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王子と騎士 3

「明日ならば宿の部屋も空いているかもしれぬのだな?」

「ああ。ただどれだけチェックアウトするかも分からないし、何時頃空いているかも分からないから朝から並んでもらうことになるぞ」

 テディはどうしても『レアノシア』に泊りたいらしく、明日には空いているだろうかとわくわくした様子だ。

 それにしてもテディは王族という立場なのに、表情が豊かだ。

 王侯貴族ってもっと自分の感情とか表に出さないってイメージを勝手に持っていたが、これだけ表情豊かで自由気ままなのはテディだからだろうか。

 テディは俺の言葉に「王族の俺が並ばなければならないのか!?」などと声をあげれば、ドゥラさんに「何を権力を振りかざそうとしているんですか!! 本当に馬鹿ですね。テディは。『レアノシア』に泊りたいというのならば朝一から並ぶしかないでしょう」と怒られて、「……うむ、仕方がないか」と素直に頷いていた。

 此処で無理やり権力を行使したりせずに素直に頷くところはテディの良い所であると言えるだろう。少し考えなしで、馬鹿な発言をしたりもするが、ドゥラさんのようなストッパーが居ればちゃんとまともにはなるようだ。暴走しがちだが、根は悪い奴ではないことは分かる。

 それにしても大人しく朝から並ぶ気満々とは、それだけここに泊りたいのかと思うとその気持ちは嬉しく思う。ただ王族だろうが、他の客と同じ客なのでちゃんと順番を待った場合のみだけど。

 この街に住んでて泊ってみたいと泊まった人もいるし、明日には部屋も空きはするだろうし、テディが朝一で並べば泊まろうと思えば泊まれるだろう。

 テディとドゥラさんは今日は別の場所に泊る、などと口にして去っていった。去っていくテディたちに対して、ネノは特に興味なさそうにしており、メルは「またねー。テディ」と手を振っていた。

 テディとドゥラさんが去った後、俺たちは忙しくなる夕食の時間までの間に色々とやることをやらないと。

 夕食のための準備を行ったり、掃除をしたり、やることは色々とある。宿というからには、宿泊客たちにまた来たいと思ってもらえるようにすべきだろう。今は『勇者』であるネノがやっている宿ということで評判にはなっているが、もっと快適にしないとやっていけないだろうし。

 最終手段として、宿の収入だけでどうにもならないなら魔物を狩ればいいだけだけどさ。それでも宿をやると決めたからには宿の収入だけでやっていけるようにすべきだろう。

 まぁ、大体が自給自足しているからそんなにお金もかからないけれど。

 そういえば、魚とか肉も宿で自給できるようになった方がいいだろうからそのあたりは開店してからの盛況が少しでも落ち着いてから考えよう。

「なんか人がいっぱい来るね。レオ様とネノ様がやっている宿だから当然と言えば当然だけど」

「開店したばかりだからだろ。頑張らないと宿として一流にはならないだろうな」

「そうなの? 今日はこんなに来ているのに?」

「そりゃそうだろう。宿としてやるからには客がもう一度来たいと思ってくれるようなものにしないといけないだろ。それにしばらくここに留まるけれど、場所移動させる予定だし。それまでにある程度資金は稼いどきたい。次にどこ行くかは全く決めてはないけど、金はあるだけあった方がいいからな」

 メルは人の世界で長期間暮らしたこともないから、この初日の忙しさがずっと続くと思っているようだ。俺とネノがやっている宿ならばお客さんが来るのが当然だと思い込んでいる様子は本当に単純だと思ってならない。

 色々と人の世界の常識を知らないメルには、出来るうちに色んな事を教えておいた方がいいだろう。メルにもこの宿の従業員として一人で買い物とかお使いとかできるようになってもらった方が俺たちとしても楽だし。

「メルはそのうちお金についてちゃんと学ぼうな」

「お金について? それ覚えたらレオ様は嬉しい?」

「ああ」

「じゃあ、僕頑張る!!」

 メルがにこにこと笑ってそう言えば、話を聞いていたネノがメルの頭を撫でまわしながら「メルは、いい子」と満足そうに笑っていた。

 

 

 しばらくして夕食の時間帯になってまた大勢の人がやってきた。夕食を食べるためにテディたちも並んでいた。周りは王子が並んでると少し騒がしくて、譲ろうとするものもいたようだが、「順番通りで構わない」と告げていたらしい。

 ネノが俺が作った夕飯をテディの所へ運べば、ドゥラさんと一緒に美味しそうに料理を食べてくれた。美味しかったと口にして泊っている宿に向かうテディは「明日は朝一で並ぶからな」と宣言していた。

 そして実際に翌日、テディは一番前に並んでいた。

 何時から並んでいたのだろうかと訝しめば「昨日テディは此処に泊りたいって言い張って早寝したんです。子供でもあんなに早く寝ないってぐらいの早寝です。そして今日はとてつもなく早起きしてました」と付き合わされたであろうドゥラさんが疲れた顔をしているのだった。




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