火山の山頂で、開店 1
火山の山頂に辿り着いた。
火口があり、覗き込めばぐつぐつと煮えたぎるマグマが見えた。流石にここに落ちたら俺はひとたまりもないだろう。まぁ、魔法を使えばどうにでも出来るかもしれないが、俺達はただの人間だしな。でも死ぬときは寿命を終えて、ゆっくりと亡くなっていきたいかな。
「ねーねー、レオ様、ネノ様、お店何処にたてるの? というか、此処熱いね。こんなに熱いの僕初めてかも。飛び込んでみたら楽しいかな!!」
「メルなら飛び込んでも問題ないかもだが……怪我をする可能性も高いし、やめた方がいいんじゃないか?」
「うん。メルなら平気かもだけど、少しでも危険を感じるならやめた方が、いい」
メルならば火山の中に飛び込んでも大丈夫なのかもしれない。なんたってドラゴンだし。ドラゴンは結構山頂の熱い所にいるイメージもある。だけど実際のドラゴンが全て火口に飛び込んでも大丈夫かというのは分からない。
これでメルが怪我をしたらちょっと寝覚めが悪い。俺達より長く生きているとはいえ、メルはまだまだドラゴンの中でも子供だし、俺達が保護者みたいなものなのだからちゃんと見ておかないと。
「んー、じゃあ、飛び込めそうなら飛び込むけど無理そうならやめとく」
「そうしたほうがいい」
俺がそう言えばメルも頷いた。
メルは結構俺とネノの言葉は聞くんだよな。それは多分昔からの仲だからだろうけれど。
「レオ、これからどうする?」
「開店の準備のために、まずは足場を組む。この辺りはデコボコしているからな」
まずは宿や家を建てるために足場を組んだり、魔法で補強したりすることにする。ネノとメルと一緒にせっせとその作業を進めていたら、魔物が近づいてくる気配がした。それは熊の姿をした魔物である。俺やネノよりも巨大で、その爪は鋭い。
殺気立って俺達に向かってきたその魔物は、「邪魔!!」というメルの一言により吹き飛ばされていた。そのまま息の根を止められた魔物はさばいて料理に出すことにする。《時空魔法》でしまった後、どんな料理にしようか楽しみになった。
「ここら辺魔物多いのかもね」
「人が通らない所だからな」
人がいる場所だったら魔物達は狩られていく。だけど人気のない場所は、魔物達の領域である。ネノが『魔王』を倒したというのもあり、魔物の活性化は治まっているとはいえ、魔物もこの世界を生きている生き物である。
わざわざこんな所まで登ってくる人々というのも少ないので、此処は魔物が多いと言える。
魔法を使って宿を建てる場所を整えて、《時空魔法》の中から取り出した宿と家を並べる。魔物から襲撃を受けても大丈夫なように、これもまた魔法を使う。本当に魔法は便利だ。俺とネノが魔法を使えなければまたこうして宿をするのも難しかっただろう。
幼いころから練習を続けてきて本当に良かったとそんな風に思う。
もう建物はあるわけだし、店はすぐに開店できる。ただ流石に人の街が近くにもない山の頂なので、開店にしていてもお客さんが早々くるわけでもない。
客室などの掃除などはきちんと行っているが、今の所来る気配はない。
「レオ様、ネノ様、お客さん来ないね」
「こんな山の上だからな」
「このあたり、そもそも人がいない」
「じゃあ連れてこようか!!」
人がいないと口にしたらなぜかメルはそんなことを言い始める。俺達が頷けば今にでも何処からか人を攫ってきそうな感覚である。
本当にメルはドラゴンなだけあって、人と感覚が違う。メルからしてみれば、人というものはどうでもいい存在なのだ。俺達が居なければそもそもメルは人の世界に関わろうともしなかっただろうなと思った。
俺とネノがメルに関わったからメルは俺達に付いてきているだけで、多分俺達が居なければ自由気ままに人と関わらずに生きていたと思う。
「駄目だからな?」
「駄目だよ」
「えー。お客さん来た方がいいかと思ったのに」
メルはそんなことを言って剥れている。メルはどうやら退屈で仕方がないようだ。むすっとしていて、何か起こってほしいと思っているようである。
「よし、メル。お客さんもこないし俺と一緒に食材集めに行くか?」
「食材集め?」
「ああ。沢山魔物を狩って、美味しい料理にするんだ」
「楽しそう!! やる!!」
退屈して仕方がなかったらしいメルは、俺の言葉に大きな声で頷いた。ネノの方へ視線を向ければ、行ってきてもいいよとでもいう風に頷いてくれたので、俺はメルと一緒に食材集めに向かうことにする。
このあたりの探索もしなければならない。この山は、面積が広くまだまだ俺が知らない部分が沢山ある。登るときは周りをそれなりに見てはいたけれど、全てを見れたわけでもないし。
この山で知らないことはないというぐらい沢山の事を知れたらきっと楽しいだろう。そう考えるとわくわくした。
「なんだかレオ様、楽しそう?」
「楽しいからな。なぁ、メル。此処で全然知らない魔物を沢山知れたら楽しいだろう。俺達が知らない魔物がいないってぐらい」
「それ楽しそう!!」
メルも同意してくれたので、この山の魔物を調べていくことにした。




