フェニックス ⑥
メルがバクバクとそのドラゴンを食べた。
火にかけられ骨も残らず食べられていて、バーナンドさんたちが青ざめていた。メルに食べられるかもしれないとでも思っているのかもしれない。メルは俺やネノとかかわりがあるし、自分も人型になれるから人はあんまり食べない。そもそも俺たちが止めたらそういうの食べないしなぁ。
「ぷはぁ、美味しかった。沢山食べれて満足!!」
嬉しそうにメルは声をあげて、ドラゴンの姿でげっぷをする。そしてその姿のまま俺たちに近づく。
「レオ様、ネノ様!! 美味しかった」
「よかったな」
「ふふ、よかったね。でもメル。でもフェニックスが怯えているから人型になる」
「うん」
メルは頷いて、すぐに人型になった。そんなメルを見てフェニックスは少し怯え気味である。産まれかわる前の大人のフェニックスの姿ならともかく、今の小さな姿だと大きなドラゴンの姿のメルは恐ろしかったのだろう。
目の前でバクバク食べられたから、恐ろしかったのだと思う。そもそもバーナンドさんたちも怯えているし。ちゃんと話が通じる相手なんだから、そこまで怯える必要はないと思うんだけどなぁ。メルってそのあたりはちゃんと俺たちの話を聞いてくれるし。
「僕に怯えているの? 食べないよ。レオ様とネノ様に駄目って言われているし」
その言葉に恐る恐るとでもいう風にフェニックスは、メルを見る。メルとじっと見つめあって、それからフェニックスも安心したのか、鳴き声をあげながらメルに近づいた。メルはそんなフェニックスの頭を叩く。熱かったらしく、またぽこぽこと叩こうとしてフェニックスに反撃されている。まぁ、フェニックスもメルも本気でやりあっているわけではなく、じゃれている感じなので問題はないだろう。
「……『勇者』様」
「ああ、バーナンド。ドラゴンも倒したし、他の連中はあんまりこっちに来ないと思う」
「ありがとうございます」
「フェニックスも力が安定してる。とはいえ、まだ子供。守る必要はある」
「それは当然です」
フェニックスは産まれなおした瞬間が一番弱いので、その瞬間を狙われているという話なので、力が安定してひとまず襲ってくる魔物の第一波はどうにかできたと言えるだろう。
ただフェニックスは産まれなおしたばかりでまだ力が弱いので、これからも狙われていくことはあるだろう。
ネノの言葉にバーナンドさんたちが頷く。
それにしてもフェニックスは中々可愛いものだ。産まれたばかりだというのもあるだろうが、中々無垢な雰囲気だ。フェニックスは不死の鳥で、元々の記憶や経験もあるのではないかと思う。
そう考えるとフェニックスって不思議な生物だ。
「ねーねー、レオ様、ネノ様、もうこの場に迫ってきた魔物もドラゴンの気にあてられてよってこなさそうだけど、どうする? 逃げる連中も殺す?」
「迫ってきたら殺すでいいだろう。そうじゃないなら別にいいだろう」
少なくとも産まれなおす瞬間というのは乗り切ったので、フェニックスも少しは落ち着けることだろう。念のため、メルを置いて行って、俺とネノは宿へと戻った。
「生まれなおしたフェニックス可愛かったなぁ」
「ん」
「ああいうのを飼うのもありかもな。もちろん、ちゃんと責任をもって飼える場合だけだけど」
「ん」
なにか旅で連れていけるような生物を飼えるのならばそれはそれで飼うのもアリかなぁと思った。あまりにもそれにばかり構っているとメルが煩そうだからそのあたりは考えてからになるだろう。
「ネノと一緒にフェニックスが産まれなおす瞬間を見れて俺は嬉しかったよ」
「ん。私も」
家に戻って、ネノと一緒に隣り合って座る。ネノの体温を感じると何だか気持ちがよくて、安心した気持ちになった。
「なぁ、ネノ、フェニックスも宿に連れてくるか? バーナンドさんたちがいいっていったらだけど。お客さんに出来たらきっと楽しいよな」
「それいい」
「だよなぁ」
しばらくバーナンドさんたちはフェニックスが産まれなおしたということで、祝杯をあげて騒がしくなるだろう。バーナンドさんたちにお祝いの料理を持っていくのもありかもしれない。それかフェニックスも含めて宿に招待して、パーティーでもやろうか?
そういうことを考えると、何だかそれもいいなぁって気持ちになった。
「バーナンドさんたちとお祝いでもするか?」
「それもいい」
「色々準備して、パーティーにしよう」
「楽しそう」
「それでしばらくゆっくりしたら、次は違う場所に行こうか。ネノはどこ行きたい?」
「んー。どこでもきっとレオとなら楽しい。でもどこ行くかは、メルも含めて考えたい」
「そうだな。メルの親の所にも行きたいし、そっち方面に向かいながら考えた方がいいよな」
「ん。ドラゴンいっぱいいるの楽しそう」
この旅の合間にメルの親の所にも向かう予定だ。それまでに色んな所に寄り道する予定だから、つくのは大分先になるだろうけど。




