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祭り 6

 ネノと一緒に宿の外に出る。

 二人で外に出ると何だかそれだけで楽しい気持ちになる。というか、ネノがいてくれただけで俺は幸せなんだけれど。

 二人で恋人つなぎをして歩く。

 まだ日は高く、明るい中だと祭りの飾りなども目立たないけれど、それでも試行錯誤で彩られている飾りなどは見ているだけでも祭りって感じで楽しい。

 ネノが嬉しそうに俺の隣を歩いているからというのもあるだろう。『勇者』であるネノが此処に居るということでちらちらとこちらを見ている人たちがいる。こうして注目を浴びているのは流石、俺のネノだなと思う。

「レオ、何見る?」

「ネノは何がいい?」

「レオと一緒なら、何処でも」

 ネノはそんな可愛い事を言う。本当の俺のお嫁さんは可愛いなって毎日のように思ってしまう。

 そうして歩きながら、広場の方で踊っている一団を見かけたのでネノを誘って見ることにする。どうやら海の神様への奉納の舞として踊っているらしい。洗練された動きが揃っていて、皆が皆楽しそうでいいなぁと思う。踊っている中で見たことがある顔もいた。俺たちの宿に来たことがある顔も見かけた。

 皆頑張っているんだなと思うと、いいなぁと思った。

「ネノ、凄いな踊り」

「うん。でも見とれちゃ駄目」

「見とれないよ。俺が見とれるのはネノだけ」

「ふふ。嬉しい。レオが喜んでくれるのなら、私も踊る」

「ネノが踊ってくれるの?」

「うん。もちろん、二人の時。レオ、楽しませる」

 ネノはどうやら俺の前で踊ってくれるらしいので楽しみにしておくことにする。ネノは俺がやってほしいと言えば結構色々やってくれたりするし、ネノが俺のことを愛してくれているんだなと実感して何だか嬉しくなる。

「ネノ、なんか食べるか?」

「うん」

踊りが終わったあとは、ネノと一緒にぶらぶらと歩く。まだ昼食を俺達は食べていないので何か美味しそうなものがあったら食べてみようと思う。

 自分でも料理をするから美味しいものが食べれれば、今後の宿屋で提供する料理のために良い影響が与えられるしな。

「あれ、食べよう」

「うん」

 ネノの言葉に俺は頷いて、二人で魚の串焼きを食べることにする。美味しそうだ。あと小麦粉の生地を巻いて焼いたものとかも食べた。中に卵や魚が入っていてとても美味しい。

「ネノ、これ美味しい」

「うん。こっちも」

 それぞれ味が違うものを頼んだので、互いに美味しいと言いながら食べる。ネノが食べかけのものを俺の口元に差し出す。

「食べる?」

「ああ」

 ネノからあーんをしてもらったものを食べる。美味しい。代わりにネノにも俺の食べかけのものを差し出せば、ネノはぱくりと食べた。

「美味しい」

 嬉しそうに笑うネノを見ると、可愛いなぁってまた思う。周りで一人でいる男たちが「うらやましい」とか「チッ」とか言っているのが聞こえてくる。俺が可愛いネノとイチャイチャしているのが気に食わないらしい。

 うらやましいだろって気持ちになった。

「……レオ、あれ」

 食べ歩きをしながらぶらぶらしていると、ネノが俺に声をかけてくる。どうしたのだろうかと思いながらそちらを見れば、小さな男の子に何かを進めている男たちを発見した。

 ……まさか、メルにお酒飲ませた連中だろうか? 真昼間から子供にお酒を飲ませて何をしようとしているんだか。しかも子供は無邪気にそれを飲もうとしているし。

 念のため声をかけることにする。俺もネノもそういうの嫌なので、阻止することにする。

「何をしている」

「なんだ? って、『勇者』とその夫!?」

 そう言いながら、こちらを見る男たちは何だか顔色が悪くなる。やっぱやましいことやろうとしていた? と思っていたら男の子は「『勇者』様だー!!」とネノを前に大興奮である。

「ちょっと、それ借りる」

「これ? うん」

 男の子が持っていた飲み物をネノが受け取り、ぺろりと舐める。

「ん、アルコール」

「やっぱりか」

 ネノの言葉に俺は男たちを見る。男たちは逃げようとしていたので、俺はさっと彼らを拘束しておいた。

 不思議そうな顔をしている男の子のことは、ネノが相手している。

「あの人、悪い事しようとしてた」

「『勇者』様が助けてくれたのー。わーい」

 などと嬉しそうな顔をしながら、男の子はネノに懐いている。俺達が揃って何かをして男たちを拘束しているから、注目を浴びている。

「で、何しようとしていたわけ? メルにも何かしようとしていただろ?」

「ええと……その」

「いいからはけ」

 俺はそう言って男を軽く蹴り着ければ、男たちは自白し始めた。

「……えっと、俺達は可愛い男の子が好きです」

 おおう……変な趣向を持っているらしい。で、好きだからって何で酒飲ませようとするのか。

「へ、変なことしようは思っていないけど、酒によった可愛い男の子と仲よくしたいと」

「いや、アウトだろ」

 流石に小さな男の子にそういうことをしようとは思っていなかったらしいが、酒を飲ませようとするあたりアウトである。酒を飲んで素をさらした男の子と仲よくしたかったらしいが。

 というか何でメルはこんな分かりやすく怪しい連中から酒を受け取って飲んだのか……。



 とりあえずこの連中は警備に突き出して、男の子の親を探すことにした。




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