祭り 7
「『勇者』様と旦那さんと一緒に祭り見れるの! やったー」
俺とネノが助けた男の子は、親とはぐれているというのに俺とネノと一緒に祭りを見れるからとはしゃいでいた様子だった。
男の子――イマを真ん中にして三人で手を繋ぐ。なんだかこうしていると、親子みたいだななどと妄想をしてしまった。
あまり小さな子供の相手をしたことがない俺は、子供とちゃんと接することが出来るだろうかと少しの不安を抱えていたわけだが、それは杞憂だった。ネノは子供に対してもいつも通りである。
ネノも無表情に見えるけれど、何処か楽しそうだ。
三人で手を繋いでいると、「『勇者』様、その子供はどうしたのですか?」などと問いかけられることも多かった。まぁ、俺の家にいる子供なんて、人型のメルぐらいだし、『勇者』であるネノに子供がいないことは知られている。だからこそ、疑問に思った人はどんどん声をかけてきたりする。
「イマ、何か食べるか?」
「んー、と、あれがいい!!」
イマは年の割には落ち着いていて、我儘をあまり言わない子供だった。子供特有の無邪気さはあるものの、一緒に居て苦のない子供である。
イマが食べたいといったものを屋台で購入し、イマに渡す。それは焼いたものである。俺とネノも食べたけれど、結構おいしかった。
やっぱりお祭りというのは、色んな食べ物と出会えて、見た事がないものを沢山見る事が出来て楽しいと改めて思う。
ネノと一緒に回っているからこそ、他の誰かと回るよりも特別にも感じられる。
俺とネノは、イマの両親を探していることを周りに触れ回りながら祭りを楽しんでいた。イマも両親とはぐれてしまったと泣くこともなく、楽しそうにしていた。
しばらくイマを間に挟んでぶらぶらしていたら、イマの両親を名乗る二人が顔を出した。イマはその二人の顔を見た途端、顔を破顔させた。
「お母さん、お父さん!!」
そう叫んで、母親の方に抱き着く。
俺とネノが傍に居て、楽しく過ごしていたとはいえ、やはり両親とはぐれていたら心細かったのだろう。
「イマ、良かった。貴方がはぐれて心配していたのよ」
「『勇者』様、ありがとうございます」
イマの両親は、そんな風にお礼を言ってさっていった。イマは祭りの間はこの街にはいるらしく、「『勇者』様の所に食べにいきたい」と親にごねている声が聞こえてきた。なので、また会うことになるかもしれないなと思った。
イマの両親を探し終えた後は、ネノと一緒にまた祭りを見て回る。
「ねぇ、レオ」
「どうした、ネノ」
「子供って、いいね」
ネノはイマと離れた後、そんなことを口にして俺を見た。
「ああ。そうだな。さっきさ、イマと一緒に居た時、ネノとの子供がいたらこんな感じかなと思った」
「うん、私も」
俺の言葉に、ネノも同じことを考えていたと頷く。
もしネノとの間に子供がいたら、こんな風に日々を過ごすのだろうか。きっとネノに似て男でも女でも可愛いのだろうななどと、そこまで俺はイマと手を繋いでいて考えていたのである。
「私、レオとの子供欲しい」
「うん。俺もネノとの子供欲しい」
手を繋いで歩きながら俺とネノはそんな会話を交わす。
「きっと、レオの子供なら、女でも男でも可愛い」
「俺も同じこと思ってた。ネノの子供なら――って」
「好きな人の子供なら、どんな子でも可愛がれるもの。私、レオ大好き」
やっぱり俺のお嫁さん、可愛すぎない?
可愛い事を言い始めたネノに口づけをしたくなって、少し人気がない所までネノを連れ込む。口づけだけだけどな。ついでにいえば結構ぶらぶらしていたので、少し休みたくもなったし。
大通りから外れた公園は、人気が少ない。人がいないわけではないけれど、そこのベンチに座って、俺はネノに口づけをした。
そうすれば、ネノは嬉しそうに笑って、やっぱりネノは俺にとっては世界で一番可愛い女の子だなと思った。
「今度、また祭り行く時、子供も一緒だといいな」
「ああ。そうだな。子供は授かりものだけど、出来たら嬉しいな」
「そのため、頑張る。今日も、レオといちゃいちゃする!」
ネノと何気ない会話を交わしているだけでも、俺は益々ネノに惹かれていく。ネノに対する飽きは感じることはないだろう。ずっと一緒にいると、悪い所ばかり見えてしまうという恋人同士もいるらしいけど、俺はネノのどんな部分も好きだと思う。いや、好きだからこそ、どんなことでも許せてしまうというべきか。
近づいたからこそ分かるネノは、俺だけが知っているネノなのだ。
そういう部分を知れることが嬉しいし、ネノの事を日に日に愛しく感じていく。
ネノが俺のお嫁さんとして傍にいてくれることが幸せだし、いつか――ネノとの間に子供が出来たらもっと幸せな気持ちを、ネノは俺に与えてくれるんだろうなと思った。




