018 皆のお仕事
農場に人が増えることで、生活も随分変わった。
朝起きたら着替え洗顔を済ませて各々朝の作業に向かうというルーティンが纏まりつつある。
家畜担当のナランはゴーレム783号と共に畜舎に向かうと牛と羊を牧草地に放す。
畜舎で糞を掃除すると寝藁などを交換し『クリーン』をかける。
水桶を排水し『クリーン』をかけ水を満たす。
寝藁の保管場所を畜舎の側に建てた方が便利になるな。
次の作業課題とする。
ターニャは同様に厩舎に向かうと馬を牧草地に放し、厩舎を掃除、水桶を排水し水を満たす。
時間停止倉庫から穀物を取り出すと鶏に与え、糞を掃除、卵を回収する。
餌用の時間停止貯蔵庫も鶏小屋の側にあるといいな。
ニルは時間停止貯蔵庫から魔物肉を持ち出すとワイバーンの厩舎に向かい、その肉を与え、水桶に水を満たす。
ワイバーンが肉に食らいついている間に厩舎内を掃除する。
ワイバーンは厩舎から出さない。
勝手に飛ばすと家畜を餌にしてしまうからだ。
ワイバーンはちょっとアホなのだ。
なのでワイバーンの厩舎は牧場とは離した別区画だ。
ここにも餌用の時間停止貯蔵庫がいるな。
「主人、それはダメ。
ワイバーンは食いしん坊だから匂いがすると倉庫を壊して食べる。
どうせ魔物肉を運ぶ手間はかかる。今のままでいい」
ニルの意見は尤もだ。どうせニルが運ぶのだ。
一度に運ぶのか、小分けにして運ぶのか、結局作業量は同じだ。
「それに、そんなに便利にすると仕事が無くなる」
本末転倒だった。
ちなみに水桶に水を満たすのは水の属性石だ。起動の魔力を流すと水が出て来る。
この水の属性石をあらゆる水場に設置しているのだ。
生活魔法の『ウォーター』で満たすよりも、水の属性石で行う方が遥かに少ない魔力で同量の水を満たすことが出来る。
『クリーン』も属性石で出来るようにしようと思っているのだが、『クリーン』はどうやら水と風の複合魔法らしい。
「主様なら複合魔法の属性石も出来るのは無いのですか?」
俺はそんなものが出来るわけがないと勝手に諦めていたことに気付いた。
サラーナの何気ない一言で試してみる。
『クリーン』の魔法が使える属性石を創ると強く念じたら出来てしまった。
生産の極の限界は俺が頭で縛りを設けていたらしい。
今後、使える場所には設置していこう。
俺は野菜畑に向かって朝採れ野菜を収穫し、一連の農業魔法で次の作物を植える。
サラーナは俺の側を付いて回って、たまに野菜を手で収穫してつまみ食いをしている。
朝の作業が終わるとアリマが風呂と朝食の準備をしてくれている。
泥に塗れた者は風呂で汚れを落としてから、全員がダイニングで朝食を取る。
朝食後、ターニャとナランの家畜担当の二人は牛や馬の肉体面の世話をする。
ニルは果樹園に向かいゴーレム230号と共に果物の収穫をし時間停止倉庫に入れる。
俺は穀物農場に向かい収穫し、一連の農業魔法で次の穀物を植える。
最近は稲わらや麦わらも収穫物と認識して収納している。
家畜の寝藁として必要だったのだ。
アリマは洗濯の後、昼食の用意をする。
そして皆で昼食。午後から皆は休憩。
俺はもろもろの道具の開発や塀の整備、必要になった建物の建築、プチをモフる等の雑務を行う。
家畜や土に塗れる仕事の後は風呂の使用頻度が高い。
食事前にはどうしても綺麗にしておきたいでしょ?
いちいち風呂を入れるのも何なので、簡易的にシャワーが使えるようにしたい。
今は水の属性石で水を出して、それを火の属性石で温めて湯にしている。
シャワーの場合はこれを同時に行って湯が出てこないとならない。
そこで複合魔法の属性石ですよ。
湯を出す属性石を創ってしまえばいい。
先の『クリーン』の属性石のように『ホットウォーター』の属性石を創った。
温度は40℃固定だけどね。
浴室に向かいシャワーヘッドを錬金術で錬成する。
その基部に属性石を取り付けるとシャワーの完成だ。
あれ? これって手で持てばホースも無いから便利に使えるぞ。
シャワーヘッドを持ち歩けば、どこでもお湯が出せる便利グッズが出来てしまった。
浴室の壁にシャワーヘッドの固定金具を頭の上と、座った状態で使いやすい場所に設置する。
このシャワーを四基設置した。四基なのは、汚れ仕事をするのが四人だからだ。
同時に四人が使えれば問題ないはずだ。
午後、日が暮れる前に家畜を畜舎に入れる。プチが牧羊犬モードで羊を追い立てて集める。
ターニャとナランは馬に乗り、牛を追う。
実はターニャとナランは裸馬の状態で馬に乗っている。
鞍はいらないのかと聞いたら鞍を知らなかった。せいぜい毛布を敷くぐらいらしい。
はみと手綱は用意した。これはどの世界でも共通らしい。
鞍と鐙は用意しよう。そうしないと俺が乗れない。
ワイバーン用も必要だな。
馬を厩舎に戻したら夕食、一日が終了する。
試運転も兼ねてシャワーを浴びていると何故かサラーナが横でシャワーを浴びている。
当然全裸で。
「何をしている?」
「あら、主様、わらわは本職の準備をしておりますのよ?」
「本職? サラーナに仕事なんて振ってないぞ?」
俺が不思議そうな顔をしていると、サラーナが満面の笑顔でこう言った。
「主様の子を生すのが、わらわの本職ですわ♡」
この後……以下略。




