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フェニックス ⑧

 パーティーが終わって、すっかり眠りこけている人々を俺は見る。

 何だかこうして酔いつぶれている人たちを見て、思わず楽しい気持ちになるなぁと思った。

「レオ、この人たち、どうする? 毛布でもかけとく?」

「そうだな。流石にこのまま放っておいて風邪をひかれても困るからな」

 お腹を出したり、風邪をひきそうな恰好で眠っている彼らを見ながら俺は《空間魔法》で毛布を取り出しかけていく。

 そうやっていれば、フェニックスの子供が俺の傍によってきた。毛布が気になるらしい。強い魔物の個体であるフェニックスは寒さなど感じないだろう。

 そもそもフェニックス火の鳥と呼ばれている存在なので、少しぐらい冷えていても問題はないのかもしれない。元々こんなに標高の高い場所で過ごしているわけだし。

 愛くるしい鳴き声をあげながら、毛布を面白そうに踏んでいる。

 こうやって無邪気な様子のフェニックスの子供が、いずれ人も寄せ付けないような強大な魔物になるというのは中々想像が出来ない。だけれど、いずれこのフェニックスの子供は強大な力を持つ存在になるのだろう。

「レオ、フェニックス可愛いね」

「そうだな。可愛いな」

「やっぱり生まれたばかりだから、こんなに無邪気なのかな?」

「そうだろうな。どういう存在でも生まれたばかりの頃はこういう無邪気なものだろう」

 ネノと一緒にフェニックスの子供を見ながら、そんな会話を交わした。

 あとメルがフェニックスが毛布で遊んでいるのを見ながら、うずうずしている。一緒に遊びたいのだろうか?

「メル、遊びたいなら一緒に遊んだらどうだ?」

「……むっ、僕は産まれたばかりの魔物とは違って、もっと大人なんだよ! だからああいう毛布では流石に遊ばないよ」

 なんていいながらもメルは何だかんだ遊びたそうにしている。そういえばフェニックスも力が強い魔物だから、いずれもっと力をつけたら人の姿になれたりもするのかもしれない。もし人の姿になったらきっとメルよりも幼い姿になるだろう。

「メル、素直になったら?」

「むー、ネノ様までそんなことを言わないでよ。僕はあのフェニックスよりももっと大人なんだからね」

 そう言いながらメルはフェニックスの子供に近づいて、「僕の方が大人なんだよ!」などと自信満々に言い放つ。

 そんなメルの言葉にフェニックスは不思議そうな顔をしている。何を言われているのだろう? と思っているようである。

 それを見てメルは不服そうな顔だ。

「もう! 生まれたばかりの魔物だからって、そんなきょとんとした顔をしないでよ!」

 そう言ったメルに、フェニックスは近づき、口にくわえていた毛布をメルの足元に落とす。

 そして遊んでほしそうにバタバタと翼を動かす。それをじーっとメルは見据える。そして「ふ、ふん、そんなに遊んでほしいなら遊んであげる。僕はお前よりもお兄さんなんだから!!」そう言って、メルはフェニックスと遊びはじめた。

 結局遊ぶなら最初から遊べばいいのにと思いながら俺とネノはメルとフェニックスを見る。

 ドラゴンと、フェニックスがこうして遊ぶなんて不思議な光景だよな。本来ならば滅多なことでは見れない光景だろう。

「――フェニックスも楽しそう。メルも楽しそう。いい事」

「だな」

「メルにももっと、お友達作れたらいい」

 ネノはメルのことを何だかんだ可愛がっているので、メルに友人が出来てこの後の長い人生を楽しんでくれればいいと思っているのかもしれない。フェニックスとメルの出会いが、これからの未来につながるものだったらいい。

「私も、知り合いたちを増やしていけたら嬉しい」

「そうだな。もっと知り合いを増やして行ったらきっと楽しいよな」

「うん」

 ネノはそう言いながら、嬉しそうに笑っている。

「この毛布結構ふかふか! お前の羽もふかふか?」

 メルはそう言いながらフェニックスに視線を向けた。そしてフェニックスはその身体をメルの方へと向ける。メルはフェニックスの身体を撫でる。

 親のフェニックスは触らせてもらっていなかったけれど、産まれたばかりのフェニックスとの関係は良好なのかもしれない。

「なんだか潰したらすぐつぶれそう!」

 だけどそんな言葉を口にするものだから、すぐにフェニックスから距離を置かれていた。メルは相変わらず余計な一言を言うよな。

 


 その後、俺たちは眠りにつくことにする。

 フェニックスも俺たちの宿に泊まることを決めたらしく、俺たちについてくる。俺とネノが同じベッドに入って、フェニックスはメルと一緒のベッドに入っていた。それにしても火の鳥がベッドで眠っているって何だか不思議な気分にはなった。

 そしてその翌日、フェニックスがいないとバーナンドさんたちが騒いでいて少し騒ぎになった。ネノと一緒にフェニックスが寝ているとは思わなかったみたいだった。

 ――そうして、楽しいパーティーは過ぎて行った。

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