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祭り 2

「おかえり、レオ。はやかったね」

「ただいま、ネノ。思ったより売り上げが良かったんだ」

 ネノがおかえりと、俺の体に抱き着く。可愛い。俺が思ったよりはやく帰ってきて嬉しかったみたいで、少しだけ顔をほころばせている。

 俺が屋台で海鮮焼きそばを売っている間、ネノは昼食の時間帯をきっちり乗り切ったようだ。

「私、頑張った。料理、嫌いじゃないけど、あれだけ忙しく作るの大変。レオ、やっぱり凄い」

「頑張ったな、ネノ」

「うん。頑張った。……レオ、疲れたでしょ、料理、作る」

 ネノが俺にそう言ってくれて、昼食を作ってくれる。ネノの作ってくれた料理はお肉と野菜を炒めたものだった。美味しい。ネノが作ってくれたのだと思うとより一層美味しく感じられるものだ。

「ネノ、美味しいよ」

「ありがとう」

 昼食を食べ終えた後、ネノに屋台の話を振る。

「今日思ったより屋台が売れたからどうしようか? 前倒しで翌日の分を使うか? それとも夕方から売るとか変えるとか」

「どっちでも、よし」

 ネノはそう言って、続ける。

「レオがしたいようにして、良い。私はどっちでも楽しめる、思うから」

 ネノの言葉に確かになと思う。前倒しにしても、屋台を開ける時間を変えても、どっちにしろ楽しめる。ネノと一緒にやっていることだからこそ、何よりも楽しいという気持ちになれるんだ。

 ネノも同じ気持ちでいてくれることが嬉しい。

 でもそうだな、下手に今日と開ける時間を変えたら今日買うことが出来ずに明日買おうと思ってくれているお客さんが困るかもしれない。そう考えると同じ時間で一定の方がいいかな。

「じゃあ、明日も同じ時間に売ろうか」

「うん」

「まぁ、今日は上手く売れたけれど、明日はどのくらい売れるかわからないしな」

「大丈夫。レオの考えたの、凄く美味しい。売れないわけない」

「そうだといいな」

 ネノはいつも嬉しいことを言ってくれる。それにそれが本心だと分かるからこそ、余計に心が温かくなる。ネノは嘘は吐かない。こういう時にはちゃんと自分の気持ちを口にする。

 幼い頃、ネノについて回る俺にもネノははっきり言っていたっけ。幼い頃のネノは俺に特別な感情も一切なかったから、本当に冷たかったなと思う。

 昔のネノを思い出すと、今、ネノが俺のことを好きでいてくれているのは奇跡のように感じる。

「明日はネノが屋台行く?」

「うん。私が、売る」

「ネノが売って居たら余計に売れそうだな」

 なんたって『勇者』だし、ネノは俺にとって世界で一番可愛い存在だし。ネノがいれば皆、買いに来るだろう。というか、ネノの手料理ってだけでお金だす価値あるだろうし。

「今日はこの後どうする?」

「宿でのんびりする。明日は見て回りたい」

「そうだな。明日は今日よりももっとはやく売れそうだし」

「明日、メルや雇った子たちに店番頼む?」

「ああ。そうだな。少し手当も多くすれば問題ないだろう」

「うん。そうだね」

 今日は雇っている人たちはこの時間には自由時間にしてもらっている。ヒアーも宿に戻ってから自由時間にしたし。

 急に此処にいてもらうことにしてもアレだしな。明日はこの時間に此処にいてもらうように言っておこうかな。

 ちなみにメルは昼食の時間帯が終わったあとは、祭りに出かけたらしい。ネノが出かけていいよと言ったら「行く!!」と喜んで飛び出していったようだ。

 ある程度、お金の扱いは教えたし、大丈夫だとは思うけど……何か起こさないかだけ少し心配だ。

「ネノは何を見たい?」

「何でも。どれでもきっとレオとなら楽しい。あ、美味しい物は食べたい」

「そうだな。沢山美味しいものあるだろうから、美味しいもの食べたいよな」

「うん」

 祭りって色んな楽しみ方が出来ると思うのだ。美味しいものを食べられるのもそうだし、見たこともないような光景を見られるかもしれないのもそうだし。

 ただ宿の中で、祭りの賑わいを感じられるだけでもそれだけでも楽しい。

 俺とネノ、一人ずつならば今日でも見て回れるけど、出来たらネノと二人で回りたいしな。だから、明日楽しむ。

「メル、色々買うって」

「無駄遣いしなきゃいいけど」

 なんだかはしゃいだメルが色々買い込む様子が目に浮かぶ。メルは結構こういう時はしゃぎそうだからな。

 まぁ、メルが面白そうなものを見つけてくれたら明日そこも見よう。

 そんな風に考えながら、俺とネノは夕食の時間帯になるまで、明日祭りで出かけるためにも色々準備をしたり、のんびり過ごした。

 夕食の時間帯に、ヒアーたちは戻ってきていたけど予想外にメルが戻ってこない。何処で何をしているんだか……。人の姿のメルは愛らしい少年だし、変な人についていってたりしないといいけど。

「メル、帰って来ない」

「楽しくて遊んでいるのか、誰かについていっているのか……」

「戻って来なかったら、探し行く」

「ああ、そうだな」

 一先ず、夕食の時間帯を乗り切らなければならない。そういうわけでメルのことは戻って来なかったらその後に探しに行くことにした。



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