来訪者 2
少し訂正。
「ドラゴン様にそこまで言われるなんて……」
「というか、『勇者』様だけでもなく……夫の男も、ドラゴン様に様付をされている」
「……こ、これはテディ様にどう説明すれば……」
騎士達がメルの言葉にざわめている。どうしようといった困惑した雰囲気を醸し出している。
「第二王子に、旦那さんいるってちゃんと告げて。それでオッケー」
「いえ、しかし……それでテディ様が納得するかどうか」
「納得? 関係ない。私、レオしか好き違う。それに王様と約束した。無理やりは許されない。なら、私は靡くことはない」
ネノは少しだけ面倒そうに言った。
俺しか好きではないと、はっきり言ってくれるネノが俺は好きだと思う。そうやって俺に対しての思いをちゃんと伝えてくれるネノに心が温かくなる。
『もー、ネノ様はレオ様にしか興味ないって言ってるじゃんか! しつこい男が居たとしても僕が絶対に追い払うから!!』
「……メル、大丈夫。ちゃんと、王様と約束している。第二王子、勝手に好き勝手は不可。それに姉姫のセゴレーヌ様や他の人達も、味方。私の事、友達って。だから、平気」
『そうなの? ネノ様、流石』
「うん。レオと一緒いる。それを邪魔されないように」
ネノは淡々とメルに応えている。本当にネノが可愛い。
「レオ、帰ろう?」
「ああ」
「って、待ってください。『勇者』様! せ、せめてテディ様や他の方々が納得するようにしていただきたいのですが……」
「ん? それ、私の仕事じゃない。頑張って」
ネノはネノを求めている男たちが納得するように説明してほしいという懇願にそう答えた。というか、旦那が居るで納得しない連中ってなんなんだろう? と正直疑問に思う。
この世界で一番有名な女神様——ヒアネシア様は『勇者』を選別する女神である。そしてそのヒアネシア様は結婚というものを神聖視している。それもあって、結婚相手が居る相手と不倫をする事も忌避される。特に、ヒアネシア様を最も信仰しているこの国においてはそうである。
だから王侯貴族達も不倫は基本的にしないものが多い。隠れてしている者もいるという噂はあるが、ばれた時に神殿との関係が悪化してしまうので、基本的に色欲の多い者は妻として娶るものである。
王侯貴族は妻を何人も持っているものだ。しかし、王侯貴族と違って、庶民は一夫一妻制が普通であるし、そもそもネノにそういう気もないのだ。それとも結婚相手が居たとしても自分なら――などと考えているのだろうか。
「レオ、行こう」
「ああ」
ネノに手を引かれて、そのまま自分の家に戻った。後ろからはメルがついてきている。
ネノが強くいったからか、それ以上、騎士たちが俺達を引き留める事はなかった。
家へ戻ると、ネノが言った。
「レオ、ごめんね」
「何が?」
急にネノが謝罪の言葉を口にしてくるが俺には何の事を言っているのか分からない。
「あの人たち、私を追いかけてきたから。ちゃんと王様と約束して、お断りしたから、来ないかと思ったのに」
「仕方ないだろう。それだけ、ネノが魅力的なんだから」
ネノは騎士達が来てしまった事に対して謝罪をしていたらしい。
本当にネノは魅力的だ。
見た目もそうだけど、そのかわいらしさも、性格も。俺はずっと昔からネノという女の子に惹かれているから、誰よりもネノの魅力を知っていると思う。
ネノはとても可愛いから、ネノの事を好きだという異性が居ても仕方がないのだ。とはいえ、誰にも渡す気はないけれども。
「魅力的?」
「うん。ネノは、誰よりも可愛い」
「……うん」
誰よりも可愛い、そう口にしたらネノが頬を赤らめて頷く。本当に、可愛い。
「ネノが一番可愛いの、俺は誰よりも知っている。だから、誰がネノを求めても絶対にネノを誰かに渡したりなんかしない」
「うん……、私もずっと、レオのものがいい。レオがいやだって言ってもずっと一緒がいい」
「嫌っていうわけないだろ? 俺だってネノが嫌って言ってもずっと一緒がいいし」
「ふふ……嫌なわけない。私、レオ大好き、ずっと一緒」
可愛すぎて、抱きしめてキスをした。
家の中だから気にもせず、深く口づけする。そしたらネノは可愛い声を出している。こういうネノを知っているのも俺だけ。
『あああああ。もう! おっぱじめちゃってるし! 僕、まだ成体じゃないんだって。子供なんだって、そんなの見せないでよー!! もう部屋でやってよ、部屋で。母様が言ってたよ、こういう時は空気を読んで二人っきりにさせるものって。もう二人っきりでやってよ。僕いるからね!?』
メルが居るの忘れていた。
ネノもメルが居たの忘れていたみたいで、あ、という顔をしている。
「ネノ、部屋行く?」
「……うん」
ネノが可愛く頷いてくれたので、寝室に行ってネノを美味しくいただいた。
翌日、メルが『……ネノ様とレオ様は仲良いね』と呆れた目を向けてきた。聞いていたのか? それともドラゴンだから聴力がいいのだろうか。まぁ、いいや。
あと村の連中に聞いたらまだ騎士達は村に居るらしい。