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011 装甲車修理

 翌日、日課の畑仕事の後、装甲車の修理を行う。

森には車を移動させられるような道がないので、森を出るまではプチに乗っていくつもり。

だが、さすがに町の近くで聖獣モードのプチを見せるわけにはいかないので、平原では装甲車を使おうというのだ。

街道は通らず、平原をそのまま装甲車で移動してしまおうかと思っている。

装甲車を町の手前でインベントリに収納して隠してしまえば問題ないだろう。


 装甲車の状態は長時間経ってるにしては良い方だろう。

だが実用という面ではかなり酷い状態だ。

状態保存の魔法と錬金金属によってボディは原型を留めている。

遺跡が傾いたことによる落下のダメージもほとんどない。

問題は消耗品のタイヤ。

強化魔法がかかっていたようだが、経年劣化でボロボロになっている。

装甲車は六輪の装輪装甲車タイプで、タイヤが無いと困る。


 ゴムの木を探してタイヤを製造する?

追々やるべきかもしれないけど、早々に用意できるようなものではない。

備品倉庫に予備タイヤがあったが数が足りなかった。

(作者注:クランドが修理を楽しんでしまっているため、タイヤの製造ぐらい錬金術で簡単に出来るということを本人が脳裏から除外してしまっています)

仕方ない。戦車の無限軌道(キャタピラー)を移植しよう。

前輪がタイヤで後輪の駆動部が無限軌道(キャタピラー)という半装軌式兵員輸送装甲車というのがドイツ軍にあった。

あの感じにしよう。

(作者注:クランド自身の認識によるものですので、間違った知識を元にしている場合があります)


 ここまでして、町に何を買いに行こうというのかと思うかもしれない。

そこには切羽詰まった問題があるのだ。

食住はなんとかなったが、衣がまだだという話は以前もしたと思うが、衣の最重要課題が下着なのだ。

替えのパンツすら無いってどう思う?

早急に対策が必要なのである。


 それとゴーレムに牧場を任せてわかった事実。

ゴーレムと生き物を直接接触させてはいけない。

機械と生物の相性が最悪なのだ。

ちょっとした接触で家畜が傷ついてしまうので、ゴーレムの仕事は掃除と餌運びになってしまっている。

今後ジャージー牛が妊娠して、子牛の出産を補助するとなったら、全金属のゴーレムには荷が重すぎる。

スプラッターな想像しかできない。

酪農経験のある人材が必要だ。

これは遺跡と農場の秘匿という観点から奴隷に頼るしかないだろう。

うん。奴隷を農場の住人にする決意をしたんだ。

(作者注:クランドはこの世界が神様に望んだラノベ的な異世界という認識のため奴隷が買えて当然だと思っています)


 あとカレーがあまり美味しくない。

小麦粉を獣脂で炒めてカレーを作ったのだが、風味が微妙なのだ。

やはりバターが必要だ。

日本のカレールーは奥が深いとしみじみ思う。

生活の充実のためにはバターやチーズなどの乳製品が必要だ。

これを購入したい。


 そんなわけで装甲車を修理しなければならないという使命に俺は燃えているのだ。

その強い意欲に対して生産の極さんが威力を発揮する。

ラスコー級戦車から砲塔を取り除き、上部に装甲車のボディを乗せるニコイチのイメージで作業をする。

元々無人戦車なため、人の搭乗スペースが必要だったのだ。

砲塔の旋回機構や弾薬庫などが、修理が容易なようにユニット化されていたので、がっつり取り除く。

戦車の装甲も剥がし、車台を装甲車のボディと結合させる。ここらへんは錬金魔法だ。

見た目的(めてき)には馬無し馬車に見えるように幌っぽい偽装をする。


 あとは操縦系。

戦車部は人工知能による自動操縦なので、元々の装甲車の操縦システムからモバイル端末を介して操縦できるようにする。

ブレーキだけは音声制御も受け付けるようにしておく。

カーナビ的な機能を使って自動運転も出来る。

一応操縦席として前に二席。その後ろに三人掛けのベンチシートを二列。

これは背もたれを倒して繋げるとベッドになるやつだ。

キャンピングカーのように寝られるようにしようと思ったのだ。

その後ろに荷台。

これなら長距離遠征も可能だろう。


 早速平原で試運転だ。装甲車をインベントリに収納すると俺はプチに声をかけた。


「プチ、平原まで行くぞ」


「さんぽ? さんぽなの?」


 プチが3mの聖獣モードになる。

俺が背に乗るとプチが走り出す。


「平原まで1時間か。転移魔法でも使えれば……」


 頭の中に転移魔法の魔法式が思い浮かぶ。

魔導の極さんの仕事だろう。


「使えるのかよ!」


 まあ、俺のJOBは大賢者だもんな。使えるだろうさ。

だが、プチの散歩だから1時間プチに付き合うことにした。


「よしプチ、GOだ!」


「おー!」


 プチと俺は風になった。




 平原につくとインベントリから装甲車を出す。

さあ試運転だ。


 俺とプチは操縦席に乗り込む。

燃料石により魔法機関が待機状態になっている。


「ああ、これってキーとか付けた方が良かったか」


 俺には防犯意識が欠けていたようだ。

こういった問題点を潰すのも試運転の仕事なんだろうな。


 内燃機関のエンジンと違って魔法機関は稼働音がしない。

電気自動車がバッテリー駆動するのに近い静穏性かもしれない。

俺はゆっくりアクセルを踏む。


「ギャリギャリギャリギャリ」


 すると思った以上の騒音が……。

無限軌道(キャタピラー)の駆動音だ。

ハンドルを回すと前輪のタイヤが動く。

それによりコースが変わる。問題ない。


「ガコン!」


 その時大きな衝撃がボディに走った。

俺は装甲車を止めると装甲車を降り、前方にまわった。

どうやら草に隠れた岩に当たったようだ。

この平原の草地には相当数の岩が隠れているようだ。


「うーん。このままじゃ事故になるな」


 俺は困ってしまった。

今は試運転でスピードが出ていなかったから良かったが、最高速度が出ていたら大事故だった。

何かセンサーで避けるか。

そういや無人戦車は元々どうやって避けてたんだ?

ふと気づいて俺は自動運転を試してみた。


「勝手に岩を避けてる……」


 どうやらしっかり前方を精査して操縦しているらしい。

人より有能だ。これは人が運転しない方がいいのかもしれない。


「これなら安心だな。このまま町へ向かうぞ」


 操縦システムが音声命令に従って装甲車を町に向かわせるために進路変更を始めた。

何この自動運転システム。地球より進んでないか?

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