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フェニックス ④

 フェニックスが生まれなおす日が徐々に近づいてきている。

 ――その予感を感じると同時に、周りに群がる魔物が増えてくる。それはフェニックスを食らおうとしている魔物達である。

 その中には、バーナンドさんたちが相手にするのも難しい存在が時折まぎれている。倒すことは出来なくはないが、誰かが命を落とす可能性の高い。

 そういうきわどい相手がまぎれているのだ。

 だからこそ、バーナンドさんたちは『勇者』であるネノに助力を頼んだのだと言えるだろう。

 俺は少しずつ小屋を作っている。小屋の一つは《時空魔法》でしまってあるけれど、もっと小屋は有った方が便利だからな。小屋作りはフェニックスの護衛をするときも、進めていた。

 神聖なフェニックスの前でそういう態度をしている俺のことを気に食わないといった様子の者もいたが、それはバーナンドさんが制していた。

 というか逆にフェニックスは小屋作りをしている俺のことを興味深そうに見ていたしな。

 もうすぐ生まれ変わりの時期がくる――ようするにフェニックスは人でいう妊娠状態だろうに、元気だった。

 これだけ力強いオーラを身にまとっておきながら、これでも弱っているなんて信じられない。

 そのフェニックスは、俺とネノに懐いているのか俺たちがくると嬉しそうに鳴き声をあげる。こういうペットのような魔物を買うのもいいかもしれない……なんて思っていたら、メルが「僕がいるじゃん!!」とかいって騒いでいた。

 メルはドラゴンなのに俺とネノのペット枠でいいのだろうか? 本人はフェニックスに対抗意識を持っているみたいで、何だか色々突っかかっていた。でもフェニックスもメルとそうやってじゃれあうのが楽しい様子なので、放っておくことにする。

 それにしても、火山にきてこういうフェニックスと関わることになるとは思ってなかったので、俺はこの状況を楽しんでいたりする。――フェニックスが生まれ変わる瞬間というのは、生きているうちに一度見れるか見れないかという珍しいものである。

 俺はその状況を間近で見ることが出来ると思うと楽しみで仕方がない。

「レオ、フェニックス、もうすぐ生まれなおしそうだね」

「ああ。それを狙って魔物も訪れそうだから気を引き締めないとな」

「私とレオがいるならどんな相手が来ても大丈夫」

 ――ネノがそう言って微笑む。

 ネノの笑みを見ていると、幸せな気持ちになって、俺はネノの事を抱きしめた。

「レオ、どうしたの?」

「俺のネノは可愛いなぁと思って」

 そう言えば、ネノはまた笑った。

「……『勇者』様、もうすぐフェニックスが生まれ変わるのですが、その調子で大丈夫ですか?」

 ネノと一緒にのんびりしていたら、そんな風に言われてしまった。

 俺たちの雰囲気があまりにも緊張感がなかったからかもしれない。正直、俺とネノは何があったとしても問題がないと思っているので、そこまで緊迫した雰囲気にはならない。そもそも俺とネノと、あとメルが揃っていて間違いがおこるとは思わないし。

「問題ない。私とレオがいる」

 はっきりと言い切ったネノ。

 そのネノの自信満々な様子に、俺は思わず笑ってしまう。

 心配そうな視線を向けられているけれど、結局結果を出さなければそれを覆すことは出来ないだろう。俺とネノでならどうにでも出来るって証明し続けられればいいと思う。

 周りに何て言われても関係はないけれど、出来れば周りからネノの旦那だって認められた方が嬉しいから。

 バーナンドさんたちにも、俺自身の事が認められたほうがきっと将来のためになる。

 そんなことを考えながら俺とネノとメルは、そろそろ生まれなおす日がくるのを心待ちにしながら過ごした。




 ――そしてその時がやってくる。

 その変化は突然だった。真っ赤に急に、その身体が燃え上がる。苦しみの鳴き声などはあげない。きっとフェニックスにとって生まれ変わることは当たり前のことで、何も悲観するようなものでもないのだろう。

 ただこれ、前情報知らずに見ると美しい鳥が燃えている! って焦りそうな場面である。

「なんだか綺麗」

「めちゃくちゃ燃えてるね!」

 その燃え盛る様子が綺麗で、ネノとメルがそう言って笑っている。

 そしてそれと同時に、卵にひびが入る。ピキピキという音をたてて卵が割れていく。その割れていくに比例して、燃え盛るフェニックスは徐々にその身体を燃やし尽くしていく。このままその身体を消滅させるのだろう。そしてそれと同時に、卵からフェニックスが産まれる。

 なんて美しく、なんて神秘的な光景だろうか。

 こういう光景を目の前で見れるだけでも、村を飛び出て旅に出た甲斐があるというものである。

 そして――その時が訪れる。

 卵が割れて、そこから現れた小さな火の鳥。

 ――その小さなフェニックスは、かわいらしい鳴き声をあげていた。





 

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