祭り準備 5
ヒアーとウリアとキドエードが接客のために宿の食堂にいる。
彼ら三人のための制服は俺とネノで作って準備した。ヒアーとウリアも中々似合っているけれど、やはりネノが一番可愛くて、ネノが一番似合っていると思う。そう思うのは、俺がネノに惚れているからに他ならないだろう。
好きな女の子が一番可愛く見えるのは当然であるのだ。
三人が揃って給仕に入る日もあれば、一人だけ給仕に入る日もある。三人とも接客業務の経験があるらしくて、接客を上手くやっている。
「新しく給仕を雇ったんだね。皆、制服似合ってるね、皆」
「此処の制服、可愛いね。私もアルバイトしてみたいなー」
昼食を食べに来ていた常連さんの親子がそんなことを言っていた。俺たちの作った給仕服は好評だというのは嬉しいものだ。
「祭りのため……他に募集、してない」
「そうなのー? 私こういう可愛いの着たい!!」
「ネノフィラー様、もしこういう可愛いの依頼したら作ってもらえたりする?」
「ん、時間あって、お金ちゃんと払うなら、いいよ」
なんか昼食を作っていたらそんな会話が聞こえてきた。まぁ、ちゃんとお金を払ってくれるなら作る分には問題ない。
ネノも衣服作り気に入っているみたいだし、ちゃんと宿の経営をちゃんとしながらなら衣服作りも問題ないだろう。
っていうか、ネノの衣服ももっと色々作ってもいいな。ネノは可愛いし、色んな服が似合うだろうし。もちろん、買いにいってもいいんだけど。
ネノの言葉に女の子は喜びの声をあげていた。他の客もその会話を聞いてちらちらネノの方を見ていたので、衣服に興味があるのかもしれない。衣服作りの窓口でも今度作っておこうかと考えた。
まぁ、ひとまず昼食の時間が終わってからだけど。
嬉しいことに、いまも昼食の時間帯は多くの人が訪れてくれている。俺はせっせと注文された食事を作っていった。今日は三人も給仕が増えているので、いつもより客にはやく食事を提供することが出来てよかった。
従業員を増やすと色々やりやすいなとは実感する。まぁ、色んな場所にネノとメルと行く予定だから、ずっとここで働く従業員というのは雇う気はないけれど。今回の祭りのような状況では人を雇うのもありだろう。折角色んな場所にネノと共に行くのならば、色んな所に出かけたいし。
「臨時の従業員、よく、働いてくれてる」
「そうだな、ネノ」
「うん。良いこと」
ネノは臨時の従業員がよく働いてくれていることに嬉しそうな顔を浮かべていた。ギルドマスターが選別して連れてきた臨時の従業員だというのもあって本当によく働いてくれている。変な人や問題を起こすような人だと困ったから良かった。
昼食の時間帯が終わって、臨時の従業員たちにもまかないとして食事を振るまった。
「おいしいです! レオニードさん、料理上手ですね。これだけ料理が上手だからネノフィラー様の胃袋を掴めたんですか?」
「レオは、胃袋だけじゃなく、私の心、全部掴んでる」
ヒアーが無邪気に口にした言葉に、ネノがそんな嬉しい事を言っている。可愛いな、俺のネノって思うと口元が緩みそうになる。
「べた惚れですね。いいなぁ。私もそういう未来の旦那様に出会いたいです」
ヒアーは素敵な結婚を夢見ているらしく、いいなぁという目で俺とネノをみながらバクバクと食事を取っている。
「メルセデス君は本当に可愛いですね」
「む、僕を可愛いって言わないで! 僕はかっこよくなるんだよ、ウリア!」
ウリアはメルの見た目を気に入っているのか、笑みを浮かべながらメルと話している。ちなみにメルはウリアに返事をしながらも俺の作ったまかないをどんどん口の中に入れていた。
「レオニード様、給与だけではなく美味しいまかないまで此処は良い職場です」
キドエードは黙々とまかないを食べていたのだが、よっぽど俺の食事を気に入ってくれたのかキラキラした目で俺を見てそういう。気に入ってくれたなら良かった。まかないとして簡単に作ったものでも、美味しいって言われるのは嬉しいものだ。
「私のレオは、料理上手!」
ネノはキドエードが俺の料理を褒めたことに、自分のことのようにどや顔をして自慢していた。可愛くて、今すぐでも抱きしめて口づけしたい気分になる。流石に臨時の従業員いる中ではやらないけど。皆かえったらネノのこと抱きしめようと思う。
「ああ、そうだ。屋台で出す海鮮焼きそばも今度試食してほしいんだが」
「いいんですか! 是非!」
俺の言葉にキドエードはものすごい勢いで食いついてきた。
美味しい海鮮焼きそばを作らないとな。お客さんが多く来るようにしたいし。
「レオ、屋台の衣装どうする?」
「そうだな。目立つようにまた作るか」
「どうするか、決めないと」
屋台は俺とネノが交互で焼きそばづくりする予定なので、屋台に相応しい服を用意しよう。違う衣服にしたほうがきっと目立つだろうし。どうしようかな。ネノには何でも似合うだろうけど……と俺はネノを見つめて悩むのであった。




