祭り 3
「レオニードさん、注文です」
「こっちは――」
夕食の時間帯、『レアノシア』にやってくるお客さんは絶えることがなかった。
お祭りだというのもあり、外からも多くの人々が訪れている。俺たちの宿は部屋数が少ないから、泊っているお客さんは少ないけれど、ここの噂は出回っているのか沢山の人が訪れた。
メルも戻ってきていないし、本当に祭りのために人を雇っていて良かったと実感する。それにしても俺の作った料理を美味しい美味しいと食べてくれることは嬉しい。その笑顔を見るだけで、俺の心は満たされる気持ちになる。
ただ祭りで人が多く訪れているからだからだろうか、マナーが悪い客も中にはいた。
俺とネノとメルはともかく、雇っているヒアーたちは、普通の街の人である。少し荒っぽい見た目の男に声をかけられて体を震わせていた。中には無理やり遊びに出かけようとしているものもいて、見かねてネノが間に入っていた。
……というか、あの男、ネノまで誘っているというか、ネノに下卑た笑みを浮かべている。ネノがばっさりあしらっていた。流石に『勇者』であるネノに実力行使はしようとはしていなかったが、そういうのがこられると対応は出来るが、困るなとは思う。
そんなことを思っていたら、外で喧噪が起きていた。俺は一旦作る手を止めて、「外見てくる」とネノに行って外に出た。
「了解。その間、私、作る」
と一旦、ネノが厨房に入ってくれた。
外に出れば――、なんか喧嘩をしている冒険者風の男たちがいた。
外の列の整理をキドエードに頼んでいたのだが、キドエードはその間でおろおろしている。というか、他のお客さんたちが困っているから、はやく止めないと。
「何をやってるんですか」
近づいてそう言えば、言い争いをしていた冒険者がこちらを見る。
「なんだ、てめぇ!!」
「こいつが、割り込んできたんだ!!」
「そうですか。えーと、キドニード、実際どうだったんだ?」
そう問いかければ、キドニードがちゃんと説明をしてくれた。
キドニードが言うには、「割り込んできたんだ」と主張した男の方が割り込んでいたらしい。で、怒っている方は割り込まれて怒っていたようだ。
それにしてもわざわざ嘘を言うとか……あれかな、俺が嘘を信じると思ったのか。周りに口止めをしていいと思ったのか……。あとはそうだな、やっぱりメルが外で列の対応をしてくれた方がいいな。メルなら見た目でなめられたとしてもこういう馬鹿はどうにでも出来るし。
嘘をばらされた男は今にもキドニードに殴りかかろうとしているし、俺は素早くそちらにいって、とりあえず男の首元に手を当てる。
「いっ……」
いつの間に、とでもいう風に男が青ざめる。
「今すぐ去るなら見逃すけど、どうする?」
――お前なんてどうにでも出来るという気持ちを込めて、そう告げる。
そうすれば男は青ざめて逃げるように去っていった。
「あ、ありがとうございます。レオニードさん」
「大丈夫です。引き続きよろしくお願いします」
俺はそういって店の中に戻った。
全然メルが戻ってこないから、夕食の時間が終わったら探しにいかないとなと改めて思った。
そんなこんな、些細な問題はおこったが、夕食の時間帯は終わった。
「メル、帰ってこないな」
「うん」
「俺がちょっと探しに行ってくるから、頼んでいいか?」
「うん。いってらっしゃい」
ネノとそのような会話をして、俺は探しに夜の街へと向かった。
夜の時間帯でも、祭りがおこなわれているからか、街はにぎやかだ。通常だと夜の時間帯は店は閉まっているが、これだけ明るくてそれはそれで楽しいなと思う。
それにしても、メルは何処に向かったのだろうか。
はじめての祭りではしゃいでいたりするのだろうか……などと考えて、色んな場所を歩く。だけど、メルが何処にいるか分からなかった。迷子ってことでギルドマスターとかに協力をおがむか? と思い始めた頃、急に海の方で大きな音がした。
それと同時に「ドラゴンだーー」という声とか悲鳴が響いている。……メルか? と、俺は海の方へ向かった。それにしてもメルだとしたらこんな街の近くで何をやっているんだか。
近づけば、海で何かが動いてバシャバシャと音がし、水しぶきが飛んでいる。うわ、めちゃくちゃ水飛ばしてるし。
鳴き声もあげているし、夜に鳴いていると絶対近所迷惑なんだが。
海ではメルが竜体に戻ってはしゃいでいた。
美しい巨大なドラゴンが、海に浸っている。その周りを、街の人々が興味深そうに見ていたり、怯えていたり、中々混乱した状況である。
俺はメルに近づいていき、声をかける。
「おい、メル、何をしている」
『レオさまぁー? あははははは、楽しいよー』
……メルの思念を聞いて、確信した。
メルの奴、お酒を飲んでやがる。誰だ、メルに酒を飲ませたのは。




