祭り準備 6
ヒアーとウリアとキドエードも接客に大分慣れてきたと言えるだろう。今の所、お客さんからの評判もよく、問題も一切起こっていない。最も『勇者』のやる宿で望んで問題を起こそうとする人がいないからということも一つの要因であろう。
下手に何かやらかせば、ネノや俺、メルに追い出されるだけだと分かっているからだろう。
新しく出来たお店が好調だったりすると、治安の悪い場所だとつぶしにかかられたりするからな。
「レオ、海鮮焼きそば出来そう?」
「ああ。今の所、順調だ」
折角屋台という形で出すのならば、お客さんが喜ぶようなものを作りたいと試行錯誤している。大まかな材料などは決めている。だけどもっと良いものにするためには? と俺は考える。
それで今はソースづくりをしている。オイスターソースを作ろうと、牡蠣型の魔物も倒したからそれを使って作ろうと思っている。狂暴な牡蠣型の魔物ほど、美味しい傾向にあるように見える。まぁ、例外はあるけど。というわけでそれを使って、焼きそばにオイスターソースを絡めるのはきっとおいしいだろう。というか、想像しただけでも美味しそうって思いにいっぱいになる。
此処は海が身近にある街だからこそ、シーフードを多く手に入れる事が出来る。具材になる海鮮類の処理も一つ一つ進めている。殻を剥いたりという下処理だ。
《時空魔法》を使えば新鮮な状態のまま保存も出来るし、《時空魔法》を学んでいて良かったとこういう時は思う。
とりあえずある程度の準備が出来たので、試作品を作ってみることにした。そして、ネノたちに是非食べてもらおう。自分で味見をしながら少しずつ分量を変えていったりしながら味を変えていく。
例えばオイスターソースに使う牡蠣の魔物の種類を変えたり、混ぜる調味料の種類や分量を変えたり、焼きそばに使う麺を変えてみたり、お肉の種類を変えたり、味付けを変えたり、海鮮類の種類を変えて見たり――とそれぞれ変えてみる。人によって好みの味というものが違うだろうけれど、屋台に出すならば万人受けするようなものが良いだろうし。どれも美味しく感じるけれど、俺の好みはこれかなーとか思いながら色々作った。
「レオ様、レオ様、それ美味しそう。僕も試食していい??」
試食品を沢山作っていたら、メルが涎を垂らしながら寄ってきた。その美味しそうな匂いに気づいて寄ってきたようだ。
「ああ。でもちょっと待て。ネノたちを呼んでからな。食べてもらうから」
「はーい! 呼んでくる!」
元気よく返事をして、ネノたちを呼びに向かった。メルははやく食べたいようで、凄い勢いで駆けて行った。そしたらこけているのを見た。慌てるから……と思いながらメルの背中を見送った。ちなみにメルはドラゴンなのもあって、このくらいでは怪我も特にしないのだ。
メルがネノたちを呼んできている間に、試食してもらうための準備を行った。
そうしている間に、ネノとウリアをメルは呼んできた。他の二人は今は休憩時間というのもあって、此処にいないようだ。まぁ、あとで出そう。
「美味しそう。流石レオだね」
「レオニードさん、本当に作るの上手ですね」
ネノとウリアがやってきて、並んでいる海鮮焼きそばを見てそういう。
俺が促せば、メルも含めた三人は海鮮焼きそばを食べ始めた。
「美味しい。一つ一つ、ちょっと味違う」
「ああ。どれがいいかちゃんと研究してから出したいから」
「ふふ、そういうの徹底するの、レオ、流石だね」
「こういうのはちゃんとやる方が楽しいからな」
「だね」
ネノと一緒に笑って、そんな会話をする。
ネノと一緒にこんな風に笑いあえる日々が楽しいなと思う。
「レオニードさん、私はこれが好きです!!」
「ウリアはそれが好きなの? 私はこっち」
「んー、俺はこっちなんだけど」
「僕はこっち!!」
それぞれ好みが違うようだ。どれが一番良いだろうか。うーん、悩みどころだ。どれも美味しいとは思うのだが。
「ばらけるか。他の二人にも食べてもらってから考えようか」
「そうだね。でもどれも美味しけど、ちゃんと徹底したい」
「だな」
ひとまず、どれが好みであるかとか、もう少し甘い方がいいとか、色んな意見を三人からもらった。
メルやネノも意見を率直に言う方だから、そういう意見はとても助かる。そういう意見をもらえるからこそ、改善していけるからな。
「レオ、今度、海鮮焼きそば作る時、私も手伝う」
「ああ。そうだな。ネノの意見ももらえたら良いものが出来そうだし」
「うん。私、頑張る。美味しいものをレオと一緒に作る」
ネノはそうして小さく笑った。
試食品は出来たが、まだまだ美味しい海鮮焼きそばを作りたいという気持ちは強い。だから、ネノと一緒にもっと美味しい物を作る。




