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030 オーク襲来

「おお! 出来た」


「主様、何が出来たのです? あう!」


 俺がリビングで四苦八苦していると、サラーナが興味津々で聞いて来た。

そして俺の髪の毛を見てのけぞった。


「この()……いやここら辺の国では黒い髪って目立つだろ?

俺って元々髪はアッシュグレーにしてたから、ここでも出来ないかなって」


 この世界と言いそうになって自重した。

そう俺は髪の毛を染める(ブリーチ含む)方法を模索し、ついに魔法で簡単に出来ることに気付いたのだ。

薬学的に毛染めが作れないかと思っていたのが徒労に終わったのは内緒だ。

俺は異世界転生で神に新しい体を創ってもらったわけだが、肉体年齢は15歳になり、髪の毛はドノーマルの真っ黒になっていたのだ。

まあ、俺の遺伝子から体を再生するにしても、染めた髪の色なんてDNAに載っているわけないからね。


「鏡を見て、やっと自分らしいと思えるようになったよ」


 俺がそう言うと、隣で聞いていたアイリーンが不思議そうな顔をして尋ねた。


「あっしゅ? あなた様の国では、髪の毛の色を変えるのが普通なのですか?」


「ああ、黒のままなんて、ちゅ(おっと)学生ぐらいのものだったな」


 中学生以下と言おうとして自重した。この世界にも学生はいるだろうからギリかな。


「それは北の帝国人と間違われないためですか?」


「え?」


 それは、どういうことだ?


「純血の北の帝国人は黒髪黒目だからな」


 リーゼロッテが話に割り込む。

つまり俺はアイリーンやリーゼロッテ達に北の帝国出身と思われていたのか。

リーゼロッテとティアンナの態度がおかしかったのはそうせいか。

ここはその"間違われないため”だって話に乗っておくのが吉だな。


「そうなんだ……北の帝国人がね……。

俺自身はその理由を知らなかったけど、たぶんそのためだろうな。

俺は純血主義なんかじゃないし」


「そこは全く疑ってませんわ♡」


 アイリーンがデレた。

当然だ。昨夜も混血を作ろうと(以下略)


