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王子と騎士 1

「レオニード、ネノフィラーよ!! 俺が会いに来てやったのだぞ!! あとすまん。お腹すきすぎて他の所で食べてきた!! 此処は宿なのだろう? 泊まることは出来るか?」

 昼食の時間が終わってからやってきたテディは自分が会いに来て嬉しいだろうとでもいうように、自信満々の笑みを浮かべて俺たちの前にやってきた。宿の前で騒がれても近所迷惑なので、中に入れることにした。昼食の時間が終わって、夕食の時間までは落ち着けるし問題はない。

 お腹がすきすぎて、ご飯は他の所で食べてきたらしい。偉そうに腕を組んでいるテディの後ろには「テディ!! ネノフィラー様たちに迷惑をかけないようにと陛下に言われただろうが!! 落ち着いたとはいえ、営業時間中にいきなり訪れるのは迷惑だろうが!!」と声を上げていた。

 真紅の髪を持つ男は、鋭い目でテディをしかりつけるように言っていた。第二王子にこんな物言い出来るとは、この騎士はテディと親しいのだろう。

「無理。第二王子、あきらめて。もう満室」

「おお、ネノフィラーよ。相変わらず美しいな。そしていい加減、俺の事を名前で呼んでほしい!!」

「第二王子呼び、定着してるし……」

 ネノはテディのことを名前で呼ぶ気はないようだ。ネノからしてみれば『魔王』討伐の旅の間は求婚してくる面倒な人間で、名前を呼ぶ気はなかったのだろうことは想像がつく。それで今更名前呼びを求められても定着しているから嫌なのだろう。

 ネノって基本的に他人に対する興味がない。俺が徐々に強くなって、ネノを追いかけてたら俺の事を好きになってくれたし、メルの事はもう一人の幼馴染的な感じで気に入っているが、それ以外に対してそこまで関心はないだろう。生まれ育った村の連中の事は気に入っているようだが、それだけだ。正直、共に旅をしたぐらいじゃネノの関心は彼らに向かうことはない。

「テディ、ネノと仲良くなりたいならもっと頑張らないと無理だぞ」

「一緒に旅をしたのにか……!?」

「いや、旅っていっても半年だけだろ。たった半年でネノと仲良くなれたら凄いことだからな……」

 うん。たった半年でネノと仲良くなれて、ネノが心を許してくれるっていうなら苦労はしないだろう。

「あと、後ろの騎士はネノと一緒に旅したドゥラ・カラスコさんですか?」

「はっ。そうです。私はドゥラ・カラスコ。騎士団長の位をいただいております。貴方は、ネノフィラー様の伴侶であるレオニード様ですね。セゴレーヌ様とテディから話は聞いております」

 偉く礼儀正しく俺にも接してきて少し驚いた。『勇者』パーティーって、ネノに夢中で、ネノの気を引こうとしているって噂だったからもう少し俺に敵対心でも持っているのかと思っていた。

 そういえば、ネノって『勇者』パーティーの他のメンバーたちに興味がないし、俺が聞かない限り話さないから騎士団長がどんな人間か聞いてなかったんだよな。

「俺に敬語は不要ですよ。俺はネノの旦那だけど、『勇者』ではないですからね。ただの一般国民に騎士団長がそんなかしこまるのはどうかと思いますし」

「えー、レオ様が一般人なわけないじゃん。レオ様が一般人だったらこの国凄い事になるよ!!」

「……メル、しーっ。レオが話してるでしょ」

 口をはさんできたメルに、ネノはしーっとするように口に人差し指を充てる。可愛い。ネノに言われてメルは口を閉じる。メルは素直な竜である。

「いえ、『勇者』様の伴侶で、テディに勝てるような存在には敬語を使うのは当然です。レオニード様こそ、私に敬語は不要です」

 俺が敬語はいいと言っても頑固な男のようで寧ろそんな風に言ってきた。何度言っても敬語は不要と言うので、敬語をやめることになった。

「ドゥラさんは、ネノの事を好きだって噂だったけど……」

 気になったことを問いかけてみる。

「ネノフィラー様は今まで見た事がない方でしたので、惹かれたのは事実です。しかし、ネノフィラー様は私に一切、興味はない様子でしたし、伴侶がいるという言葉も聞いていたのであきらめています。それに惹かれていたというのはどちらかというと恋慕というより尊敬の念です。私はネノフィラー様ほど強く美しい方を知りませんから。なので、テディの暴走は本当に申し訳なかった。私がテディの事を抑えるようにとセレゴーヌ様に頼まれていたというのにっ……。この馬鹿王子は目を離した隙にネノフィラー様を連れ戻すなどというわ、迎えに行くと飛び出すわ……!! 本当に馬鹿王子で申し訳ない。実力は確かなんだが、テディは馬鹿なんですっ……」

「おいいいいいい! ドゥラ!! 馬鹿王子とはなんだ、馬鹿王子とは!!」

「はっ……。テディを馬鹿王子と言わずに誰を馬鹿王子と言うんだよ。昔から考えなしに行動ばかりっ……!! 付き合わされるこっちの身にもなれ!」

「そんなこといって、ドゥラも楽しんでいる時あるだろうがー!! あまり暴言吐くと解雇するぞー?」

「確かに楽しんでいることもあるが……、ネノフィラー様は何度も伴侶がいると言ってただろう!! それにこちらに一ミリも興味がなさそうなのに、自分の花嫁にするとか馬鹿か!! それと出来もしないことを口にするんじゃない!! 俺の解雇権はテディにはないからな。そもそも、テディは俺が騎士団長やめたら困るだろうが!」

「……ふん、本気で言っているわけじゃないし。ドゥラが居なくなったら寂しいから解雇なんぞしないし!!」

「はぁ……本当に馬鹿王子だな。解雇されることがなければやめないので安心しろ」

 ……この二人、仲良しだな。あれだけ俺への敬語をやめる気がないって言ってたドゥラさんがテディにはため口なのは、昔からの付き合いだとかあるんだろうか。まぁ、流石に公の場では敬語を使うだろうけど。





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