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連れてこられた男 2

 目を覚ました男は、最初、此処が何処だか分からなかったようだ。

 きょろきょろとあたりを見渡した男は、俺達に視線を合わせて、驚いたように目を見開く。特にメルを見て怯えているようだ。メルは何をしたのだろうか……。

「……こ、此処は何処だ!! それにお前たちはなんだ!?」

 そんな風に声をあげて、彼は戸惑いを見せている。

 まぁ、戸惑うのも仕方がない事だとは思う。

「俺はレオニード。そしてこっちはネノフィラー。で、これがメルセデス」

「お、俺はバーナンド」

 名前を答えた男は、次の瞬間、はっとなったような表情になる。

「って、違う! そうではなく、此処はどこなんだ!?」

「此処は山頂。貴方は、山に住んでる?」

「山頂……? 山の頂にこんな建物があるわけがないだろう」

「ある。レオが出した。私たちの宿」

「はい?」

 意味が分からない様子だ。そしてそのまま外に出てきょろきょろとあたりを見渡す。俺達もその後をついていけば、「な、なんだと……!?」と驚きの声をあげている。

「どういうことだ!? 前に俺達が此処にやってきた時はこんなものなかったぞ!!」

「そりゃそうだよ!! レオ様が《時空魔法》で持ってきた家と宿だもん」

「は? 《時空魔法》?」

 山奥で住んでいるその男も魔法の事は把握しているのだろう。《時空魔法》がどれだけ希少かぐらいは分かっているのかもしれない。

「とりあえず中で話しません? 俺達もここに来たばかりなので、色々話を聞きたいのですけど」

 年上らしいバーナンドさんに、俺は敬語で話しかける。

 その人は戸惑いながら頷いて、中へと入った。色んな事が衝撃で深く何かを考えることさえもできないのかもしれない。

「このあたりに、貴方、住んでる?」

「あ、ああ。そうだが……。ところでその子供は、なんなのだ? その子供は自分の身体よりも大きな魔物を相手にしていて、気づいたら俺は意識を失っていて……」

 メルは魔物を相手にしている姿をバーナンドさんに見られて、その後、バーナンドさんは気絶をしてしまったようだ。

「メルはメル」

「ネノ、この人が聞きたいことはそうではないだろ。メルは今は人型を取っているけれどドラゴンですよ」

「……ドラゴン!?」

 メルの普通ではない様子をそもそも見た後なのだから、ごまかしても仕方がないと告げればバーナンドさんは驚いた顔を益々する。まぁ、人型になれるようなドラゴンなんて普通はそんなに遭遇しないだろうし。

「……まさか、貴方達もドラゴンか!?」

 そしてなぜか俺たちのこともドラゴンなのかと勘違いをして、言葉をかけてくる。何で俺達のこともドラゴンだと思ったのかは謎だ。

「私たちは、人間」

「メルとはただ昔からの仲で契約をしているだけです」

「……そうですか。ところでそんなドラゴンと人間二人が何でこんな山奥に? 此処は人が滅多に訪れない場所として有名なのに、そんな場所に突然宿を作っているなんて……。意味が分からない!!」

 意味が分からないと叫ばれてしまった。

「私たち、移動しながら宿をやってる。此処を、次の開店場所に決めただけ」

「そうです。俺たちの目標は色んな場所を宿をやりながら見て回ることだから」

 俺達が正直にそういう事を言っても、やっぱりバーナンドさんは言葉もないと言った様子である。

「私たち、火山に来たかった。火山で宿楽しそうだった。だからここに決めただけ」

「こんなところで宿をやっているなんて普通は思わないですよね? だからここでやろうって決めたんですよ。バーナンドさんは、恐らくこのあたりに住んでいるんですよね? 折角だからご飯食べません? 俺、ご飯作ってるんで」

 とりあえずバーナンドさんもお腹すいているだろうし、ご飯を食べないかと誘えば、バーナンドさんは頷いてくれるのだった。

 バーナンドさんは混乱して仕方がない様子だ。そんなバーナンドさんは俺の作った料理を口に含み、顔を破顔させた。

 さっきまで難しい顔をしていたから、こうして俺の料理で笑みを浮かべてくれると俺は嬉しいものだ。

 バーナンドさんが食事を取ると同時に俺達も食事を取る。

「レオ様、これ美味しいー!! 流石、レオ様だよねー」

「レオ、美味しい。流石、私の旦那様」

 メルとネノはそう言いながら微笑む。

「旦那? 夫婦なのか?」

「そう。私とレオ、夫婦」

 バーナンドさんの問いかけにネノはどや顔で告げる。俺と夫婦なのは自慢だという風にそんな表情を浮かべるネノが本当に可愛い。

「あれ、ちょっと待ってくれ。……その真っ白な髪と、黄金に煌めく瞳って……なんか、聞いた覚えが。確か、『勇者』様と同じ……。『勇者』様の名前はネノフィラー……って、『勇者』様!?」

 ネノの顔をまじまじと見据えて、バーナンドさんはそう言って叫んだ。椅子から立ち上がり、わなわなとネノを指さす。

「ネノ様は『勇者』だよ」

 メルがそう告げれば、バーナンドさんの絶叫がその場に響いたのだった。

 それにしてもやっぱり山奥でも『勇者』であるネノの噂は広まっているのだなと思った。




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