男の話 3
バーナンドさんを送ってから、数日が経過した。
俺達はバーナンドさんたちの村の人たちが宿にお客様としてやってくることを楽しみにしていたのだが、まだやってこない。
「来ないね」
「何でこないんだろ? ネノ様に頼みたいことあるって言ってたよね?」
ネノとメルは残念そうである。
ネノも何だかんだお客さんが来てくれた方が嬉しいので、来ないのかと少しがっかりしているようだ。相変わらず無表情に見えるけど、内心は「来ないかなー」って期待しているようだ。
「まぁ、バーナンドさんたちも頼みがあるなら来るだろう。来なかったら来なかっただしな」
俺はそう言いながらもなんとなく、バーナンドさんたちはやってくる予感がしていた。
バーナンドさんたちの頼みが何なのかは分からないけれど、『勇者』であるネノにだからこそ頼みたいと思っていることなら、他に頼める人もいないだろうしさ。
俺もこうして火山の上でのんびりと過ごすのも楽しいけれど、何か変化があるならそれはそれで楽しいし。
バーナンドさんの頼みがどういうものかは分からないけど、俺達なら何も問題ないだろうし。
「そっか! ねぇ、ネノ様、レオ様、今日は何をする?」
「そうだな。俺は今日は養鶏所とかを作ろうとは思っているよ。結局そういうのも作ろうとして、まだ出来てないから」
「私は……このあたりで獲れるもの見てくる」
このあたりならその施設に入れるための魔物達も捕らえられるし、全部自給自足でなんでも手に入る方が楽しいしな。あとは牛系の魔物も欲しい。ミルクも手に入ったらいいだろうし。ああいう魔物って、手入れによって質の良いものが手に入れる事が出来るって聞くし。
「え、僕はどうしようかな」
「俺とネノ、どっちについていってもいいぞ。それかどっかぶらぶらしていてもいいし」
「んー、じゃあ僕、レオ様のお手伝いする!!」
正直お客さんも来るかもわからないからどちらでもよかったのだが、メルは俺の手伝いをするらしい。
ネノは「じゃ、いってくる」といって去っていった。
俺とメルは、木を切って建物を建てるための材料を手に入れた。メルは何だか楽しそうだ。ちなみに木を切っている間に、魔物が寄ってきたが、そのあたりはメルがさっさと倒していた。
「レオ様、なんか木を切っていると魔物結構よってくるね」
「それはそうだろう。これだけ大きな音をたててるしな」
こうやって魔物が沢山やってくるからこそ、この山は人が住むには相応しくない。本当にこんな場所にわざわざ住んでいるバーナンドさんたちは何らかの理由があるのだろうなと思う。
メルと一緒に魔法を使いながら、小さな建物を建てた。小屋と呼べるぐらいの小さな建物だ。
卵を産む鳥類の魔物を集めてこようと思う。ただそのあたりはちゃんと厳選しておきたい。何でもかんでも捕まえてきて中に入れたら魔物同士で殺し合いになる可能性もある。あとはちゃんとこちらが上だと分からせるのも重要だろう。ただの鶏はこの山で住んでないだろうし、後から鶏を飼うにしても強い力を持つ魔物とは別の小屋で飼わなきゃだしな。
「メルはどういうのが飼いたい? 鳥の魔物」
「んー、卵産む奴だよね?」
「今のところの目的は卵だな。肉は狩ればどうにでもなるし。でもまぁ、最終的には肉も食うかもだけど」
「……ロドントサとか?」
「あの鶏に若干似ているけど、狂暴で人を見かけるとつついてくるやつか」
「うん。あの魔物の卵、美味しかった記憶がある。前にレオ様、料理で出してくれたよね?」
「そうだな。ロドントサ自体は見た事ないけど、商人から卵は買えたからな」
その魔物自体を俺は見た事がある。一定の地域だけに生息している魔物だし、村に来た商人がたまたま持っていたのが珍しかっただろう。
村に来ていた商人って、結構色んなものを持ち込んでくれていたからな。俺とネノは結構商人のお世話になっていた。あの商人は元気だろうか? 色んな場所を見て回っている商人だから、そのうちどこかで再会するだろうと少しだけ楽しみだった。
そんなことを考えながらメルの希望通り、いつかロドントサを手に入れることは決めた。ただ、今いるこの山にロドントサは住んでいないので(メルは生息地などは考えていなかったっだろうけど)、一旦それは却下である。ああ、でもとりあえず小屋は作ったし、後から慎重に選んで飼うものを決めてもいいか。
「あれはこの辺に生息していないぞ」
「えー、そうなの? じゃあ……って、あ、レオ様、誰か近づいてきているよ」
メルは何かを言おうとして、近づいてくる気配に気が付いたのか、声をあげる。俺もメルが気づいたと同時に気づいた。――ネノではない。多分、バーナンドさんたちだろう。
「このあたりで近づいてくるならバーナンドさんたちだろう」
「うん。ネノ様いないし、とりあえずもてなす?」
「そうだな。メル、迎えにいってもらえるか?」
「うん!!」
メルに迎えに行ってもらっている間に簡単にもてなす準備を整えることにした。




