火山への道中 3
食事を取り終えた後は、俺達は山頂へと向かうことにした。
一気に駆け上がることも出来るが、やはりこういう火山を登るのならばゆっくり景色を楽しみながら上に行こうと決める。
この火山は、特に整備されている道ではない。わざわざこんな過酷な場所を登ろうとするものはそんなにいないのだ。
丸い形をした魔物が十数匹うろうろしていた。赤い皮膚を持つその魔物は、炎を吹いていた。
「何あの魔物!!」
メルはそう言いながらその魔物に突撃していっていた。初めて見る魔物だというのに、好奇心旺盛なメルは、躊躇いもしない。いつかメルはこうやって突撃して痛い目に遭うのではないのでないかと心配にもなる。
というか、実際に魔物に突撃して魔物をつぶした瞬間、炎が溢れて「うわっ」とメルは驚いていた。メルは竜だからああいう炎にあたってもなんともないだろうが、あれは人が倒したら大変な目に遭いそうだ。事前情報がなければ炎に包まれて火傷してしまうことだろう。
「ねぇねぇ、レオ様、ネノ様!! あの魔物、面白いよ!! 倒した瞬間、炎がぶわって。おもしろーい!!」
メルはその魔物のことが面白いと思って仕方がないのか、次々にパンチしたり、キックしたり、押しつぶしたりし始めた。リズムを取るように次々とつぶしていく。メルは楽しそうである。
「メルは楽しそうだな」
「ん。楽しそう」
「なぁ、ネノ、ああいうのも食べれるのかな?」
「上手く処理したら食べれる、かも? でも処理の仕方、分からない。美味しいかも分からない」
俺は宿で出す料理の新メニューに使えるものが何かしらないかなと常に探している。このつぶれると炎が溢れる不思議な魔物も料理に出来たら楽しいのになと思った。というか、予想外の食材を使って料理を出したら食べた人も楽しくなるだろうなって思うし。
やっぱり折角火山に来ているのだから、火山ならではのものも欲しいよな。
「ねーねー、ネノ様、この草、面白いよ!! 口みたいなのあるんだけど!! 僕のこと、食べようとしているよ」
なんだかまたメルの楽しそうな声が聞こえてくる。
俺とネノがそちらに視線を向ければ、不思議な草がメルのことを捕えようとしていた。というか、あれは魔物何か、植物なのか。どちらなのかも怪しいものだと思う。だって口を開いて、食べようとしてくる存在だしなぁ……。でもああいう敵を食べる植物っていうのはいるからな。
メルは……何だか手を少し突っ込んでまた引っ込めるといった遊びをしていた。危ない、と口を開く前に、メルの手が捕まっていた。
「うわっ」
メルは驚いた声をあげて、魔法でその植物を塵に返した。
「びっくりしたー」
「メル、遊ぶからだよ」
「うん、ちょっと遊びすぎちゃった。でもここって見た事ないもの沢山でたのしー!! 僕が今までいた所と結構違う感じ!!」
メルも俺達よりは長生きしているとはいえ、竜の中では全然子供である。そして多くの場所に行った事があるわけでもない。こうやって無邪気に笑っているメルも――俺やネノが寿命を終えた後、立派な成竜になるのだろうか。
正直メルが知的な成竜になるというのは、全く想像が出来ない。
メルの頭に手をやって、「興奮するのはいいけれど、はしゃぎすぎるなよ」と言えば、「うん!!」と元気よく返事が返ってくる。
にこにこと笑ったメルは、そのまま大人しくなるかと思われたが――やっぱり初めて見るものが楽しくて仕方がないのか、無邪気に笑って、色んなものに手を出す。
俺やネノも食べれそうなものとかを、《時空魔法》でしまう。危険なものだろうとも、一旦しまってしまえば出さない限りは何の被害もないしな。食べれそうなものがあるかどうか調べておかないと。
でもまずは、拠点の場所を決めてからがいいだろう。
山頂のどのあたりに宿を建てるか、そしてどのくらいそこにいるか。そういうのを決めてから本格的にこの火山の探索を行いたい。
「ね、レオ。此処、景色いいね」
《時空魔法》に色んなものをしまったりしていれば、ネノにそんな風に言われる。その声に、麓の方に視線を向ける。青い空が広がり、先ほどまでいた麓はずっと小さくなっている。穏やかで、美しい景色が広がっている。
ネノと一緒にその景色を見られることが俺は嬉しかった。
やはり人づてに素晴らしい物を聞くのもいいけれど、自分でその景色を見るのは大切なことだと思う。
徐々に上に上がっていくにつれ、足場も悪くなっていく。崖のような場所も多く、それを登っていく。それにしても崖の上というのも景色が良い。この上だからこそ見れる物が沢山あって、こんな足場が悪い場所だからこそ、見つかるものもある。
メルは崖を少しずつ登るのが面倒なのか、小型の竜の姿になって翼をはためかせて上に上がっていた。
「わー、凄い良い景色!! こんなに高い山ってあまり登った事がなかったけれど、楽しいね!!」
メルは楽しそうな声をあげている。
俺とネノも、その言葉に同意するのだった。
そしてゆっくりと数日賭けて、山頂に辿り着いた。




