火山の山頂で、開店 2
「レオ様!! あの魔物、面白くない?」
「そうだな。不思議な形しているな」
「あれって、食べれるのかな?」
「どうだろう? まぁ、世界にはああいうものも食べるところはあるらしいけど」
「んー、でも僕、虫系の魔物はあんまり好んで食べたくないかな」
俺とメルはそう言いながらとある魔物を見ている。その魔物は、蜘蛛のような姿をしているのだが、何故だか足ではなく背中を地面につけて動いていたり、よく分からない生物である。また虫系の魔物は、火山と言った場所には少ないはずだ。特に山頂部分は、火口の熱が出ていて、熱さに弱い虫系の魔物が此処にいることは少ないのだ。
実際に俺達が見ている中で、虫系の魔物はこの辺りで少ない。多分、こういう熱い所でも生きていけるような何か仕組みがあるのだろう。そういう仕組みを知れたら面白いだろうか。
虫系の魔物も美味しく食べれるように料理をしたら好む人は食べるだろうか。俺もあまり食べた事はなくてちょっと忌避感があるが、食べてみたら美味しかったりするかもしれない。うん、ちょっと試してみるか?
ちょっとネノと相談してそういう料理も作ってみるか。
それにしても色々魔物などをみてまわるのは楽しい。知らない魔物を見て、どの魔物を狩ろうかなどと考えながらただ見て回る。お客さんが来ないと退屈していたメルも俺と一緒に見て回るのが楽しいのかにこにこしている。
下手にメルのうっぷんがたまって爆発しても大変だからな。メルはドラゴンだし、暴れるなんてことになったら大変だしさ。此処で暴れて生態系壊されても困るし。
まぁ、何か理由があって大暴れするのはアリと言えばアリだけど。こういう場所で暴れて色々起こったら大変だし。
強大な魔物とか突然現れると、魔物が去って行ったりして人のいる場所を襲撃したりもあるし。メルもそういう強大な魔物一種でもあるからな。
「それにしてもこの山って僕が今まで行った場所とはまた違う魔物が多くいるね」
「そりゃあ場所が違えば色んな魔物がいるからな」
「それに人もだよね。僕、レオ様とメル様以外の人とはそこまで関わった事なかったけれど、あの街で色んな人に出会えたし。結構色んな人と会うのも楽しいよね。一番楽しいのはレオ様とネノ様だけど。……でもここだと人来ないのかなー?」
「まぁ、来ないかもしれないけれどそれはそれでいいんだよ。宿をもっと整えて行ったり、設備を追加したりすればいいわけだし。色んなものを追加していきたいからな」
正直宿屋を運営しているわけだからお客さんは来た方がいいが、別に来なければ来ないで問題はない。俺とネノは自給自足が出来ていて、特にお金が手に入らない期間があってもどうにでもなる。折角ネノと一緒に色んな場所を見に行って、色んな場所で宿を営もうと、そんな風に決めているんだから村や町といった人がいる場所にだけを拠点に考える必要は欠片もないのだ。
まだ山の上に宿を建てたばかりで、まだまだ此処で何をするかの目途は正確にたっているわけでもないし。まぁ、時間もあるし、のんびり考えて行こうと思った。
「そっかー。じゃあ、まぁ僕は宿の仕事無いなら自由にぶらぶらしようかな」
「仕事がない時ならいいぞ。全然。ただ迷わないようにな」
「うん」
「それに今の所、俺達は人を見かけていないけれど本当にこの場所に人がいないかは分からない。山全体を見ているわけでもないからな。そういう人知れない場所住んでいる人が居たら楽しそうだよな」
「絶対変人じゃない?」
「普通とは違う生活はしているだろうな。それかこの山に依頼をこなしにきた冒険者がいても楽しいんじゃないか? あとはそうだな。メルみたいに人の言葉が理解が出来る魔物だとそういうのを客にしてもいいな」
「そういう魔物、僕あまり知らないからなー。居たら確かに楽しいかも」
これだけ標高も高く、人があまり訪れない場所だと魔物も強い魔物はいるのではないか。俺やネノはメル以外のそういう魔物には遭遇したことはないから、そういう魔物に遭遇出来たらそれはそれで面白いかもしれない。
考えると何だかわくわくしてきた。
それからしばらくメルと一緒に宿の近場を見て回った。そこで見た事のない魔物を観察したり、狩ったりして楽しかった。
「そろそろ戻るか?」
「うん、お腹減ったし」
お腹がすいてきたので、宿へと戻ることにする。ネノに今日見たものについて話して、ネノからどんなふうに過ごしたか聞こう。何かネノの方でもこの山に対する新たな発見があったり、この山頂でどのように過ごしたいなどと意見があったらそれを聞きたいなと思う。
そんなことを考えながら宿へと戻っていたら、その道中で巨大な魔物の死骸を発見した。同じ魔物にやられたのだろうか、大部分がえぐられ、喰らわれている。
――この倒されている魔物も見るからに強そうなのに、その魔物を倒す存在がいる。その事実に、やはりこの場所には俺やメルが少し見て回っただけでは確認出来ないような強い魔物がいるのだと実感するのだった。




