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男の話 2

「いってらっしゃい、レオ」

「いってらっしゃい、レオ様!!」

 ネノとメルに見送られて、俺はバーナンドさんを送り届けるために宿を後にした。

 ちなみに俺の恰好は完全に普段着である。特に荷物も持っていない。基本的に必要なものは《時空魔法》でしまってあるからそこから取り出せばいいわけだし、手持ちの荷物は必要ない。

 ただこれだけ軽装でバーナンドさんを送り届けるというのが、バーナンドさんには不安だったらしい。

 何度も本当にそんな恰好で行くのか? 準備をなしに? などと問いかけられたものだ。

 それに対して「大丈夫」といっていたのは俺ではなく、ネノとメルだった。やっぱり実際に見て見ないことには、俺が大丈夫といってもバーナンドさんにとっては信じられないのだろう。

 そもそもこの場所で長く暮らしているバーナンドさんたちは、余計にこの場所の危険性を知っているだろうし。

「ほ、本当に大丈夫なのか」

「大丈夫です」

 不安そうなバーナンドさんに道案内をしてもらいながら山を進む。

 途中で出た魔物は俺が剣と魔法で対処した。火山の魔物は地上の魔物とは違う特性を持っていたりしたけれど、特に問題はなかった。というか、メルと模擬戦するときの方が緊張感あって大変だしな。

 倒した魔物は《空間魔法》でさっさとしまった。

 そう言う様子を見てバーナンドさんは開いた口が閉じられない状況になっていたが、まぁ、そのあたりは放っておこう。

「……レオニードさんは強いのだな」

「俺はネノに追いつきたかったから頑張ったんですよ」

「……頑張ったからとこうなれるのか?」

「それはその人次第じゃないですか。確かにこの世界は才能も関係するけれど、頑張ればどうにでもなること多いですし」

 才能というのは確かに重要だろう。ネノも『勇者』の資質があったからこそ、昔から特別だったわけだし。でも世の中には一般的に才能がないと言われている人でも歴史に名を残すことも多くあるのだ。

 なんだかんだ俺のことを特別だという人もいるけれど、俺は子供の頃、全然ネノについていかなかったし、ある程度普通だと思う。

 それにしてもこのあたりは結構、魔物がいるなと驚いてしまう。

 俺は問題ないけれど、確かにバーナンドさんは一人でこのあたりをうろうろするのは大変かもしれない。そもそもどうして一人でバーナンドさんはうろうろしていたのか、そのあたりに関しても村についたら聞けるだろうか。

「バーナンドさん、次は?」

「次は右だ」

 そしてこの山の中の村だからか、結構込み入った場所にあるみたいだ。バーナンドさんがいなければ俺はその場所までたどり着けない気がする。しかも途中で何だか不思議な動きをバーナンドさんがしていた。それと同時に不思議な感覚もしていたので、ちょくちょく魔物が来ないように何か工夫がされているのではないかと思う。

 それにしてもこんな風に工夫をしながらでも山の中に住む理由は何なのだろうか。

 危険度でいったらずっと標高の低い場所の方がいい。山の上だと息苦しさを感じたりもするし、食物も育ちにくいだろうに……。そういうところも興味がある。

 俺とネノの住んでいた村は普通の村だった。『勇者』であるネノが育ったにしては普通といえる村だった。だから村に訪れる人たちは「此処が『勇者』の村?」と驚いていたっけ。

「……レオニードさん、俺の村は閉鎖的な村だから、村の中に入るのは今回は勘弁してもらってもいいだろうか」

「いいですよ。村はあれですか?」

 村の場所は分かった。

 近くに村があるのが分かったから。その村は結構こじんまりとしている。とはいえ、俺の住んでいた村よりは大きいけれど。

「ああ。そうだ。俺はこのまま村に行って、『勇者』様の話をしてくる。それでこちらから話しても大丈夫そうなら、そちらに行くので待っていてほしい」

「はい。了解です。じゃあ、俺は帰りますね」

 正直村の中に入りたい気持ちもあったけれど、敵対したいわけではないので大人しく戻ることにする。此処までの道順も覚えたし、この村の周りの変な感じに関しても解析出来たからいつでもこれるけれど。

 ただちゃんと許可を得てから入れるようにした方が穏便でいいから、バーナンドさんの言うように待っておこうと思っている。『勇者』であるネノに頼み事があるというのならば、そのうち宿に来るだろうし。別に急ぐことはない。

 その場合はお客さんとしておもてなしをしないと。

 ネノとメルにもお客さんがこれから来るかもしれないと告げて色々と準備をしないと。

 そんなことを思いながら宿へと戻った。

 戻ってからネノとメルに村の事を聞かれたけれど、まだ分からないとだけ言っておいた。

「これからお客さんになってくれるとは思うよ」

 何かネノではないと解決できないという望みを彼らが抱えているのならば、此処までくるだろう。そしてお客さんにもきっとなってくれるだろう。そう思うと、次にバーナンドさんがこの宿を訪れるのが楽しみに思えた。



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