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今後のことを話す ②

 バーナンドさんたちは、俺たちがこの場を去ることを告げると少し驚いたような顔をしていた。

 彼らからしてみれば、すっかり俺たちが此処にいるのが当たり前になっていたのかもしれない。ちなみにフェニックスに関しては、俺たちが去ることを告げても寂しがることなどは全くなかった。

 フェニックスは、産まれなおす生き物だからこそ、そういう別れというものにそこまで何か思うことはないのかもしれない。

 それを見てメルは「もっと寂しがればいいのに!」とか文句言ってた。そういうメルは少し寂しいのかもしれない。

「バーナンドさん、このあたりって街とかあります? そのあたり知ってます?」

「街か……そうだな。前に此処を訪れた旅人が、南の方に街があるらしいとは聞いたな。その街は冒険者が多いとはいっていたが……」

「へぇ。周りにダンジョンでもあるのか?」

 ダンジョンとは、奥に宝物があると言われている魔物の出現場所である。『魔王』が倒される前はそこらかしこでダンジョンが出現して大変だったらしいが、ネノが『魔王』を倒したのでダンジョンも通常通りにしか出現しなくなったらしい。

 『魔王』を倒すのが長引けば長引くほど、ダンジョンがどんどんできて大変なことになっただろう。そう考えるとネノの功績は大きい。あと普通の森とか、海とかでも『魔王』がいればどんどん魔物が増殖していただろうし。

 冒険者が沢山いる街かぁ。冒険者相手に宿を運営するのも楽しいかもしれない。あと冒険者じゃなくてもダンジョンにはもぐれるし、ダンジョンにも潜ってみてもいいし。

 ただ冒険者ギルドから勧誘されまくると面倒なんだよな。適当にあしらえばいいかもしれないけど。

 そう思いながら俺はちらりとネノのことを見る。

「なぁ、ネノはどう思う? 俺は冒険者の多い街もいいかなと思うけど。ただ冒険者ギルドからの勧誘もあるかもなって」

「私もいきたい。レオと一緒に、冒険者相手に宿やるのも、きっと楽しい。絡まれたら私たちの意志、ちゃんと示せばいい。一度示せばきっと大人しくなる」

 ネノは俺の言葉にそう言った。

 確かにちゃんと話し合いをすれば、大人しくはなるだろう。ならば、それもアリか。

 しばらく人が全然いない場所で過ごしていたし、騒がしい場所で楽しく過ごすのもありだろう。

 丁度、メルの母親の元へ向かう通り道だし、丁度良い。

「レオ様、ネノ様、僕冒険者が僕の事を侮ったらぶちのめすよ!」

 メルは見た目がかわいらしいので、侮られることもあるだろう。前回の街での経験から、自分がそういう態度をされるというのを理解しているのだろう。

「うん。ぶちのめしていい」

「やってもいいけど、殺さないようにな」

「うん!」

 流石に突っかかってくる人すべてを殺してしまうとおおごとである。

 俺の言葉にメルは元気よく返事をした。本当に分かっているのだろうかと少し思ったが、メルも手加減を覚えているので、そこまで大事な真似はしないだろう。

 この火山にいる間に、養殖用の小屋は作ったりしたからその辺も次の街から進めて行こうかな。いくつか卵を産む魔物は捕らえてみたけれど、上手く懐けられなかったから結局食べたし。

 やっぱりまずは人に飼われること前提のものから手に入れた方がいいかな。それが終わったら狂暴そうなのを育ててもいいし。

 お気に入りの魔物の卵でも見つけたらその親を飼いたいな。

 大きな街だったらそのあたりの情報もあるだろうから、丁度良い。

「それにしてもその旅人は何のために此処まで?」

「見た事ない景色を見たいと思っていたらしい。フェニックスのことを知っていたのもあって、見に来たらしんだ。生れかわる時期にまた来たいといっていたが、それは間に合わなかったな」

 どうやら俺やネノと一緒で、色んなものを見ておきたいと思っている系の旅人らしい。

 まぁ、今は『魔王』が倒されて魔物が減ってはいるとはいえ、基本的に魔物や盗賊に旅人は狙われるものだし、理由がなければ旅になんて出かけない人も多いしな。

 それにしてもフェニックスが生まれ変わる時にまた来ようとしていて間に合わなかったか……それを考えるとたまたまとはいえ、こうしてフェニックスの生まれかわる場に丁度居合わせた俺たちは運がいいと言えるのだろう。

 俺はそんなことを考えるのだった。




 そして行き先も決まった俺たちはこの場所に留まる残りの時間をのんびりと過ごすことにした。

 山を見て回って火山口で遊んでみたり、魔物を倒したり、小さな抜け道で遊んでみたり……色々と見て回った。

 メルは楽しそうにフェニックスをつれまわしていた。フェニックスだけを連れまわされるわけにはいかないと、バーナンドさんたちもついてきていた。ただ俺たちについてくるのは大変なのか、息切れしていた。

 フェニックスは俺たちが去るまでの間、毎日宿にお客さんとして来てくれていた。

 親愛の証にか、メルに羽を二枚ほど渡していた。

「メル、街で首飾りにでもしてもらうか?」

「うん!!」

 俺が問いかけた言葉に、メルは嬉しそうに笑っているのだった。



 ――そして俺たちは、火山を後にする。

 また次に来る時を楽しみにしながら。




 第三章 火山と火の神 完


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