フェニックス ⑦
「『勇者』様と、レオニードさんに乾杯!!」
「本日は無礼講じゃああ」
現在、俺たちの宿でパーティーが行われている。もちろん、食事などを準備したのは俺たちである。やはり誰かに美味しいといってもらえることが嬉しくなってくる。
火山の上にお店を建てているから、こんな風に人が沢山いるのも久しぶりなので楽しい。街でお客さんでにぎわっていたのとはまた違う雰囲気だ。
お酒も回っているからか、バーナンドさんたちも凄くはしゃいでいる。……というか、あれだけ俺に対して嫌な雰囲気だった人たちもすっかり出来上がっているのか騒ぎまくっている。俺とネノの魔法で物とか投げられても問題ないようにはしているけれど。それにしてもどんな暮らしをしている人だって、お酒を飲んだ姿は皆変わらないなあと思う。
色んな考えの違いとかがあって、その考えの違いで人は争いをしたりはするけれど、こうやってお酒を飲んで笑いあえばどうにでもなる感じがする。
ちなみにかわいらしい鳴き声をあげているフェニックスもこの場にいる。フェニックスも俺たちについてきたがったのもあり、今回の出来事の主役と呼べる存在だから此処に連れてきている。椅子に座っているフェニックスの子供は愛らしい。
大きくなったらこのフェニックスも誰にも負けることのない強い魔物になるのだろうか。フェニックスには、消化に良いスープなどを用意している。でもお肉も好きなようなので、生肉などもあげている。小さな愛らしいフェニックスが生肉をつついているのはなんともいえない気持ちになるものである。
幾らかわいらしい見た目をしていても魔物なんだなぁって感じである。
山の上で過ごしているから時間も沢山あって、色んな珍しい材料も手に入っている。それを俺たちは調理した。珍しい食材を手に入れてすぐはどうやって調理したものか悩んだものもあったけれども、ネノと一緒に試行錯誤して調理していった。
「皆、美味しそうに食べてる」
「そうだなぁ。ネノも飲んでるか?」
「うん。今日はパーティーだから」
流石に俺とネノも完全な仕事中だと、お酒を飲んだりはしないけれども、こういうパーティーの場だからこそ俺とネノも普通に飲んでるし、食べている。
果実酒を口に含むと、良い感じに酔いが少しずつ回ってくる。
「レオ、これ、美味しい」
「そうだな。仕入れた甲斐があった。お酒も自分で製造できるようになったら楽しそうだよな」
お酒は自分たちではまだ作ってはいない。そういうものも作れるようになった方がきっと楽しいだろうなぁと思う。
「フェニックス、助けられてよかったね」
「ああ」
「これからもっとレオと一緒に沢山の事が出来ると思うだけで、私は楽しみ」
「俺も。でもネノは『勇者』をやっていた時に結構色々見てただろう」
「うん。でも早くレオの所に帰ろうってあんまり楽しんではなかった。あと、レオと一緒にやることだからこそ何よりも楽しいから」
ネノはそう言いながらちびちびと果実酒を飲んでいる。ネノの顔色は一切変わっていない。ネノもお酒が強いからな。『勇者』としてのパーティーでも、ネノを酒に酔わせていいようにしようとしていたならず者のような奴らもいたらしい。でもネノは全然酔わなかったし、どんな権力者が近づいてきても全く相手にしなかったとテディは言っていったっけ。
「『勇者』様、レオニードさんも、もっと騒ぎましょうよ!」
「それにしてもフェニックス様と一緒にこうして食卓を囲めるなんて……」
「いえええええい」
……俺たちに話しかける者もいれば、フェニックスの子供を囲んでいる者もいれば、踊っている者もいる。あの踊りはなんだろうか? 男性に関しては上半身むき出しで踊っているけれど、何だか楽しそうに踊り狂っている。
酔っていると本性が出てくると言うか……。今までフェニックスが危機に瀕していたのもあって彼らも余裕がなかったと言えるんだろうか。だからこそ今まで難しい表情を浮かべていたけれど、一先ず山場は乗り越えたから、本来の姿がこうして見えてきている。
フェニックスの子供は、周りの人間たちが幾ら騒ごうとも我関せずといった様子で平然としている。フェニックスにとってみれば、周りの人間たちは味方であり、こうして騒いでいようが構わないと思っているのかもしれない。
「僕も大人になったらお酒飲みたいなぁ。今はまだ飲めないけど。でも僕が大きくなった時にはもうレオ様もネノ様も多分いないよね。んー、レオ様とネノ様が長命種だったらよかったのになぁ」
「俺とネノは人間だから仕方ないだろう」
幾ら俺とネノがそれなりに強かったとしても、俺とネノは人間である。だからメルが大きくなった時には俺たちは寿命を終えているだろう。
「メル、お酒は一緒に飲めないかも。でも、一緒に沢山冒険して、楽しい思い出作れる」
「うん! 僕、レオ様とネノ様と沢山思い出作る! 僕がお酒飲めるようになったら、お墓に持ってきてお供えするよ!」
……メルはやっぱり長命種だなぁと思う。
メルにとって俺とネノと過ごす時間って一瞬で過ぎていくものなのかもしれない。