 アイリーンによると、めったに人前に現れないが、北の帝国人の上層部は皆黒髪黒目らしい。

これは帝国の上層部に遭った事が無かったサラーナ達は知らないことだった。

すると偶然髪を染めたことが良い方向に行くかもしれないな。


「そういや、ミーナも黒髪黒目だよね?」


「獣人は論外だそうです……」


 ああ、そんなところにも差別があるのか。なんだか怪しい純血主義だな。




「ところで主様、その鏡は何ですか?」


 サラーナが俺の手鏡に食いついた。


「手鏡という道具だが。サラーナ達も街で買ってただろ?」


 アイリーンも手鏡の覗き込み、納得した顔で屋敷に戻ると手に彼女達が使う鏡を持って来た。


「これが街で買った(わたくし)達が使っている鏡ですわ」


 それは金属板を磨いて反射させる、お世辞にも精度が良いとは言えない鏡だった。

中央が比較的まともだが、霞んでいて外に行くほど対象が歪んで映っていた。


「お前たちはそんな鏡を使っていたのか」


 俺が錬金術で創った鏡はガラスの板の裏に銀膜と銅膜をコーティングしたものだ。

それを錬金術で創った手鏡の枠にはめて完成だ。

インベントリに材料があれば何個でも創れる。

ガラスは土からケイ素化合物を取り出せば作れるし、銀と銅は貨幣を潰せば手に入る。使用量は少ないしな。

だが確かに、この精度の鏡はこの世界の技術では作れないだろうな。

そもそもこの透明で凹凸の無い一枚ガラスの製造が無理だろう。


「いる?」


 俺の一言に女性陣が目をキラキラさせて首を縦にぶんぶん振りまくる。

俺は鏡を創造すると皆に渡してあげた。

ミーナはどこに行った? まあ後で渡せばいいか。

ついでに自重なしで各々の部屋には姿見鏡を創って置いて回った。

この大きさでこの精度の鏡は国宝級だろうが黙っておこう。


 そう部屋。人数が増えて部屋が足りなくなったので屋敷を増築した。

三階を作っただけなんだけど、部屋数が倍の16部屋になった。

サラーナには「そこまで増やす気なんだ」と嫌味を言われたが、余裕は必要だと思うんだ。

ほら急なお客さんを泊めなければならないこともあるからね。

魔の森の中心だけどな。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



「大変にゃ! オークの群れが攻めて来たにゃ!」


 ミーナがリビングに駆け込んで来た。

そっと鏡を渡す。


「にゃんだこの鏡は!」


 綺麗に反射する鏡に驚くミーナ。そしてうっとりと自分の顔を眺める。

気に入ってくれたようで何よりだ。

俺はゴーレムに詳細を確認する。


『ゴーレム、報告を頼む』


『オークジェネラルを含む300体程度の群です。

オークプリースト、オークメイジ、オークアーチャー、オークナイトも含まれています。

只今20体ほどのオークが北門に攻撃を集中しています」


 300体かよ。大群じゃないか。

しかし考えようによっては、これはレベルアップボーナスだな。

俺とプチが瀕死にして嫁達が(とど)めを刺す。

パワーレベリングができる。


「全員で迎撃する。俺とプチで瀕死にするから、お前達が(とど)めを刺せ。

これで魔の森の魔物も相手に出来るようになるぞ」


 怯える嫁達。


「大丈夫だ。俺がお前達に結界魔法をかける。オーク程度に抜かれはしない。

お前達に渡す剣には『斬撃強化』の付与をかける。オークの皮でも簡単に斬れるはずだ。

プチ、聖獣モードだ。オークメイジとオークアーチャーを先に仕留めろ」


「わん(がんばる)」


 俺達は北の塀の上にやって来た。

塀といっても所謂城壁だ。矢間(やざま)と遮蔽物で凸凹が並ぶあの感じだ。


 オークアーチャーから矢が射かけられる。

俺の結界魔法が完璧に矢を弾く。

嫁達には遮蔽物の裏で身を隠してもらっている。たぶん結界魔法で当たっても無傷だろうけど。


「よしプチ、行け」


 プチが風魔法のウィンドカッターを複数展開しつつオークの群れに飛び込んでいった。

近寄るオークをウィンドカッターで始末しつつオークアーチャーとオークメイジに向かっていく。

俺は新しい魔法を試すため、オークの群れの1匹1匹を目で追い認識することから始めた。

この魔法は思い付きで創った『マルチロックバースト』という魔法だ。

オークを目で捕らえる度に目標がロックオンされ、魔法がその個体に誘導されるという魔法だ。

攻撃魔法は別途唱えることになるため、火だろうが氷だろうが雷だろうが任意の魔法が自動追尾で当たる。

そしてスキル『手加減』を発動、『マルチロックバースト』で『サンダー』の魔法をロックオンしたオークに撃つ。

最初の目標は中心後方に陣取るオークジェネラルやオークナイトにオークプリーストだ。



「ドドドドーン!」


 多数の雷が視界に入る範囲にいるオークを直撃した。

スキル『手加減』により肉に影響を与えない威力でオークが瀕死になる。

続けて残りに『マルチロックバースト』うをかけ、二発目の『サンダー』を生き残りにお見舞いしてやると、ほとんど動くものがなくなった。

オークジェネラルやオークプリーストといった魔法に耐性のある上位種も麻痺の状態異常になっている。


「よし、みんなで狩りに行くぞ」


 後は倒れているオークの頸動脈を剣で切っていく簡単なお仕事だ。

剣には『斬撃強化』の付与をしておいたのでサクッと切れる。

最初は怖がっていた嫁達もノルマ30体を無表情な目で刺して回った。

何か大切なものを失ったのか、ドン引きしているのかは定かではない。

俺が見逃した視界の外にいたオークは嫁に危害を加える間もなくプチがサクッと始末した。

全てのオークを倒しインベントリに収納するまでに、そんなに時間はかからなかった。


 こうしてオークの襲来はお肉の大収穫祭となった。

嫁達のレベルも上がり、様々なスキルが生えていた。


「ところで、なんでオークは襲って来たんだ?」


「ん。これ」


 ニルが黒い塊を見せる。


「トリュフ?」


「ん。オークこれ大好き」


 俺が試しに召喚して果樹園で育てていたトリュフだった。

今後は取り扱いに注意しよう。

たまにオークほいほいとして活用するのは言うまでもない。

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