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火山の山頂で、開店 3

「ネノ、ただいま」

「ネノ様、ただいまー」

「おかえり」

 俺とメルが宿に戻った時、ネノはご飯を作ってくれていた。

 このあたりの山で取れた山菜とお肉の炒めものである。パンも焼いてくれていて、美味しそうな匂いが漂っている。ただ魔物が寄ってこないように、においは宿の外に漏れないようにしてある。そのため、宿の扉を開いた瞬間、美味しそうな匂いがただよってきて食欲がそそられた。

「わー、おいしそう。ネノ様、料理の準備、ありがとう!! 食べる!!」

「ネノ、ありがとう」

「ふふ。こうやって迎えるのなんか良い。働く旦那さん、お迎えしてるみたい」

 ネノは何だかこのシチュエーションが楽しいらしい。確かにな。俺とネノは一緒に働いているけれど、世の中には男の方が働いて、女性は家で出迎えたり――というのもあるらしいから。確かにそういうのもありだよな。何か仕事してきた帰りにネノが迎える――というのも良いなぁ。

 ご飯を食べながら、俺達は会話を交わす。

「ネノは何をしていた?」

「掃除とか、周りで何かよさげなもの探したり。あと、何を作りたいかとか。あまり今日は動いていない」

「掃除も大事だからな。いつお客さんがくるかも分からないし」

「来た時にちゃんともてなしたいもんな」

「うん」

 この山頂でお客さんと呼ばれる存在がやってくるかどうかは分からない。だけれども、もし来た時にはちゃんと迎えたい。それは俺もネノも同じ気持ちである。

「レオとメルは、どうだった?」

「見たことがない魔物も沢山いて、面白かったかな。まだ全部見れてはいないけど、もっと探索したら楽しそう」

「あとねー、なんか強そうな魔物がいそうな痕跡も見つけたんだ」

 ネノに聞かれて俺とメルは答える。

 まだまだ見た事がない景色がこの山には沢山広がっている。それをすべて見て回るのは時間がかかるだろう。でもこの山に滞在している間、見れるだけ見たいなと思う。

「強そうな魔物……やっぱりこういう火山だと面白い魔物、いる?」

「いるかもな。そういう貴重な魔物が見れたら楽しいよな」

 見た事がないような魔物が居たらきっと楽しいだろう。特定の街や村に留まっているのでは見られない魔物が見られたら――きっと楽しいことだろう。

「その魔物の正体探りたい!!」

 メルは特にその魔物の正体を知りたいという気持ちでいっぱいらしい。

 メルが気になるというのならば、探してみるか。ネノも言葉にはしていないけれど、その魔物がどんなものだろうと目を輝かせているし。



 食事を取り終えた後は、折角時間があるので俺は小屋を作ることにした。



 お肉や卵も自家製で採れるようにしておきたい。あとは野菜なども。まだまだ宿と自分の住まいしかないし、もっと色々エリア分けして作っていきたいんだよな。というか、全部自分で用意していて美味しいものを作る方が絶対に楽しいから。

 そんなわけで小さ目の小屋を作ることにする。この小屋はお試しで作るものだ。最終的にもっと大きな施設が必要になるかもしれないが、その場合も今建てている小屋は《時空魔法》でしまっておいて、何かに有効活動すればいいわけだしな。

 その辺に生えている木を伐採して、小屋をたてているから時々、魔物が驚いて出てくる。倒したり逃がしたりしながら作業を進めていった。

 ちなみにネノは何か小屋で育てられそうな生き物がいないか探しにいっている。食べられる卵を産み落とす魔物がいたら捕まえてくるって言っていた。

 メルは俺の手伝いをしながらも、宿を建てた周辺をうろうろして色々見て回っている。

 小屋が完成した。中はどんなふうにするか決めていないので、どうしようか考える。この小屋、何に使おうかな。

 そのことは一旦、ネノが帰ってきてから考えようと一段、《時空魔法》でしまっておいた。

 小屋作りという一仕事が終わったので、宿の中へと入って、飲み物を飲む。火山だというのもあり、此処は暑い。喉が渇くので、水分補給は大事だ。

 宿を初めてからはお客さんが結構やってきて、バタバタしていたからこうしてのんびりできるのもいい。

 俺は《時空魔法》の中にしまっていた本を取り出す。本はそこそこ高価なものだけど、興味があるものは商人から購入していた。まだ読み終えていない本だったので、読んでいて楽しかった。

 しばらく本を読んでいたら、急に外が騒がしくなった。

「レオ様、見て見てー!!」

 外から聞こえてきたメルの声に、俺はなんだろうと宿の外に出る。

「なんか人いたよ!! レオ様とネノ様、人来ないんじゃないかっていっていたけど、いたよ!! 連れてきた!!」

 何故か、メルは人を抱えていた。

 その抱えられているのは、メルよりも大きな男性で――、気絶していた。何をやっているんだメルは。

「……何やってるんだ、メル」

 俺の口から洩れたのは、そんな言葉だった。



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