーレム部隊を任せておけばいいか。
俺はスキル向上の訓練も兼ねてそれを認めることにした。
「なるほど。任せる」
「「ハッ!」」
リーゼロッテとティアンナが畏まって敬礼した。
そういや二人はアイリーンのルナトーク王国で将軍だったんだよな。
部位欠損がや火傷がなければ、奴隷商で安売りされるような人材じゃないんだよな。
あれ? もしかしてダンキンって俺に反北の帝国の戦力を集めようとしている?
いや、気のせいだろう。
俺はゴーレム783号を作業小屋に呼ぶと作業台に上げて改修作業を行った。
一度インベントリに入れて外装を外して出す。
外装は特殊な構造ではめ込まれていて、俺が使う工具では外せないのだ。
それがインベントリを使えば簡単に分離できる。
おそらく自動解体のスキルと錬金術のスキルが複合して作用しているのだろう。
中身がむき出しになった783号の魔宝石を書き換える。
元々システムコンソールから制御魔術式をDLしているので、それを上書きするだけでいい。
次に分離していたレーザー砲をインベントリから取り出し、改めて右腕内に装備する。
インエントリに収納し外装を纏わせてから出して終了だ。
「管理者クランドが命ずる。783号起動開始!」
俺の命令で783号が再起動を始めた。
『システムチェック。出力パラメータ正常。出力正常。
兵装チェック正常。内部兵装使用可能。起動します』
これで783号の性能は100%発揮できるようになった。
力を必要としない作業は他の200番代ゴーレムにさせることにしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
翌日 朝
人も増え、魔道具も準備して自動化したし、ゴーレムも様々な場所で活動しはじめた。
俺の農場は思った以上にスムーズに回るようになっていた。
何でも俺がやらなければいけないという状況は脱した。
そろそろ必要な物資や食材を収集しに行くべきだと思う。
スローライフっぽくなって来た。
皆、朝の作業を終え、シャワーを浴びると朝食を取るためにダイニングに集まっていた。
人が増えたためシャワー待ちが発生し、俺が一人でシャワーを浴びるという暇は最早なくなった。
必然的に嫁達が全裸でシャワー待ちという現象が発生した。
ターニャ、ナラン、ニルは生き物に触れる仕事だ。当然汚れる。
ミーナ、リーゼロッテ、ティアンナの三人は朝の訓練と称して勝手に汚れて来るので困ったものだ。
ついでにサラーナが俺の隣でシャワーを浴びる。何のアピールなのか不明だ。
シャワーヘッドは簡単に創れるが、それを設置して使用するスペースがない。
風呂場の洗い場の拡張が必要だ。ついでに全員で入れる浴槽も。
一階だから東側に拡張し土魔法を使えば問題ない。
三階拡張の時にトイレも増やしておいて良かった。
となると必然的に上の階の部屋が増えるな……。
「今日の予定を発表する」
俺はおもむろに立ち上がり宣言した。
「アリマ班、アリマ、シャーロ、リーゼ、ティアはワイバーンで街へ買い出しだ。
ターニャ班、ターニャ、ナラン、ニルは農場で留守番。
俺の班、俺、アイリーン、サラーナ、ミーナ、プチは東の大河の街まで進出して魚介類を調達する」
アリマ班はレッドとパープル。俺の班はブルーと白、オレンジに乗る。
サラーナが白、ミーナがオレンジに単独で乗ることになる。
ターニャ班にはピン子を残すつもりだ。
「旦那様、私達だけでは街に入れません」
アリマが指摘する。
そうだった。俺という主人の付き添いが無いと奴隷は街に入れないんだった。
どうする? ミンストルまで行ってアリマ達を街に入れてから東の大河の街まで行くか……。
いや、そうすると日没までに農場に帰れなくなるか。
俺が思案しているとアリマが解決策を示した。
「旦那様、皆で東の大河の街まで行くというのはどうでしょう?」
なるほど、買い出しなら東の大河の街でも出来るだろう。
この世界では水運は流通の要だ。
輸送費の差でおそらくミンストルよりも安い物もあるだろう。
「そうだな。よし、東の大河の街まで行って、そこで別行動だ」
「あなた様、魚は買うのではないのですか?」
アイリーンは魚を買うならアリマと行動を共にすればいいのにと思ったのだろう。
だがアイリーンの言葉に、俺はニヤリとするとインベントリから釣り竿を出した。
「いや、釣りだ」
俺は大河で魚釣りを楽しむ予定だったのだ。
これは以前からミーナと密かに計画していたことなのだ。




